安全基準を満たしていない工場で働く多くの女性労働者

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年5月

ベトナムには労働力人口の52%にあたる1800万人の女性労働者がいる。社会労働(Lao Dong-Xa Hoi)紙は、多くの工場で安全基準が守られていないため、労働者の健康が損なわれていると報じている。とりわけ、労働災害が発生しやすい職種のいくつかには多くの女性労働者が従事しており、法や規制をより実質的なものにすることが必要である。ベトナムは1500種の作業を危険あるいは健康に有害なものとして指定しているが、同紙によると全企業の70.66%でそのような作業が行われ、女性労働者の26.67%が危険あるいは健康に有害な環境で作業を行っている。特にゴム・化学・建設資材産業の8%の職場では、女性の就労が違法とされている部署で女性が働いている。

社会労働研究所の調査対象となった職場の64.8%ではほこりが多く発生し、この種の職場で働く63.42%は女性である。衣服産業、皮革産業、建設資材産業で働く女性の多くが呼吸器系疾患を患っている。また、繊維産業では呼吸器や聴覚に異常を起こすことが多いが、大部分の労働者は女性である。多くの女性が複数の病気にかかっており、就業期間が長い労働者ほどその確率が高くなっている。このように女性労働者が劣悪な環境下で働いているのは、より高い技能を要する職種に移ることができないためである。仕事が健康に有害であることを認識している女性は多いが、1人だけで家計を支える女性の転職は困難である。

また、古い技術を用いていることや経済的な余裕がないため、労災が起こりやすい。女性新聞によると、女性労働者の44%以上が汚染された環境で働かなければならず、全企業の50.04%で法定許容量を超える有害物質が排出されている。このような状況が続いている背景には、多くの企業が短期的利益だけを考えていること、さらに社会保険を運営する際の規定に多くの抜け穴が存在することがある。同紙は社会保険にからんで経営者を教育する必要と、労働法違反者を厳しく罰することを提言している。

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