余剰人員を抱える鉄鋼産業
国営企業で余剰人員が増加している。特にこの傾向は衣服、繊維、鉄鋼産業で顕著で、これら3産業は同様な困難に直面している。ここでは鉄鋼産業の苦境について見ることにしよう。
ベトナム鉄鋼産業の主要業務は、輸入した鉄鋼を用いた鉄棒、サッシや鉄線の製造である。ところが、1998年半ばからアジア経済危機の影響で建築用金属の需要が減り、1998年9月には鋼片の輸入によって製品価格が低下したため業績不振となり、合弁17社と国営企業15社を傘下にもつベトナム鋼業(VSC)は1998年末時点で約19万トンの鋼鉄在庫を抱えていた。また、1999年1月に導入された付加価値税(VAT)で、鉄鋼産業は10%の付加価値税を課されたが、原材料材庫に付加価値税の払い戻しが認められていないため一層負担が重くなった。VSCの推計では、このような事情で鉄鋼産業は4000億ドンの利益を失った。VSCは1998年に、180万米ドルの小幅の黒字で、開業以来最悪の業績にとどまった。
1万3000人の労働者を抱える国営企業のタイ・グエン鋼業は1998年に130万米ドルの赤字を出し、従業員の労働時間の50%ないし60%分の仕事しかないため、実質的に4200人の余剰人員を抱えていることになる。このような状況は鉄鋼業で広く見られる。大規模な一時解雇を避けるため、政府は労働・傷病兵・社会問題省(MoLISA)大蔵省、工業省の三省間調査会を発足させ、鉄鋼産業の生産力及び営業状態の調査を実施する予定である。また鉄鋼産業各社が不完全雇用問題の解決に失敗した場合には、各省庁から助力を得ることができるとしている。タイ・グエン鋼業経営陣は政府に、無利子の返済及び運転資金を増加させるための貸付を提案し、退職計画や他の減量手段によって1000人から2000人の労働者解雇許可を願い出ている。
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