賃金抑制の動き

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年4月

1998年第3四半期の賃金アンケートによれば、賃金の動向はインフレ率とほぼ同じレベルにとどまっている。政府としてはこれで、労働政策上の大きな目的を達成したことになる。賃金上昇率は年間で2.1%、一方年間インフレ率は2%だった。第2四半期では、賃金上昇率はインフレ率を1%も上回っていた。

賃金抑制でもっとも大きかったのは、就業人口の60%以上をしめ、民間での賃金全体の40%を意味するサービス部門の動向で、同部門での賃金上昇率はわずかに1.3%にとどまった。これは第3四半期が観光業関連の低賃金雇用が増加する夏季と重なっていることにもよる。サービス部門に限らず、夏場は熟練度の低い若年者による季節労働が増える傾向がある。

平均賃金は22万1000ペセタあまりとなっている。工業部門が24万2000ペセタでもっとも高く、上昇率も3.6%に上る。建設業でも上昇率は平均を超える3.2%で、平均賃金は18万5000ペセタである。サービス業は前述したように上昇率1.3%、平均賃金は21万6000ペセタである。

ただし、賃金アンケートを読む際にはいくつかの留意点がある。上記の賃金はいずれも税込み額で、手取りはこれより30%前後も少ない。賃金アンケートでは基本給、残業手当、ボーナス、遅滞額などを含めて回答するが、いずれも個人所得税や社会保障負担金を含んだ額のみである。

その上、賃金アンケートは自営業者は含まず、労働者5人以上の企業で働く賃金労働者だけを対象とした調査である。したがって農業部門での自営労働者や公務員など、200万人を超える労働者は対象から除外されている。例えば、1996年から1997年にかけての公務員の賃金凍結の影響は、このアンケートの結果にはあらわれていない。つまり、工業・建設業・商業・ホテル業・運輸・通信・金融・不動産・企業サービスだけに関する調査なのである。

以上を勘案した上で注目されるのは、地域ごとの差があいかわらず著しい点である。工業部門が強く大企業の多いバスク地方では、平均賃金は20万ペセタをこえる。これに対し最下位のムルシア地方は農業中心、しかも小企業が圧倒的に多い構造を持ち、平均賃金は17万2000ペセタとなっている。

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