パートタイム労働者、わずか3.1%

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年4月

労働力省調査統計局が「柔軟な勤務形態」に関する臨時レポートを発行した。先進国では勤務形態の柔軟化が進んでいるが、シンガポールではたとえばパートタイム労働者の数は全雇用者数の3.1%を占めるにすぎない。変化する社会経済状況を見据えて、レポートは柔軟な勤務形態の普及を訴えている。

先進諸国で普及している柔軟な勤務形態には、パートタイム、臨時雇、フレックス・タイム、ジョッブ・シェアリング(1日分の仕事を2人で分担する制度)、有期雇用、在宅勤務、テレ・ワーキング(情報技術を利用した職場外での勤務形態)などがある。今回労働力省がこれらの採用を使用者に呼びかけたのは、ここ数年で共働き世帯が増え、仕事と家庭の両立を求める声が高まりつつあるためだ。こうした要望に応えられるか否かが、今後使用者にとって有能な従業員を保持し彼らの能率と士気を向上させるうえで鍵になると、レポートは主張している。他の利点としてまた、需要の変化に迅速かつ効率的に対応できることや、高齢化による労働力不足に対応できることなどを指摘している。

ところがシンガポールでは、勤務形態の柔軟化はほとんど進んでいないのが現状だ。たとえばパートタイム労働者数は全雇用者数の3.1%を占めるにすぎない(1998年)。先進国ではイギリスが同24%、日本が同23%、アメリカが同17%(1997年)とシンガポールの5~8倍の割合だ。特にイギリスでは2010年までに同30%強を占めるに至るとの予測も出ている。

またフルタイムで働く臨時雇の割合は、同1.5%とこれまた低い。

フレックス・タイム、ジョッブ・シェアリング、テレ・ワーキング、在宅勤務など新しい形態の普及率はさらに低い。従業員25人以上の民間企業4600社を対象とした調査(1998年半ばに実施)によれば、フレックス・タイムを実施しているのは9社(全体の0.2%)しかない。ジョッブ・シェアリングに至ってはわずか4社(全体の0.1%、就労従業員数12人)である。これと比較してテレ・ワーキング(在宅勤務を含む)はやや多く、27社(全体の0.6%)が一部の従業員にこれを認めており、レポートは、勤務場所に柔軟性を持たせた形態への関心が増えつつあると診断している。事実、1995年に実施された同様の調査ではテレ・ワーキング労働者数はわずか5人であったが、1998年には2625人に増えている。

パート・タイムや臨時雇がフレックス・タイムやジョッブ・シェアリングなど他の形態より多く活用されている状況に関して、レポートは、労働者の福祉よりむしろ作業の効率性が優先されていると論評している。

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