OECD「週35時間制は雇用に決定的効果を持たず」

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年4月

経済協力開発機構(OECD)は、「単位あたりの賃金コストが大幅に上昇すれば、結局のところ潜在的および実際の生産を収縮させる可能性があるので、法定労働時間を35時間に短縮する措置は失業減少に少し貢献するにすぎない」と指摘している。

週35時間制が実施された場合のシミュレーションは、すでに景気観測所(OFCE)やフランス銀行が実施しているが、これらの研究では条件を付けながらも雇用への高い効果を認めていた。OECDは今回、フランスに関する2年間の調査を発表する際に同じ性質の試みを行った。ただし、1998年6月に制定された最初のオブリ法(「週35時間制の方向と促進に関する法律」)の規定が組み込まれているのはOECDのシミュレーションだけである。

このOECDの研究は、1999年末までに制定される第二の法律には多くの不透明さが残るし、週35時間制のパートタイム労働に対する影響も不明だとしながらも、「雇用面での改善は疑わしい」と指摘している。

OECDによると、「法定労働時間の短縮措置によって今後2年間に創出される雇用は、若年者雇用政策による創出分、すなわち20万人を下回りそうだ」という。

予測の対象となっている5年間(1999~2003年)全体を見た場合、雇用の伸びは0.2%から2.2%の間と予測されている。すなわち、雇用創出数は10万人未満から50万人をやや上回る水準までの間に位置することになる。また、失業率の低下は0.2ポイントから1.3ポイントまでの間となる(1998年はマイナス0.8ポイント)。

2種類の影響が予測されている。短期的には、雇用創出が家計所得全体に与える影響が賃金抑制の影響を上回り、需要にプラスのショックを与える。しかし、この影響は競争力の悪化と関連する純輸出の減少によって徐々に相殺される。もっと長期的に見ると、労働時間短縮は供給条件を変える。すなわち、時短によって労働力の単位あたりコストが上昇するとともに、労働時間数全体が減少し、潜在的および実際の生産水準が収縮するという。

OECDは、「法定労働時間の短縮は失業減少にわずかながら貢献する可能性があるとしても、労働コスト以外の様々な市場のコスト(主として賃金抑制の程度に依存する)を引き起こすことになりそうだ」と結論づけている。

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