IGメタル、賃上げ交渉の難航で警告ストが多発

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年4月

金属産業の賃金交渉は IG メタルの6.5%の賃上げ要求で開始されたが、使用者側が2.0%の賃上げと事業所毎の業績を考慮した0.5%の一時金の支給を提示し、さらにクリスマス特別手当も事業所の業績によるとしたことから対立の様相が深まった。80万人の労働者を抱える最重点地区ノルトライン・ウエストファーレン地区その他の地区で交渉は継続しているものの膠着状態に入り、1月28日の平和義務の期限が切れてから賃上げ要求貫徹のための警告ストが多発している。

労使双方の主張は概ね以下の通りである。

まず使用者側は、提示した条件は企業業績と雇用の確保の観点から妥当な条件提示だとし、一時金も労働協約法と協約優位の原則の範囲内の弾力化であるとする。またシュトゥムフェ金属連盟会長は、景気は明らかに後退しており、これを考慮しない6.5%の要求は雇用の喪失による失業増大をもたらすと警告している。

他方、組合側は、1993年以来金属業界の企業収益は21%増加しているのに実質賃金は7%減少しており、物価上昇率1%と金属産業部門の生産性向上5.5%の予測から6.5%があくまで妥当だとしている。またツヴィッケル IG メタル会長は、賃上げと一時金支払いの2段階に分けて労働者を事業所業績の差で2つのグループに分けることは認められないと述べ、新任のペータース副会長も使用者側の提示は従来の協約優位の原則に基づくシステム自体の変更で、協約はあくまで事業所協定に優位して全労働者の最低賃金を定めるべきものだとしている。また同副会長は特に一時金について、使用者側は一時金支払いという条件の根拠となる金属業界の事業所業績の差についてあいまいな統計しか示しておらず、さらに一時金の要否は経営協議会との合意が必要だが、経済的業績の専門判断は困難を伴い、特に小規模事業所の小人数の経営協議会には過度な負担になるとしている。

このような中で、組合側は1月31日になって使用者側に2月11日までに条件を改善するようにとの最後通告を行い、改善されない場合には全組合員にスト実行の賛否を問う原投票を行い、それによってストに訴える可能性を表明した。

これに対して使用者側は、このような形で賃金交渉が暗礁に乗り上げれば「雇用のための同盟」が頓挫する可能性があることを示唆している。他方、ドイツ労働総同盟(DGB)は、IG メタルという1産別労組の賃上げ闘争と「雇用のための同盟」という政労使のトップ会談は区別して考慮すべきだとしている。

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