産業別労働協約に拘束される事業所数が減少

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:1999年4月

近年、産業別労働協約体制の弛綬が指摘されているが、1月7日に発表された労働市場職業研究所(IAB)の調査結果でもこの傾向が確認され、協約に拘束される企業(事業所)の割合の減少が明らかになった。この調査は西独地域の約147万、東独地域の約35万4000の事業所を代表して、西独地域の3400、東独地域の3500の民間部門の事業所に対してアンケートに基づいて行われた。

調査によると、西独地域では協約に拘束される事業所は1995年の52%から1997年には49%に減少しており、もともと協約の拘束力の度合の低い東独地域ではこの割合は1997年には26%にすぎなかった。協約の拘束を受ける民間企業で働く従業員の従業員数全体に対する割合からもこの傾向は明らかで、この割合は西独地域では1995年に70%だったのが1997年には65%に減少し、東独地域では1997年には44%で5割にも満たなかった。

さらに調査結果からは、協約による拘束は事業所規模と産業部門によって異なることが明らかになっている。

事業所規模では小規模事業所で拘束を受けるものの割合が低く、特に従業員1~4人の小規模事業所では拘束を受けるのは西独地域で約3分の1であり、東独地域では5分の1に過ぎない。5~9人の事業所では、西独地域で54%、東独地域で25%である。規模の拡大によって拘束の度合は高くなる傾向があるが、最も拘束の度合が高いのは、西独地域では1000人以上の事業所で76%、東独地域では500~999人の事業所で80%となっている。

産業部門別では、拘束を受けるのは西独地域においては交通・電気通信事業が36.5%、農業が42.6%と全産業の平均以下の数字を示しており、商業は54.2%と平均をわずかに超えている。2年前からの後退という点では、鉱山・エネルギー部門が78%から52.4%に大きく後退しており、交通・電気通信事業も51.7%から36.5%に後退している。東独地域では、農業(18.7%)、商業(23.8%)、交通・電気通信事業(25.1%)が平均を下回り、やはり拘束の度合が低いことを示している。

このような調査結果に対して同研究所は、西独地域において協約の拘束の後退は急激ではなく、原因も重層的に絡み合っているが、賃金政策のために労使は協約の改革を避けて通れないだろうとしている。そして改革の方向としては、平和維持機能と経済全体の調整機能を維持しつつ、開放条項等を活用して弾力化と事業所別の個別化が進められることになろうとしている。

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