開催報告:第23回北東アジア労働フォーラム(2025年11月14日開催)
若者の雇用と労働:各国の主要な若者雇用政策の動向と今後の方向性

労働政策研究・研修機構(JILPT)は2025年11月14日、第23回北東アジア労働フォーラムを開催しました。本フォーラムは、労働政策研究・研修機構(JILPT)、韓国労働研究院(KLI)、中国労働社会保障科学研究院(CALSS)という日中韓3カ国の労働政策研究機関が、共通するテーマに基づき研究成果の報告と討論を行い、知見を共有することを目的としています。

今年度は、韓国労働研究院(KLI)の主催により、「若者の雇用と労働:各国の主要な若年雇用政策の動向と今後の方向性」をテーマに開催しました。日中韓3カ国の若者の現状、若者の労働市場参加を促進する政策、教育と職業のミスマッチによる若年失業への対応策などについて研究報告と討論を行いました。

開会時の様子
第23回北東アジア労働フォーラムの様子

日時:
2025年11月14日 10時00分~16時45分
開催方法:
対面(韓国ソウル特別市ホテルナルソウル)
主催:
韓国 韓国労働研究院(KLI)
共催:
日本 労働政策研究・研修機構(JILPT)
中国 中国労働社会保障科学研究院(CALSS)

プログラム

開会あいさつ 10時00分~10時30分

10時00分~10時15分
ホ・ジェジュン KLI院長
藤村 博之 JILPT理事長
劉俊昌 CALSS院長
10時15分~10時30分
記念撮影

第1セッション(座長:藤村 博之 JILPT理事長)10時30分~12時00分

10時30分~10時50分
「若年層の労働参加の促進に向けた多面的政策」(PDF:1.91MB)
鮑 春雷 CALSS教授
10時50分~11時10分
「日本の若者の労働市場参加の現状と政策」(PDF:2.20MB)
堀 有喜衣 JILPT統括研究員
11時10分~11時30分
「韓国型若者層ニート(NEET)の現状と政策課題」(PDF:1.41MB)
イ・ジョンミョン KLI副研究委員
11時30分~12時00分
討論・質疑
李 宗澤 CALSS准教授
濱口 桂一郎 JILPT研究所長
ジン・ソンジン KLI副研究委員
12時00分~13時30分
休憩

第2セッション(座長:劉俊昌 CALSS院長)13時30分~15時00分

13時30分~13時50分
「日本の高等教育と職業のマッチング―大学の専攻分類と高専教育にみる分類・接続・学び直し―」(PDF:1.01MB)
小黒 恵 JILPT研究員
13時50分~14時10分
「韓国の若年層におけるスキルミスマッチ失業」(PDF:525KB)
キム ギボン KLI副研究委員
14時10分~14時30分
「中国の若年層の就職・起業促進政策に関する研究」(PDF:2.78MB)
楚 珊珊 CALSS補佐研究員
14時30分~15時00分
討論・質疑
小野 晶子 JILPT理事
ヒョン ジョン KLI上級研究委員
兪 恺 CALSS副室長
15時00分~15時30分
休憩

総括討論(座長:ホ・ジェジュン KLI院長)15時30分~16時30分

15時30分~16時30分
総括討論(全員)

閉会あいさつ 16時30分~16時45分

16時30分~16時45分
劉俊昌 CALSS院長
藤村 博之 JILPT理事長
ホ・ジェジュン KLI院長

第1セッション(座長:藤村 博之 JILPT理事長)

3研究機関の代表による開会あいさつの後、藤村博之 JILPT理事長が座長を務め、第1セッションが行われた。

鮑春雷 CALSS教授は、「若年層の労働参加の促進に向けた多面的政策」と題し、中国の若年層の雇用状況について説明するともに、若年層の質の高い完全雇用の促進に向けた政策として、多様なチャンネルを通じた雇用機会の拡大、需給マッチング効率の向上、持続可能な就業能力の強化、就職に対する意識指導の強化、ターゲット型の就職支援の徹底などを提言した。

堀有喜衣 JILPT統括研究員は、「日本の若者の労働市場参加の現状と政策」と題し、地域若者サポートステーション事業、ひきこもり支援事業などのNEET支援策、近年の状況変化や就業構造基本統計調査からみるNEETの実態について説明し、失業者や非正規雇用者が減少する中で取り残されたNEETは発達障害などの就労以外の課題が大きいことや、学校段階からフルタイムで後期中期高等教育に参加しない若者が増加していることへの対応の必要性などの政策課題を指摘した。

イ・ジョンミョン KLI副研究委員は、「韓国型若年層ニート(NEET)の現状と政策課題」と題し、韓国の労働市場における若年層の非労働力化問題の顕在化、若年層NEETの類型と時系列的特性、政府の若年層NEETを特定するためのシステム構築及び雇用支援サービス提供の取組について説明し、政策的課題と今後の方向性について報告した。

報告後の討論では、濱口桂一郎 JILPT研究所長が、「日本企業はスキルのない若者を採用し、OJTで訓練する新卒一括採用慣行を続けている。バブル崩壊後の経済不況時に就職できなかった氷河期世代の若者の問題が依然として残っており、社会構造に大きな影響を与えている。NEET、働きたくない若者が非活用となる状況は3カ国共通の課題となっている」とコメントした。

第2セッション(座長:劉俊昌 CALSS院長)

劉俊昌 CALSS院長が座長を務め、第2セッションが行われた。

小黒恵 JILPT研究員は、「日本の高等教育と職業のマッチング―大学の専攻分類と高専教育にみる分類・接続・学び直し―」と題し、職業教育訓練にかかる日本の位置づけ、産業構造の変化、STEM分野への問題意識と政策的注力、日本の大学の学科系統分類と国際標準教育分類(ISCED分類)の整合が不十分なこと、大学工学部と高等専門学校教育の職業的レリバンスについて説明し、政策的示唆として、産業界ニーズへの対応を図る教育政策、学科系統分類基準の整備、仕事と専門分野の関連性確保、卒業後の学習活動によるミスマッチ「挽回」の可能性を挙げた。

キム ギボン KLI副研究委員は、「韓国の若年層におけるスキルミスマッチ失業」と題し、パンデミック前後における韓国のスキルミスマッチによる失業の推移について、統計データを用いて推計した研究結果を報告した。求職者と企業のマッチングの質が低下している可能性があること、若年層のミスマッチ失業がパンデミック前より悪化していること、高学歴若年層の労働供給が最適水準を上回っていることなどを指摘した。

楚珊珊 CALSS補佐研究員は、「中国の若年層の就職・起業促進政策に関する研究」と題し、若年層の雇用状況について説明するとともに、大卒者の就業分野の積極的拡大、事業主に雇用を促す政策の強化、政策に基づく雇用可能性の模索、自主的な企業支援を柱とする若年層の就職・起業促進政策と実践について報告した。

報告後の討論では、小野晶子 JILPT理事が、「日本の高等専門学校は数が少なく、15~20歳の若者に集中的に理系の教育を行い、技術者を養成する特殊な形態の学校である。日本ではエッセンシャルワーカーの人手不足や地方の人材不足が問題となっている」とコメントし、ミスマッチ失業について、「日本では、大学院卒の就職氷河期世代が大卒と偽って応募する例があった」と指摘し、韓国、中国では高等教育のオーバースペックにより下方就職する例があるかなどと問いかけ、それぞれの国の状況についても広く情報共有した。

総括討論(座長:ホ・ジェジュン KLI院長)

ホ・ジェジュン KLI院長が座長を務め、第1セッションおよび第2セッションを踏まえた参加者全員による総括討論が行われた。

総括討論では、呉学殊 JILPT特任研究員が、「3カ国の大学進学率は日本が57.1%、中国が60.2%、韓国が76.7%、就職率は日本が98.1%、中国が86.7%、韓国が64.4%であり、韓国は進学率が高すぎる構造的問題がある。日本の求人倍率は1.16倍だが、韓国と中国には就職浪人して親の支援を受ける若者が多い。日本の採用では、熱意やヒーマンスキルが重視され、専門的スキルは問われない」などと各国の概況を数値を用いて説明しながら、日本の状況についてコメントした。

2025年12月1日掲載

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