基礎情報:イギリス(2013年)
2. 雇用・失業対策

2-1 公共職業安定制度

基本業務(職業紹介等)

公共職業安定機関(ジョブセンタープラス)が全国ネットワークの職業紹介等を直接実施。

民間委託事例(職業訓練、就職支援等)

長期失業者及び就業困難者向け就業支援プログラム:ワーク・プログラム(2011年6月~)

失業期間が12カ月を超える求職者手当受給者(18~24歳は9カ月、また場合により3カ月)及び就業が困難な雇用・生活補助手当受給者(健康上の問題、一人親など)の就職及び就職後の定着支援を民間に委託。支援内容は委託先事業者に一任、実績に応じて委託費を支払う。

資料出所:Department for Work and Pensions ウェブサイト

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2-2 労働者派遣制度

労働者派遣事業についての法規制

派遣労働者の定義:
労働者派遣事業者によって臨時に供給されて派遣先の監督と指示のもとで労働に従事し、派遣事業者との間で、(ⅰ)雇用契約、又は(ⅱ)その他、自ら労働又はサービスに従事する旨の契約を締結している者。
根拠法:
1973年職業紹介法(許可制ベース)。1994年法により、民間職業紹介と同様、1973年法の許可制を廃止。届出も不要。但し、2002年からは農業や食品加工など一部業種への労働者供給事業が許可制となった。2003年法でさらに規制を緩和(手続きの簡素化)するとともに、派遣労働者の権利拡充(手数料規制強化、派遣元及び派遣先企業の責任の明確化など)。2011年10月施行の派遣労働者規則により、派遣期間が12週間超の派遣労働者について、派遣先における同等の直接雇用労働者との間の労働条件等の均等待遇を規定。
取扱職種、派遣期間、事由の制限は設けられていない。但し、派遣前6カ月以内に派遣先に雇用されていた派遣労働者の派遣の禁止、派遣労働者が派遣先企業に雇用されることを禁止してはならないこと等の規制がある。
このほか、業界団体のREC(派遣事業者8,000社が加盟)による自己規制メカニズム(行動規範及び自主監査制度、苦情処理制度)が整備されている。

資料出所:Department for Business, Innovation and Skills ウェブサイト

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2-3 失業保険制度

制度名:
拠出制求職者手当(JSA)
根拠法:
1995年求職者法(Jobseekers Act 1995)
被保険者:
原則として18歳以上。年金受給年齢(男性65歳、女性60歳)未満のイギリス居住者(但し、16歳及び17歳の者については例外がある)。
受給要件:
  • (1) 職業に就いていないこと又は収入のある仕事に週平均16時間以上従事していないこと、
  • (2) 就労を行う能力を有し、求職活動を積極的に行い、かつ直ちに就職し得ること、
  • (3) 過去2年間のうち1年間、被用者として国民保険料(※)を納付していること、
  • (4) パーソナル・アドバイザーとの間で求職者協定を締結し、2週間に一度ジョブセンター・プラスに来所すること、
  • (5) 現在フルタイムの教育を受けていないこと
※国民保険(National Insurance)は、失業者や就労困難者向けの拠出制手当、公的年金等を含む単一の社会保険制度である。
給付水準:
16~24歳: 週56.25ポンド、
25歳以上: 週71.00ポンド、
カップル: 週111.45ポンド
給付期間:
最長182日(26週)
財源:
保険料(2011年)賃金の25.8%(被用者12.0%、事業主13.8%)
管理運営機構:
雇用年金省が管理運営し、同省所管のジョブセンター・プラスが給付業務を担う。
給付実績:
18万8,200人(グレートブリテン、2012年2月)

資料出所:Department for Work and Pensionsウェブサイト

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2-4 補足的失業扶助制度

制度名:
所得調査制求職者手当(income-based JSA)
根拠法令:
求職者法(Jobseekers Act 1995)
管理運営主体:
雇用年金省が管理運営し、実際の給付は同省所管のジョブセンター・プラスで受ける。
財源:
一般財源(全額国庫負担)
受給対象者:
原則として18歳以上年金受給年齢(男性65歳、女性60歳)未満の失業者であるイギリス居住者(但し、16歳及び17歳のものについては例外があり)。
受給要件:
  • (1) 職業に就いていないこと又は収入のある仕事に週平均16時間以上従事していないこと、
  • (2) 就労を行う能力を有し、求職活動を積極的に行い、かつ直ちに就職し得ること、
  • (3) パーソナル・アドバイザーとの間で求職者協定を締結し、2週間に一度ジョブセンター・プラスに来所すること、
  • (4) 現在フルタイムの教育を受けていないこと、
  • (5) 拠出制求職者給付の受給資格がないこと又は拠出制求職者給付を超える生活費を必要とすること、
  • (6) 資産が16,000ポンド以下であること、
  • (7) 収入のある仕事に週24時間以上従事している配偶者がいないこと
給付水準:
世帯構成に応じた個人手当及び各世帯の事情(障害者、年金受給者がいる等)を要件とした加算金を合わせた適用額から受給者の収入を差し引いた額が給付額となる。また、資産が一定水準以上を越えると給付が減額される。
・個人手当(2012年10月現在)
  • 16~24歳:週56.25ポンド、
  • 25歳以上:週71.00ポンド、
  • カップル:週111.45ポンド
給付期間:
所得調査により低所得であることが確認され、求職者要件を満たしていれば年金支給開始年齢(男性65歳、女性60歳)まで無制限。
給付実績:
128万9,700人(グレートブリテン、2012年2月。拠出制求職者給付の併給者1万8,200人を含む)

資料出所:Department for Work and Pensions, Gov.uk, 各ウェブサイト

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2-5 困難な状況にある者に対する施策

長期失業者等向け施策

ワーク・プログラム

開始年月:
2011年6月
管理運営主体:
ジョブセンター・プラス
対象者及び適用要件:
求職者手当受給者で、失業期間が12カ月を超える成人(25歳以上)並びに9カ月を超える18~24歳の若年者。非常に不利な条件から早期の参加が必要な者(大きな困難を抱える若者、ニート、犯罪歴のある者)、就労不能給付から最近移行した者については3カ月。いずれも参加は義務。また健康上の問題等により就業が困難な雇用・生活補助手当受給者については、問題の度合いに応じて義務又は任意参加。
具体的内容:
対象者の就職及び就職後の定着支援を民間に委託。支援内容は委託先事業者に一任、実績に応じて委託費を支払う。

その他の施策(Get Britain Working

ワーククラブ

失業者向けの情報交換の場として地域の組織が運営。

ワーク・トゥキャザー

エンプロイアビリティの向上に向け、ボランティアの仕事に従事。

就労体験

ワーク・プログラム参加前(失業期間が9カ月未満)の16~24歳層の失業者に対して、ジョブセンター・プラスを通じて提供されるプログラムで、受け入れ企業において2~8週間、週25~30時間就業するもの。

業種別ワーク・アカデミー

小売、ホスピタリティ、介護などの業種における基礎的な資格の取得を目標に、官民の教育訓練機関(継続教育カレッジや民間訓練プロバイダ等)による訓練と就業体験が提供され、終了時には実際の求人の面接機会が与えられる。参加は任意だが、就業体験と同様に中断に対しては給付停止の制裁措置あり。
このほか、起業に関心のある失業者のための「エンタープライズ・クラブ」及び「新規起業手当」などのサービスが提供されている。

若者向け施策

ユース・コントラクト

若者失業者やニート等の就業支援を目的に、2011年に導入された政策パッケージで、以下の施策を通じて2015年までに約50万人を支援。

雇用助成:
18~24歳の長期失業者等(ワーク・プログラム参加者又は国内20カ所の高失業地域に居住する者)を6カ月以上雇用する場合、一人当たり最高2,275ポンドを助成する。2012年から3年間で16万人を支援予定。また、障害者向け就業支援プログラム(Work Choice)の参加者を雇用する場合も賃金助成制度あり。
就業体験、業種別ワーク・アカデミー:
18~24歳層で失業期間が3カ月超の者に、ワーク・プログラムへの参加に先立って就業体験プログラムや業種別ワーク・アカデミーでの訓練を提供する。3年間で25万人の参加を想定。同時に、ジョブセンター・プラスでの面談やキャリア相談を強化、失業5カ月目以降は毎週の面談を義務化する(通常は2週に1回)
業種別ワーク・アカデミーの拡充:
上記ワーク・アカデミーの受け入れ枠を18~24歳層向けに拡大。
ニート対策:
16~17歳層のニート2万5000人を対象に、教育やアプレンティスシップ、訓練を伴う雇用に移行するための支援を提供。
アプレンティスシップの拡充(賃金助成):
50人規模までの企業が16~24歳層の訓練生を初めて受け入れる場合に、最高で1500ポンドを助成。
ニート対策:
16~17歳層のニート2万5000人を対象に、教育やアプレンティスシップ、訓練を伴う雇用に移行するための支援を提供。

高齢者向け施策

エイジ・ポジティブ(Age Positive)

年齢差別是正キャンペーンとして1999年に開始、ウェブサイト上で政府の年齢差別是正政策や好事例についての情報を提供。

障害者向け施策

ワーク・チョイス

任意参加のプログラムで、仕事探しの支援や就職・仕事の継続に関する支援のほか、参加者の必要に応じて職業訓練等も実施。

成人向け宿泊型訓練

18歳以上の失業者に対して、居住地域で適切な職業訓練コースが利用できない場合に提供される。全国9カ所のプロバイダーが資格取得に向けた訓練などを実施。

アクセス・トゥ・ワーク

就業に必要な装備や交通手段などの費用を補助。
このほか、ジョブセンターに障害者雇用アドバイザーを設置、求職や職業訓練を支援。

資料出所:Department for Work and Pensions, Gov.uk 各ウェブサイト

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2-6 年齢に関する法制度(定年等関係)

根拠法令:
2011年雇用平等(退職年齢規定廃止)規則
施行年月:
2011年4月
定年制は原則不可。但し、正当な理由があれば定年制の維持が認められる場合もある(例えば著しい体力や精神力を要する業務等)。高齢者の解雇に対する特別な保護等としては、雇用における年齢差別の禁止。上記の例外を除き、年齢を理由とする解雇を差別として原則的に禁じている。

資料出所:Department for Work and Pensions, Gov.uk 各ウェブサイト

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2-7 障害者雇用対策

根拠法:
「1995年障害者差別禁止法」及び「2010年平等法」により、雇用、商品及びサービスの提供、並びに住宅供給の分野において障害者の権利を保障するとともに、教育、公共輸送機関における障害者の利便性にも配慮し、総合的に障害者に対する差別を禁止することを定めている。
対象者:
通常の日常生活活動を行う能力に対して相当程度のかつ長期的悪影響を及ぼす身体的又は精神的機能障害のある状態の者。
雇用主への規制:
雇用における差別禁止
障害者は、障害に基づく差別(直接差別)のほか、障害を持たない他の者と同等の規定等の適用を受けることで不利益を被る場合(間接差別)や、障害に関する雇用主・従業員もしくは第三者(顧客等)からの嫌がらせ、差別的な扱いに関する不満や苦情の申し立てに対する報復的な扱いなどからも保護される。事業主は、障害従業員もしくは将来の障害従業員のために、建物の物理的な特徴や雇用協定について「合理的な調整措置」をとらなければならない。
 
申立の仕組み
雇用差別がある場合には、障害者等は雇用審判所に申立を行うことができる。また、助言斡旋仲裁局(ACAS)は、相談を受け、あっせんを行うことができる。

資料出所:(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 障碍者職業総合センター「諸外国における障碍者雇用施策の現状と課題」(2008)ほか

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例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:イギリス」