基礎情報:ラオス(2018年)
6. 労使関係

2018年11月22日掲載

6-1 労働組合運動の萌芽期

ラオスは中国、ベトナムとともに一党独裁の社会主義国である。経済面では市場経済を導入しているが、政治面では社会主義国の特徴を維持している。そのことがラオスの労使関係を規制している。

1953年フランスから独立しながらも、ベトナムの支援を受けたネオ・ラオ・イッサラ(自由ラオス戦線)、その戦闘部隊であるパテト・ラオ(ラオス愛国戦線)とアメリカの支援を受けたラオ王国政府が対立した。ラオス人民革命党の前身であるラオス人民党がベトナム労働党(現在のベトナム共産党の前身)の指導のもとに結成されたのが1955年3月22日であり、そのもとでラオス愛国戦線が組織され、その中に女性、青年、労働者等による大衆組織がラオス人民党を支援するために結成された。1956年2月1日にはラオス労働組合総連盟(Lao Federation of Trade Unions)が大衆組織の1つとして設立された。実質的にまだ労働者層が育っていない段階で労働者を代表する組織が設立されたと言える。ラオス北部のフアパン県に正式に労働組合が結成されたのは1966年で、組合員は35名であった。ラオス労働組合総連盟はアメリカの支援を受けるラオス王国政府が支配する地位で共産主義者の活動を支援し、ストライキや抗議行動を1975年の革命時まで継続していた。ラオス愛国戦線は1975年以降ラオス建国戦線と名称を変更し、それを支援する大衆組織であるラオス労働組合総連盟が唯一のナショナル・センターとして存在するという位置づけは、現在も継続している。毎年2月1日はラオス労働組合設立の日として祝典が挙げられている。ラオス労働総連盟が最初の大会を開催したのは1983年である。このとき組合員総数は約5万人であった。

出所:Simon Fry and Bernard Mees, Industrial Relations in Asian socialist-transition economies: China, Vietnam and Laos, Post-Communist Economies, vol.28, no.4, p.453.

6-2 労働組合の組織構造、組合員資格、組合設立

2007年12月25日に公布され、2008年2月1日から施行された労働組合法が労働組合の権利義務やその役割について定めている。

ラオスの労働組合は4層の構造になっている。ラオス労働組合総連盟が全国レベルの組合、その下に県・中央直轄市レベルの組織、さらに、その下に郡・市レベルの組織、最末端に労働単位(企業単位)レベルの単位労働組合が存在する(労働組合法36条)。

組合員は性別、宗教、政治的地位、教育レベル、民族を問わず、18歳以上のラオス国籍を有する者でなければならない(同20条)。労働単位(企業単位)の労働者だけでなく管理職、大統領、首相をはじめ政府関係者のほとんどが労働組合員であり、政府と一体化している。

組合員は労働組合の政策、規則に従い、役員選挙で投票し、場合によっては立候補者になる権限を有する。能力向上を図って、所属する企業の生産計画に積極的に参加する。組合の運営に意見を述べ、組合からの支援を受ける権利を有する(同21条)。

単位労働組合は企業別組合であり、活動を開始してから6カ月たった企業では単位労働組合を設立することが義務づけられており(労働法166条)、企業とともに生産性向上に協力するとともに、構成員である組合員の働く権利を保障する義務を担っている(労働組合法40条)。

単位労働組合は組合員が支払う組合費、企業側からの援助で運営がなされる。上部の組合には単位労働組合から加盟費が納められ、さらに地方および中央政府からの財政支援によって上部組合は運営されている。ラオス労働組合総連盟は中央政府からの援助が約3割を占め、県・中央直轄市レベル(40%ぐらいの割り当て)と郡・市レベル(60%ぐらいの割り当て)の組合からの加盟費と外国からの支援金で運営されている。外国からの支援金の実例として国際労働財団がラオスで実施する研修の費用が挙げられている。

中央および地方政府、各企業は労働組合の活動のために、会議の場所、寮、車両その他の機材を提供してサポートする義務が課せられている(同6条)。

ILOの国別情報によれば2010年組合組織率は15.5%となっている。これが2014年には、組合員数21万419人(男性11万6133人、女性9万4286人)で、組織率が28%となっている。

組合員はラオス労働組合総連盟に加入しない組合を設立することは認められていない。民族間の団結や組合員の団結を分裂させる行為は禁止され、派閥化や反対運動は禁止されている(30条)。ラオスは1964年にILOに加盟しているが、ILO87号・98号条約をまだ批准していないのはこのためである。

外資系の企業でも活動を開始して6カ月経過すれば単位労働組合を設立する義務があり、それに違反する場合には罰則がかせられる(51条)が、外資系企業には厳格にそれを実施していない。特に経済特区でそれがみられる。経済特区では労働組合の結成を認めないという政策が採用されているわけではないが、事実上労働組合が結成されていなくてもそれを黙認しているということであろう。

出所:国際労働財団編「2015年 ラオスの労働事情新しいウィンドウ」。
(2015年9月4日に国際労働財団主催により開催された講演会におけるラオス労働組合連盟(LFTU)ソンパイサイ・ケッタウォンサワンナート県委員長による講演録)
LFTUでのヒヤリング(2018年3月2日)の結果。

6-3 使用者団体

もっとも代表的な使用者団体としてラオス全国商工会議所がある。政府の労働政策を策定する際に三者制の会議で検討されているが、使用者団体を代表してラオス全国商工会議所から委員が出席している。

1989年商業省の管轄下にあるラオス全国商工会議所が設立された。2003年7月24日から施行された首相令(No.125/PM)を廃止して2009年11月20日に改正された首相令(No.316/PM)が現在施行され、これに基づいて運営されている。国家と企業の橋渡しと会員の権利や利益保護によってラオスの社会経済発展に貢献することを目指す組織として設立されている。

会員は通常会員と支援会員があり、企業法によって5,000万キープ以上の資本金で登記されている企業はこの商工会議所の会員になることを申請しなければならない(首相令19条)。1,000社以上の企業が会員になっている。会員の会費、様々な事業による収益、政府の財政援助によって運営されている。

商工会議所の労働分野での任務として、国家労働委員会において最低賃金額の決定や労働法の改正、安全衛生、労働市場政策等の問題について使用者代表として政府やラオス労働組合総連盟の代表と議論し、労働争議の解決に参加することが挙げられている(首相令5条2号、労働法163条)。

この商工会議所のほかに業種ごとの団体も組織されている。たとえばラオス縫製業協会がある。

ビエンチャン日本商工会が組織されているが、ラオス商工会議所とは連携をとって活動している。

6-4 団体交渉と労働協約

単位労働組合の役割は使用者と団体交渉によって労働者の労働条件の維持改善である。ラオス労働法では労働組合だけでなく労働者代表にも、雇用、賃金、社会保険その他の労働条件に関して団体交渉する権限が認められている(労働法169条)。

ラオスでは労働組合のほかに労働者代表制度が設けられている。2本立てになっている。これは労働組合の組織化が進んでいないために、労働者の意見を表明できる機関を設ける必要があると判断されたためである。労働組合が組織されていない企業に労働者代表が設けられる。従業員が10人から50人までは1名、51人から100人の場合は2名、それ以上は100人増加するごとに1名の労働者代表を追加する(労働法166条)。

団体交渉によって合意された内容を書面で記述されたものは労働協約であるが、これは労働管理局(中央、県、郡レベルの労働組合と労働社会福祉省の事務所)に提出され、そこで合法的で公正であることが確認されたら、両当事者および証人が署名をする。それを公証役場に登録されなければならない(労働法170条)。

6-5 ストライキとロックアウト

社会主義国にはストライキの規定のある国とない国があるが、ラオス労働法には一定の範囲でストライキやロックアウトを禁止する規定が存在する。ということは一定の範囲でストライキやロックアウトを認めることを意味する。つまり全面禁止にはなっていない。2007年労働法65条でストライキとロックアウトを一定の場合に禁止する規定があったが、これが現行法の2013年の労働法改正時に154条に変更になった。

2007年労働法では労働紛争が発生して、労働紛争解決手続に付託中の場合には、労務提供拒否と労務受領拒否を禁止し、さらに労使や社会秩序に損害を与える労務拒否や労務受領拒否を禁止している。もし騒動や社会不安をもたらした場合は刑法によって1年以上から5年未満の禁固刑に付される。

現行法では、労働紛争解決手続中の労働者の労務不提供や使用者の労務受領拒否を禁止している。ただし深刻な事態が発生する場合は、三者機関によって労務提供拒否や労務受領拒否に同意すれば、それが可能となる。労働紛争が解決できない場合は、法令に違反しないかぎりでストライキが可能である。ストライキが可能となる場合を明文で定めている(154条)。

労働社会福祉省の労働管理局からはストライキもデモもおきていないという報道があるが、ストライキが全くないのであろうか。小規模な集団的な労務拒否が発生したことはあるようである。しかしそれが報じられることはない。

出所:Human Rights Watch Concerns on Laos, November 5, 2015.新しいウィンドウ
Laos 2016 Human Rights Report, p.27(PDF:330KB).新しいウィンドウ
Simon Fry and Bernard Mees, Industrial Relations in Asian socialist-transition economies: China, Vietnam and Laos, Post-Communist Economies, vol.28, no.4, p.463.

6-6 労使紛争の調整

労働法には労働争議を解決する手続を定めている。それによれば、まず当事者の話し合いによる解決がある。それで解決できない場合に行政機関による解決方法がある。行政機関には県レベル、郡レベル、村レベルの3段階が認められている。この場合、法律・権利紛争と利益紛争で手続が異なっている。

法律・権利紛争の場合、関係当事者の話し合いをおこない、同意を達成できれば、両当事者と承認の署名の上で、5日以内に労働組合と所轄の労働管理局に提出すれば、合意の効力が発生する。話し合いで解決しない場合、労働法150条に基づき労働管理局に調停を求める。そこで解決できれば紛争は終わるが、そこで解決できない場合は15日以内に裁判所に訴えることになる(労働組合法46条、民事訴訟法35条)。

利益紛争の場合、関係当事者の話し合いをおこない、同意を達成できれば、両当事者と承認の署名をして、労働監督局に提出されると、法的効力が生じる。同意ができない場合、労働監督局に解決を求める。15日以内に解決できない場合、上位の労働組合が協議に参加することを要請する。

それでも解決に至らない場合、労働法151条に定める労働紛争解決委員会に解決を求めることができる。労働紛争解決委員会は政労使三者によって委員が構成されており、中央と県レベルに設置されている。中央では労働社会福祉大臣よって、県レベルでは県の労働社会福祉局長によって設置されている。この委員会の事務局は労働社会福祉省労働管理局、県の労働社会福祉局の労働管理課が担当している。

ここでの調停が15日以内に解決しない場合、裁判所に提訴できる(労働法152条)。請求額が3億キープ未満の場合は地域人民裁判所、請求額が3億キープ以上の場合は県または直轄市人民裁判所に提訴することができる。裁判所が扱う事件は、労働契約に関する紛争、労働契約解除をめぐる補償金に関する紛争、労災による損害金に関する紛争、賃金に関する紛争、その他の労働に関する紛争とされている(民事訴訟法34条)。

裁判の審理は20日以内に開始し、開始から9カ月以内に結審しなければならない(民事訴訟法30条)。

労働社会福祉省の発表による労働争議件数をみると、2009-2014年までに254件があり、55%が調停で解決し、25%が取り下げられ、19%が裁判所に付託された。あとは未解決になっている。これまで組合によるストライキや抗議行動はまれであったが、今後資源の枯渇によって鉱山の閉山がおこりうる可能性があり、人員整理問題が発生する可能性がある。

最後に労働法153条は国際的な労働紛争を労働管理局や労働紛争解決委員会で処理できるし、国際条約にもとづき解決を図ることもできることを定めている。

出所:Thipmany Inthavong, Labour Disputes Settlement in Laos P.D.R. submitted to the Fifth Conference of Asia Society of Labour Law at Tokyo, March 2015.

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