基礎情報:ラオス(2018年)
4. 賃金・労働時間、解雇法制等労働条件

2018年10月11日掲載

4-1 労働契約と就業規則

労働契約は口頭または書面によって締結することができる(労働法77条1項)。ただし一方または両当事者が法人または組織の場合は、書面によって締結しなければならない(77条2項)。

労働契約の締結に際して、両当事者は平等な立場で労働契約の成立の可否を決定することができ、もしそこに誤解、強迫、虚偽があった場合は、労働契約は無効となる。書面で労働契約を締結する場合、締結する場所、日付、署名または拇印が必要であり、さらに村長および信頼できる双方の立ち合い人による最低3名の署名または拇印が必要となる。労働契約書を公証役場に登録することができる。(契約内および契約外の債権法15条)。ラオス語が公用語になってはいるが、ラオスではラオス語のほかに、モン語やアカ語など複数の言語が使われており、労働契約を締結する際にどの言語を使うかを決める必要がある。

労働契約には以下の事項を定めなければならない(78条)。

  • 使用者と労働者の氏名
  • 労働者の仕事、権利と義務、責任および専門性の範囲
  • 労働者の給料または賃金
  • 労働契約の期間、契約の開始日および終了日
  • 使用者と労働者の現住所
  • 給料および賃金の支払方法
  • 試用期間
  • 福利厚生制度
  • 労働日、週休日、休日
  • 労働契約終了時に労働者の受け取る給料や追加の報酬
  • その他の労使双方で法律上必要と認める事項

以上の項目の中で労働法によって規制を加えられている論点がある。

(1) 試用期間

未熟練労働者の場合は30日を超えることはできない。熟練労働者の場合60日を超えることができない(79条2項)。試用期間中にやむをえない理由で10日までは欠勤することができる。その期間は試用期間に含まれない。試用期間終了日の7日前に本採用するかどうかの通知をしなければならない。試用期間中の賃金は本採用後の賃金の90%以上とされている(79条5項)。

(2) 契約の期間

期間の定めのある労働契約の場合、両当事者が更新したいときは、15日前に相手に予告し、60日内に延長の手続をおこなわなければならない。予告がない場合、労働契約は期間の定めのない契約となる。労働契約の期間は3年を超えることができない。3年を超える場合は、期間の定めのない労働契約に転換される(76条2項)。

(3) 就業規則

使用者は、事業所の内部規則として労働者の保護に関する就業規則を制定することが義務づけられている。

就業規則は、使用者と労働組合、労働者代表または事業所の労働者の過半数との協議を経て、さらに労働管理局の承認を得る必要がある(63条2項)。就業規則はラオス語で作成され、外国人がいる場合には、その母国語で翻訳されなければならない(63条5項)。就業規則は労働者に周知させる必要があり、掲示板や特定の場所に掲示、印刷して配布しなければならない(65条)。

就業規則に定めるべき内容は以下である(64条)。

  • 事業所の開始および終業時間、事業所の所在地、業務の内容
  • 休憩時間、食事時間
  • 週休日
  • 病気休暇およびその他の必要な休暇の日数
  • 装具や道具、保護器具の使用法を含む職場の労働安全対策、業務上疾病を予防するための規制や安全衛生基準
  • 労働紛争解決の手続、懲戒処分の手続
  • 労働者への福利厚生および遵守すべき義務

就業規則を普及させるために労働社会福祉省は「モデル就業規則」を作成している。それに基づいていると、労働監督局の承認を得やすくなる。

4-2 最低賃金制度

最低賃金の定義は2015年2月9日に公布された「ラオスの労働者の最低賃金の改正に関するガイドライン」(No.808/LSW)で、「最大26日間の労働における金額とし、時間外手当、各種手当、奨励金、食事、宿泊費、送迎費、日当などの福利厚生分を除く基礎給与とする」とされた。諸手当は含まないので、最低賃金は基本給だけを規制することになっている。ラオスの最低賃金は全国一律であり、月額単位で決められている。首都であるビエンチャンと地方との生活水準の格差が大きいが、地域によって差をつける最低賃金は設定していない。労働社会福祉省、ラオス労働組合総連合、ラオス商工会議所の三者による国家労働委員会の話し合いで最低賃金額の引き上げ額が首相府に提出され、首相が最終的に決定する仕組みになっている。

1991年にはじめて最低賃金が決められてから、8回目になる最低賃金の改定について2017年7月から議論されはじめた。現行の2015年4月からは、7回目の改定によって、最低賃金は900,000キープであったが、賃金実態調査を受けて、ラオス労働総連盟は1,200,000キープに上げることを主張し、ラオス商工会議所は1,000,000キープを主張していた。これに対して労働社会福祉省は1,100,000キープ(約129ドルを提示した。ラオスでの最賃の改定は、最終的には首相によって決定されるが、2018年5月1日から新しい最低賃金額1,100,000キープが施行された。

労働環境の厳しい事業所、たとえば有害物や化学物質を扱う業務、放射線や感染症にさらされる業務、ガスや煙を吸い込む業務、地下での業務、非常な高温や低温での業務、へき地での業務などの場合には、最低賃金に15%を上乗せした額を支払うことが義務づけられている(108条)。

日給、時間給、出来高給、成功報酬によって支払われる場合であっても、最低賃金額を下回ることはできない(107条)。

4-3 賃金に関する法律上の規制

(1) 時間外労働手当

労働日の午前11時から午後10時までの間で働く時間外労働の場合には150%、午後10時から午前6時までの間で働く時間外労働には200%の割増を払う義務がある。基礎となる1時間の単価は、月26日分の給与を計上して、計算することになっている(労働法114条)。月に日数は31日、30日、29日、28日の4通りがあるので、労働日数は月によって異なるが、月の給与を26日働いたとみなして計算することになる。これは労働者に有利になる月と不利になる月が生じることを意味する。割増率が日本より高いために、有利になる場合と不利になる場合があり得るが、有利と不利が相殺されるので、妥当な解決方法とみている。

週休日や公休日の勤務の場合には、午前6時から午後4時までの勤務には200%、午後4時から午後10時までの勤務には300%、午後6時から午前6時までの勤務には350%の割増率になっている(115条)。

(2) 夜間勤務や夜間交代勤務手当

通常の勤務が午後10時から翌日の午前6時に及んでいる場合、通常の勤務時間帯の時給の15%の割増率を支払わなければならない(116条)。

(3) ボーナス

ボーナスについての労働法上の定めはないが、労使が合意して就業規則にボーナスの支払いについての規定を設けた場合、ボーナスの支払い義務は生じる。1カ月分のボーナスが年末に支払われる場合がある。

(4) 賃金支払いの原則

賃金は月に最低1回定められた日に支払われなければならない。出来高払いの場合には、2カ月に1回以上支払われなければならない。

労働者の出産、疾病、事故によって賃金の前払いを請求した場合、使用者はそれに応じることができる。ただし、前払い分を賃金から控除する場合、2割を超えてはならない(110条)。

(5) 休業手当

使用者の過失によって操業できない場合、賃金の50%以上の休業手当を労働者に支払わなければならない(111条)。

(6) 賃金の優先債権

事業所が解散や倒産した場合、労働者の賃金は他の債権者の債権より優先して支払いを受ける権利を有する(112条)。

(7) 賃金からの控除

労働者の責任によって損害が発生した場合、その賠償額を賃金から控除することができる。ただし20%を超えることはできない(113条)。

賃金から所得税、労働基金、社会保障基金への掛け金を控除することが認められている。

4-4 労働時間制度

(1) 所定労働時間

所定労働時間は1日8時間、1週間48時間で、週6日制である(労働法51条1項)。例外として以下の業務に従事し、許可を受ければ1日6時間、週36時間を所定労働時間とすることができる(51条5項)。

  • 放射能や感染症にさらさる業務
  • 健康に有害なガスや煙を吸引する業務
  • 爆発物のような危険な化学物質を扱う業務
  • 坑内や地下での業務、水中や高所での業務
  • 非常な高温や低温での業務
  • 振動する機械を扱う業務
  • 管理が不可能で危険性の高い業務の場合には、所定労働時間をさらに短縮することができる(51条4項)。

(2) 夜間勤務

午後10時から午前6時までの勤務を、夜間勤務としている。医師の診断によって夜間勤務ができない場合は、3カ月を超えない期間内に、配置転換させなければならない(61条)。

(3) 交代勤務

業務の必要性から交代勤務が可能となっている。1交代当たり8時間または6時間を超えてはならない。午後10時から午前6時までの夜間勤務に従事する場合、最低11時間のインターバルを置かなければ、次の交代勤務ができない(62条)。

(4) 時間外労働

時間外労働が可能になるためには、使用者が事前に労働者にその必要性を説明して合意を得るほかに、労働組合または従業員代表の事前の合意がなければならない。大規模な災害や緊急事態を除き、1カ月45時間、1日3時間を超えることはできない。連続4日以上の時間外労働を禁止している。1カ月45時間を超える場合は、労働監督局の許可が必要となる(53条)。

(5) 休憩時間

労働者は60分を下回らない昼食時間を取ることができる(51条3項)。それ以外に使用者は適切な休憩時間を設けなければならない。

交代勤務の場合の休憩は、食事時間は45分、それ以外の休憩は15分を超えない範囲で認められる。(52条)。

(6) 休日

(a) 週休日

少なくとも週1日または月4日の休日を認められている。日曜日以外の曜日が休日でも構わない(54条)。

(b) 公休日

以下の公休日は有給で休むことができる(55条)。

  • 建国記念日   12月2日
  • 新正月     1月1日
  • 国際女性の日  3月8日(女性のみ)
  • ラオスの正月  4月中の3日間の休み
  • メーデー    5月1日
  • 教師の日    10月7日(教師および学校経営者のみ休み)
  • 外国人労働者にはそれぞれの建国の日が1日休み
  • 公休日は週休日にあたる場合には代休を取得することができる。
  • 伝統的慣習による休日は、労使の合意によって休日とすることができる。

(7) 休暇

(a) 疾病休暇

医師の診断書を添えて申請すれば疾病休暇を有給でとることができる。年間30日を超えることはできない(56条1項)。

(b) 個人的事情による休暇

家族の事情や個人的事情によって休暇を申請できる場合がある。その理由を証明できる書類を添付し、労働組合または従業員代表の合意を得たうえで申請すれば、有給で少なくとも3日の休暇をとることができる(58条)。

  • 労働者の父母、配偶者、子供が入院して看護する者がいない場合
  • 労働者の父母、配偶者、子供が死亡した場合
  • 労働者が結婚する場合
  • 配偶者が出産および流産する場合
  • 災害によって甚大な被害を受けた場合

(c) 年次有給休暇

1年勤務した労働者は15日の有給休暇を取得する権利を有する。放射線や感染症にさらされる業務、有害なガスや煙を吸引する業務、化学物質を扱う業務、坑内や地下の業務、非常な高温や低温での業務、振動する機械を扱う業務などの健康を害する恐れのある業務の場合には、18日の有給休暇を取得する権利を有する(57条1項)。

有給休暇を取得する場合、事前に使用者と合意の上で休暇日を設定する。使用者側の理由によって有給休暇を取得できなかった場合、未消化の年休日数分に通常の賃金を支払わなければならない(57条4項)。

4-5 年齢に関する法制度

定年年齢は男性60歳、女性55歳となっており、この年齢が15年以上働いていると老齢年金を受け取れる年齢である。ただし、女性は希望すれば、定年を延ばすことができる。

労働法102条によれば、14歳以上であれば雇用可能である。しかし、残業はできない。必要であれば、12歳以上14歳未満の者を軽作業のために雇用することは可能である。軽作業は、身体や精神に悪影響を与えないこと、学校などへの通学を妨げないことが条件となっている。

18歳未満の者を雇用する場合、身体や精神に安全でなく危険な作業、職務、場所での仕事を禁じるなど一定の条件が付けられている。また、名前、生年月日などの記録の保管を義務付けている。

出所:労働法72条、101条~103条。

4-6 労働安全衛生

使用者に労働安全や労働者の健康を保持する義務が課せられている(119条)。たとえば、安全基準やリスクを定期的に点検し、最低年1回労働監督局に報告書を提出しなければならない。企業内の規則を労働組合または従業員代表または過半数の労働者と協議して合意にもとに作成しなければならない。労災が発生した場合にはその詳細を労働監督局に報告しなければならない。

労働者100人未満の事業所には、安全および健康を管理する責任者1名を配置しなければならない(123条)。100人以上の事業所では、責任者2名以上を配置して、安全および健康管理委員会を設置して研修を実施しなければならない(123条)。麻薬の禁止、HIV・エイズの感染症防止の研修などが想定されている(119条10項)。

労働者50人以上の事業所には最低1名の医療スタッフを配置し、50人未満の場合には、医薬品を常備し、応急処置責任者を配置する必要がある(124条)。最低年1回の健康診断を実施すること、危険業務や夜間業務の場合には、最低年2回の健康診断を実施しなければならない(126条)。

資材の適切な配置、落下防止策、高所での作業の際のロープや安全ベルトの装着、足場の固定、作業台の高さの調節、危険個所に接触ガードを設置、照明設備、換気、騒音対策、有害化学物資の適切な管理、暑さや寒さ対策、緊急事態への対応、ヘルメットやサングラス、マスクなどの防護具の配給等が定められている。

飲料水、食堂、休憩所、ロッカー、通勤用の駐車場、男女別トイレ、洗面台、従業員の送迎バスの手配等が定められている。

労働事故が発生し、労働者が4日以降休業しなければならない場合には、事件の詳細を労働監督局に報告されなければならない。労働者が負傷または死亡した場合も同様である(125条)。

4-7 女性および年少者

職場における男女平等の取り扱いについて定め、女性の生殖機能からの保護について規定を設けている(労働法96条)。

妊娠中または1歳未満の幼児を育てている女性には一定の業務に従事することを禁止している(97条)。店内の高さ2メートル以上での業務、10キログラム以上の重さの取り扱い、深夜および休日業務、連続して2時間以上の立ち仕事、危険業務が挙げられている。これらの業務に従事している女性を、賃金を変更することなく臨時に他の業務に異動させなければならない。

(1) 出産休暇

産前産後合わせて105日以上の休暇をとることができる。そのうち産後は42日以上とらなければならない。双子の場合には120日以上の休暇をとらなければならない。流産や死産の場合でも有給の休暇をとる権利を有する(98条)。

(2) 育児時間

出産後1年以内の女性労働者は、1日1時間の授乳時間が与えられ、子供の予防接種のための休暇をとることができる(98条3項)。

(3) 女性に禁止される行為

採用前に妊娠の検査をすること、婚姻や妊娠を妨害するような勤務条件を設定すること、婚姻や妊娠を理由に解雇することが禁止されている(100条)。

(4) 年少者の採用

12歳以上14歳未満の者を軽易な業務に採用できる。14歳以上18歳未満の者を採用できるが残業が禁止されている(101条)。年少者の勤務記録を作成しておかなければならない。それを労働管理局に提出しなければならない(103条)。

(5) 年少者に禁止される業務

危険な業務、精神的身体的に健康に有害な業務、強制労働、債務労働、人身売買、買春やポルノ、覚せい剤や中毒性物質を売買、生産、運搬の業務が禁止されている(102条)。

4-8 外国人の雇用に関する制度

ラオスにおける外国人の雇用は労働社会福祉省の許可によって割り当てられる。この割り当ては技能開発就労斡旋局の調査を受けて大臣によって許可される。ラオス人の雇用を優先することが原則であるが、肉体労働者の場合には全労働者の15%、頭脳労働者の場合は全労働者の25%を限度とする(労働法68条)。政府による5年以下の大規模事業または重点事業をおこなう場合には、政府と事業主との契約に従って実施するので、この割合にこだわらない。ASEAN諸国の域内を移動可能な職種の労働者の場合には、ASEAN内の協定に基づいて決められる。

外国人は年齢が20歳以上、適切な技術と専門レベルを有すること、犯罪歴がなく、健康であることが求められている(43条)。雇用期間は12カ月以下の期間であり、延長も可能であるが、最大5年までである。経営者や専門家は別途考慮される(45条)。

許可を得た企業は、許可を得た日から1カ月以内に労働許可証を作成する。労働者ビザを取得すれば、労働契約の定めに従って、労働許可証が発行される(44条)。ただ試用期間、季節的労働および臨時的労働の場合には、労働許可証の期間は3カ月を超えてはならない(44条3項)。

外国人はラオス人労働者と同等の取り扱いを受ける権利を有する(69条1項)が、ラオスの法令や伝統的慣習を遵守し、ラオス労働者に技術移転を図る義務、納税の義務、期間終了後ラオスから退去する義務を有する(69条2項)。

外国人を受け入れる企業は、外国人にラオスの伝統尊重を助言し、ラオス人労働者の育成計画書を労働管理局に提出し、外国人の労働契約終了後労働許可証を労働管理局に返納しなければならない(70条)。

4-9 労働契約の終了

(1) 期間の定めのない労働契約の場合の解雇制限

労働法80条では、一方当事者は期間の定めのない労働契約を解約することができる。この場合、予告期間として頭脳労働の場合4日、肉体労働の場合30日が求められている。この解雇の予告期間中に、1週間のうち1日を有給で再就職先を探すことを使用者は認めなければならない。その間に事故や負傷を負った場合、回復に要する時間は予告期間として換算されない(85条)。

82条では、以下の解雇理由がある場合に、使用者側は労働契約を解約できる。

1つは、労働者に専門的技能を有しない、または健康診断書があっても健康な状態にない、もしくは能力と健康に合ったより適切な別の仕事に従事することが認められた後に、労働者が働くことができない場合。

もう1つの場合は、労働単位(企業単位)内で仕事を改善するために労働者の数を減らすことが必要と使用者が判断し、組合や従業員代表、過半数以上の従業員と相談して労働監督官に報告した場合に、労働契約を解約できる。その場合、解雇予告や人員整理の理由を事前に説明しなければならない。整理解雇の場合に、労働組合が関与することが認められている。

さらに、以上2つの理由以外に、労働契約、就業規則、労働者と使用者の合意によって定められる解雇理由に該当する場合。

86条では、労働者の責めに帰すべき事由で使用者が解雇する場合は、労働監督官の許可なく解雇することができる。その事由として以下が定められている。

  1. 故意に使用者の損害を与えた場合
  2. 使用者から警告を受けながらも、労働単位(企業単位)の就業規則、労働契約に違反すること
  3. 正当な理由なく、連続4日間以上仕事をしないこと
  4. 裁判所から禁固刑を受ける判決を受け、労働単位(企業単位)に対して故意になされた犯罪行為のなされた場所に監禁される場合
  5. 他の労働者、特に女性の権利に違反し、警告を受けた場合

この場合であっても、労働者は賃金を受ける権利を失わないとされている。つまり、労働契約の解約が効力を有するまで、賃金請求権を労働者が有するということである。

87条では、解雇できない場合を例示している。

  1. 妊娠や一歳以下の子どもを持っている女性
  2. 治療中でリハビリを受け、診断書を持っている労働者
  3. 労働単位(企業単位)の従業員代表や組合役員である労働者
  4. 法廷手続中の者または裁判所の決定を待っている労働
  5. 負傷して治療を受け、診断書を持っている労働者または自然災害の被害を受けた労働者
  6. 年休や使用者の許可を受けて休暇を取得する労働者
  7. 使用者の要請によって別の場所で仕事する労働者
  8. 使用者に苦情を申し立て、または訴訟提起をする労働者または労働単位(企業単位)内で、労働法や労働紛争に関して政府職員に協力する労働者

使用者が以上のケースで解雇する場合には、労働監督官の許可が必要になる。

88条では、以下の場合には解雇が不当と判断される。

  1. 正当な理由のない労働契約の解約
  2. 直接または間接に権限を濫用して労働契約を使用者が解約する場合、または労働者の基本的権利が侵害されて、仕事ができない状態においこまれる場合
  3. 労働者または従業員代表から事前に抗議を受けた後に当該労働者の労働契約を使用者が解約する場合、しかし、労働者が辞職しなくてすむように問題を処理せず、変更もおこなわない場合

89条では、不当な解約の法的効果を定めている。

  1. 労働者は以前の地位への復職、またはその他の適切な仕事に配置することを求める権利を有する。
  2. 使用者が労働者を復職させず、または労働者が仕事を中止した場合、使用者は労働契約や法に従って補償金やその他の給付を支払わなければならない。

90条では、補償金の額について定めている。解雇された月に直近の月の給与の10%に勤続月数をかけた額である。88条にもとづき不当な解約の場合には、解雇された月にもっとも近い月最の給与の15%に月数をかけた額である。本法に定められていない理由で労働契約を解約する場合、使用者は労働契約、労働単位(企業単位)の就業規則、労働協約に従って補償金が支払われなければならない。この補償金は失業中の生活費の一部になる。

93条では、労働契約が終了する場合を定めている。

  1. 労働契約が完全に実施された場合
  2. 期間の定めのある労働契約で、期間が満了した場合
  3. 両当事者が解約に合意した場合
  4. 使用者または労働者が死亡した場合
  5. 労働者が無断で、裁判所から禁固刑の判決を得た場合

労働者の死亡による解約の場合、使用者は、90条にもとづき計算される補償金額の50%を支払わなければならない(93条2項)。本人は死亡しているので、その遺族に支払われることになる。それは労働者本人への退職金であり、遺族の生活費としての意義がある。

(2) 期間の定めのある労働契約の場合

期間の定めのある労働契約の場合、両当事者の合意または一方当事者が契約違反をした場合に、取り消すことができる。違反者は、契約違反によって生じる損害賠償責任を負う。使用者が違反した場合、使用者は契約満了までの残りの期間の給与や手当を労働者に支払う義務が生じると同時に損害賠償責任も生じることになる。

93条2号によって、期間の定めのある労働契約で、期間満了すれば労働契約を解約できる。

(3) 解雇後の取り扱い

労働者が辞職してから7日以内に申し出があれば、使用者は雇用証明書を発行しなければならない。証明書には、勤務開始日、終了日、仕事の地位を書かなければならない。労働者は賃金や勤務評価の証明を求めることができる(95条)。

(4) 労働者側からの退職

83条では、以下の場合に、労働者側から労働契約を解約、つまり退職できる。使用者の解雇の場合と同様な予告期間が必要である。1つは、労働者が治療を受けたのにもかかわらず健康状態がよくない場合、健康診断書があって、使用者が当該労働者を新しい地位に移動したが、それでも労働者が働くことができない場合、2つ目は、労働者が労働契約に基づき、複数回使用者に抗議しても、解決されない場合、3つ目は、労働者が仕事のできない理由として職場の移動があげられ、それを組合、従業員代表および自治体の長が書面で証明する場合、4つ目は、使用者の脅迫、嫌がらせ、セクハラがあり、使用者がそれを無視する場合。

(5) 軍隊勤務の場合の取り扱い

81条では、労働者が国の任務(軍隊)につく場合には、労働契約は停止または延期される。その期間は1年を超えないことが条件になっており、賃金や手当は支払われない。期間が終わったならば停止または延期以前に就いていたと同じ地位に労働者を受け入れなければならない。それができない場合は、使用者は損害賠償を支払う義務が生じる。労働者が仕事に復帰することや新しい仕事に就くことを拒否する場合には、損害賠償を請求する権利はない。

(6) 使用者の変更する場合の取り扱い

84条では、事業の売却、委譲、企業合併等によって使用者が変わる場合、旧使用者は頭脳労働に対しては45日、肉体労働に対しては30日前に事前通知をしなければならない。この期間中に、再就職先を探すために、労働者は1週間に1日の有給を取得する権利がある(85条)。

参考レート

  • 10,000ラオス キープ (LAK)=131.50円(2018年10月11日現在 Exchange-Rate.org新しいウィンドウ)

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