基礎情報:マレーシア(2005年)
基礎データ
- 国名:マレーシア (Malaysia)
- 人口:2613万人 (2005年、マレーシア統計局)
- 実質GDP成長率:5.3% (2005年)
- GDP:691億ドル (2005年、マレーシア統計局)
- 一人あたりGDP:10400ドル (2005年予測、CIA)
- 労働力人口:1039万8300人 (2005年第4四半期、マレーシア統計局)
- 就業者数:999万8100人 (2005年第4四半期、マレーシア統計局)
- 失業率:3.8% (2005年第4四半期、マレーシア統計局)
資料出所:マレーシア統計局、
マレーシア中央銀行
、
CIA
、
マレーシア人的資源省、
マレーシア工業開発庁ホームページ
I.労働関係の主な動き
1.ナショナルセンターMTUCのトップ交代
2004年12月30日に行われたマレーシア労働組合会議(MTUC)(注2)の役員選挙の結果、サイド・シャヒル全国輸送機器・関連産業組合書記長(NUTEAIW)が47票差で現職のザイナル・ランパック氏を破り、新委員長に就任した。任期は2005年から2007年までである。これにより、約20年にわたるザイナル時代が幕を閉じることとなった。マハンマド・シャフィー副委員長及びラジャセカラン書記長は、現職ポストを守った。
2.パキスタン政府と二国間協定締結で10万人の受け入れ
アズミ・カリド内務相は3月17日、インドネシア人不法就労者に対するアムネスティ実施後の深刻な労働力不足に対応するため、パキスタン人外国人労働者(男性のみ)10万人の受入れに合意する旨のパキスタン政府との二国間協定に調印した。同協定は、マレーシアのアブドゥラ首相が2月にイスラマバードを訪問した際のパキスタン政府との合意を踏まえたもの。同首相は、パキスタンを今後のマレーシアにおける労働力受け入れ主要国のひとつに位置づける考えも明らかにしている。
労働力不足への緊急措置としてパキスタン人労働者の受け入れを決めた背景には、アムネスティ実施により一旦大量に本国送還したインドネシア人不法就労者のうち、期待通り本国での合法化手続きを経てマレーシアに再入国した者がごく僅かに過ぎなかった現実がある。アムネスティにより本国送還の対象となったインドネシア人不法就労者は、約40万人に及び、企業側の痛手は深刻だ。3月24日の政府発表によれば、製造業で20万人、建設業で15万人、プランテーションで5万人、サービス業で2万人もの労働力不足が生じていることが明らかになっている。
マレーシアへの再入国がスムーズに進まないのは、労働者個人の事情ではなく、インドネシア政府の合法化手続きが非常に非効率で時間がかかるためであるとマレーシア政府は分析している。さらに、今回のアムネスティにより、マレーシアへの再入国の対象となった労働者に対し、インドネシア政府は、新たな手数料を課している。負担しきれない対象者は、当然ながら、インドネシアに留まらざるを得ない。マレーシア政府は、依然としてインドネシアを優先的な中心的な受入国と位置づけるものの、経済への深刻な影響に鑑みれば、政府側・使用者側ともに再入国予定のインドネシア人を無期限に待つ余裕はないのは明らかだ。
パキスタン政府との今回の二国間協定では、1)パキスタン人10万人の就労を労働力不足が生じている全業種で認める、2)採用手続を簡素化・迅速化する(事前研修を免除し、健康診断のみ義務化)――など緊急事態に対応するための若干の柔軟性を盛り込んでいる。パキスタン側で本件を担当するのは海外雇用社(OEC(注3))。OECは、募集・採用手続きをスピードアップすることでビザの発給を迅速化するほか、採用候補者に対する試験・面接などに関する使用者へのバックアップ、内定者に対する渡航手続支援も行う。アズミ・カリド内務相は、労働力の送り出し経験が長いパキスタン側の迅速な対応に期待すると同時に、「外国人労働者の補充が必要な使用者は、今後パキスタンを主要な労働力送り出し国として認識して欲しい」などと理解を求めている。
だが、こうしたマレーシア政府の性急な動き対しては、1)10万人ものパキスタン人労働者とマレーシアの使用者側ニーズのマッチングは容易ではない、2)インドネシアと異なり渡航コストが膨大、3)慢性的労働力不足の緩和には一国に依存せず、複数国からバランスのよい受入が必要、4)一度に大量の労働者を受け入れると国内雇用へのマイナス影響が生じる可能性がある――といった懸念の声もあがった。マレーシア政府としては、今回の協定締結をきっかけに、インドネシア政府が重い腰をあげ、マレーシアへのインドネシア人労働者の早期再入国に向けた取り組みを急ぐことを期待している。
3.外国人労働者課徴金の引き上げ
7月30日付、ニュー・ストレイツ・タイムス紙によると、マレーシア移民局は外国人労働者への依存度を軽減し、国民の雇用を促進するため、外国人労働者雇用の際に使用者が負担する課徴金を製造業・建設業を除く全産業において8月1日より引き上げることを発表した。
マレーシアでは従来、外国人労働者の雇用規制のため、外国人労働者を雇用する使用者に対し、産業により幅はあるが、360~1200リンギの課徴金が課せられていた。8月1日より発効した課徴金のうち、サービス業、プランテーション、レストラン・衣料アウトレットについては、下記表の通り。
業種別 | 半島部(リンギ) | サバ・サワラク州(リンギ) |
---|---|---|
サービス業 | 1,800 | 1,440 |
プランテーション | 540 | 360 |
レストラン・衣料アウトレット | 1,800 | 1,400 |
マレーシアには合法的に就労している外国人労働者は160万人いるとされ、中小企業と小規模経営の伝統的農業の分野における人手不足が指摘されている。ナジブ副首相は、これらの仕事はマレーシア国民が従事すべきであるとし、安価な労働力が期待できるからという理由で、安易に外国人労働者を雇うべきではないと主張している。
一方、MTUC(マレーシア労働組合会議)は、課徴金の引き上げは、外国人労働者の流入阻止あるいは削減に効果が無く、むしろ外国人労働者により重い負担を課すことになると指摘している。従来、課徴金は全額労働者の賃金から差し引かれていたが、2005年1月、マレーシア政府は課徴金の使用者側負担割合を最大で課徴金の3割とするとの方針を打ち出した。しかし、MTUCの調査によると、使用者の多くはいまだに課徴金の全額を労働者の賃金から差し引いているという。MTUCは、全産業について、外国人労働者を含むすべての労働者に適用可能な最低賃金を導入するよう要求するとともに、人的資源大臣に対し、移民局が外国人労働者のニーズを随時把握できるよう、労働許可発行件数(manpower register)を更新するよう要求した。
4.マレーシアの公務員、週休2日制へ
2005年7月1日より、マレーシアでは、全国で約100万人いるとされる連邦政府・州政府・地方と準政府機関等も含めた公務員の完全週休2日制を導入した。従来の土曜日の隔週半日出勤からの変更で、1日あたりの労働時間を30分延長して総労働時間を調節している。勤務時間は州により異なるが、典型的な勤務時間は8時から17時、休憩が13時~14時の1時間で実働8時間である。(各州の労働時間と休日については、下記表を参照。)なお、ケダー、クランタン、トレンガヌの各州については、従来は木曜日に隔週半日出勤、金曜日が休日であったが、連邦政府が土日の週休2日制を導入するに当たり、連邦政府から歩調を合わせるようにとの要請を受け、金曜日と土曜日を休日とするよう改めた。マレーシアのアブドゥラ首相は、休日・余暇時間の増加により、国内観光業が潤い、経済効果が上がることを期待している。
州 | 勤務日 | 休日 |
---|---|---|
ジョホール州、マラッカ州、ペナン州、ヌグリスンビラン州、パハン州、ペラ州、ペルリス州、スランゴール州 | 月曜日から金曜日 ・8時~17時 |
土曜日と日曜日 |
サラワク州 | 月曜日から金曜日 ・8時~17時 |
土曜日と日曜日 |
ラブアン島、サバ州 | 月曜日から金曜日 ・8時~17時 |
土曜日と日曜日 |
クアラルンプール、プトゥラジャヤ | 月曜日から金曜日 ・7時半~16時半 ・8時~17時 ・8時半~17時半 |
土曜日と日曜日 |
ケダー州、クランタン州、トレンガヌ州 | 日曜日から水曜日 ・8時~16時45分 木曜日 ・8時~16時半 |
金曜日と土曜日 |
注:
- マレーシアの統計では、一人当たりGDPは見当たらなかった。主要統計に示されているのは、一人当たり国民所得(GNI)で、それによると、16693リンギ (4393ドル)(2005年、マレーシア工業開発庁)である。
- 1949年設立。官民両部門を組織しており、組合員数は約50万人である。加盟組織数 250組合(2005年5月現在)、地方組織数は10。政府の審議会やILOの会議に労組の代表として参加している。ICFTUに加盟。
- 正式名称は、Overseas Employment Corporation.パキスタン労働省関連の公的機関であり、パキスタンの労働力の海外送り出しが主な任務である。
参考:
- 1米ドル=114.87円(※みずほ銀行ホームページ2006年6月22日現在のレート参考)
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- 基礎情報:マレーシア(2013年)
- 基礎情報:マレーシア(2005年)
- 基礎情報:マレーシア(2004年)
- 基礎情報:マレーシア(2003年)
- 基礎情報:マレーシア(2002年)/全文(PDF:815KB)
- 基礎情報:マレーシア(2000年)
- 基礎情報:マレーシア(1999年)
※2002年以前は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。
関連情報
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