基礎情報:イタリア(2005年)

基礎データ

  • 国名:イタリア共和国 (Republic of Italy)
  • 人口:5,846万人 (2005年1月1日)
  • 実質GDP成長率:0.0% (2005年)
  • GDP: 1兆3,936億ユーロ (2004年、PPS)
  • 一人あたりGDP:2万4,000ユーロ (2004年、PPS)
  • 労働力人口:2,436万人 (2004年)
  • 就業者数:2,240万人 (2004年)
  • 失業率:8.0% (2005年)

資料出所:欧州統計局(EUROSTAT)ホームページ

I.労働関係の主な動き

1.雇用情勢

Censis(社会投資研究センター)が公表したイタリアの社会状況に関する2005年報告書によると、イタリア人の33.8%が、晩や夜間、週末などの時間帯に職場あるいは自宅で働くのが常態になっているという。これに加えて、19.8%の労働者が、常態ではないにせよこうした時間帯に働いており、これらを合わせると、実に100人中53人に相当する約863万8000人もの労働者がこうした時間帯の労働に従事していることになる。こうした「非典型的な」労働の時間帯としてもっとも多いのが土曜日(29.5%)であり、晩(11%)、日曜日(6.5%)、夜間(5.6%)がこれに続く。社会的な要請の変化に伴い、就労の時間帯も弾力化している。

雇用の増加に関しては、もっぱら従属労働(注1)がこれを牽引している。2005年第2四半期の従属労働の雇用は、前年同期比で2.4%増加した。一方、独立労働(注2)(2.7%減)とパートタイムの従属労働は減少した。雇用者数は、2000年を100とすると、2005年6月には96.3に減少した。

女性に関しては、生産活動に参加する意思が希薄であり、家庭に長期間留まる傾向が強い。イタリアの2004年の女性の就業率は45.2%であり、EU諸国のなかでは、マルタ(30.6%)に次いで低い。地域間で格差が大きいことも問題となっている。女性労働者は未だに周辺的な立場にあり、事務職が45%を占める一方、事業主や専門職は5.1%にすぎない。

2.賃金

イタリアにおける2005年の賃金の上昇率は、同時期のインフレ率を上回った。ISTAT(国立統計局)のデータによると、1時間あたりの協約賃金の伸びは、2005年平均3.1%で、1997年以降最も高かったのに対し、同時期の消費者物価上昇率は1.9%であった。

ISTATによると、2005年の賃金上昇の原因は、年明けの堅調な上昇やいくつかの部門(建築、警察、金融および商業)における顕著な上昇などが考えられるという。2005年の上昇率は、警察8.9%、国防軍12%、金融・保険部門3.2%、商業部門5.4%、および建築部門4.7%などであった。

ISTATは、2005年12月末に有効な労働協約は、イタリアの労働者の賃金総額の69.6%(840万人分)をカバーしていたが、残りの30.4%は賃金に関する労働協約の更新を待っている状態であったと指摘する。

3.退職手当の改革

退職手当(TFR)の積立金を民間の基金に充てる補足的保障制度(おおむね日本の企業年金制度に相当)に関する合意が11月に成立し、2008年1月1日から施行される。2008年までは、年金基金への退職手当(TFR)の移転に関する現行法が適用される。

施行日から6カ月以内に労働者が退職手当(TFR)の積立金を移転する基金を明示するか、企業に残すかのいずれかの意思表示もしなかった場合、使用者は、全国労働協約の定める基金(異なる定めのある場合を除く)へ退職手当(TFR)積立金を移転する(労働協約等の規定がない場合は、INPS(全国社会保障機関)の補足的年金基金に組み込まれる)。補足的保障制度の給付には15%の税金が賦課されるが、15年を超える保険料納付は、1年につき0.3%分が非課税となる(35年間の保険料給付の税率は9%)。

4.付属的労働に関する試験措置

ロベルト・マローニ労働社会政策大臣は9月30日、2003年9月10日委任立法276号(いわゆるビアジ改革)により導入された付属的労働(lavoro accessorio)に関する省令に署名し、試験措置が始動した。同委任立法は、付属的労働を利用しようとする者は、許可を受けた販売店でクーポン回数券を取得するものと規定する。クーポン回数券の価格は労働社会政策省省令で定められる。

省令は、1日の労務給付に対して支給されるクーポンの価値を10ユーロとしている。労働者は、付属的労務給付の受益者から受け取った報酬証書たるクーポンを、代理店に持ち込み換金する。代理店は、クーポンを提示する者に対し、その戸籍データおよび税務番号を記録した上で金銭を支払う。また、INPS(全国社会保障機関)およびINAIL(全国労働災害保険機関)に対する社会保険料として、クーポン額面のそれぞれ13%および7%を代理店が納付し、換金手数料としてクーポン額面の5%を受け取る。この結果、労働者が実際に受け取るのは7.5ユーロとなる(非課税)。

付属的労働は、同じ雇い主のもとで年間5000ユーロの報酬を超えない場合、複数の雇い主のもとでも遂行しうる。このほか、付属的労働については、労働の対象、労働の遂行主体および地域に関する要件が定められている。

付属的労働給付の対象は、臨時的な性質の些少な家内労働(子、高齢者、疾病者、障害者等に対する在宅の補助)、家庭教師、庭木の剪定、建造物や記念碑の掃除および維持・管理、社会活動、スポーツ、文化活動、慈善活動に関わる催し物の実施、緊急時(天災、自然事故等)の活動遂行のために地方公共団体やボランティア団体とともに行う活動、家族経営の事業(商業や旅行業、サービス業)である。

付属的労働を遂行しうるのは、1年以上の失業者、主婦、学生、年金受給者、障害者、復帰支援組織にいる者、イタリアにおける正規の滞在資格のあるEU域外外国人労働者で職を失ってから6カ月以内の者である。

付属的労働の試験措置が認められた地域は、ヴェルバーニア、ミラノ、ヴァレーゼ、トレヴィーゾ、ボルツァーノ、ヴェネツィア、ルッカ、ラティーナ、バーリ、そしてカターニャである。

注:

参考資料:

  1. 当機構委託調査員レポート
  2. 大内伸哉著『イタリアの労働と法』(2003年、日本労働研究機構)

参考:

  1. 1ユーロ=145.39円(※みずほ銀行ホームページ2006年6月22日現在のレート参考)

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※2002年以前は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:イタリア」

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