基礎情報:イタリア(2000年)

※このページは、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

  1. 一般項目
  2. 経済概況
  3. 対日経済関係
  4. 労働市場
  5. 賃金
  6. 労働時間
  7. 労使関係
  8. 労働行政
  9. 労働法制
  10. 労働災害
  11. その他の関連情報
国名
イタリア共和国(イタリア、ヨーロッパ)
英文国名
Republic of Italy
人口
5761万2615人 ; 資料:1998年度政府中央統計局(1997年に比較し4万9000人増加)
面積
30万1277平方キロメートル ; 資料:1997年度政府中央統計局
人口密度
189人/平方キロメートル ; 資料:1998年度政府中央統計局
首都名
ローマ
言語
イタリア語、ドイツ語、その他言語
宗教
カトリックおよび他の少数宗教
政体
議会共和制

実質経済成長率
1.5% ; 1997年度政府中央統計局資料
通貨単位
リラ
GDP
195万680(単位:百万リラ); 1997年度政府中央統計局資料
1人当たりGDP
1万9620US ドル(1993年); 資料:Garazanti 社"Enciclopedia europea"
消費者物価上昇率
2.5% ; 資料:1997年5月25日付け日刊紙"Il Sole 24 Ore"
主要産業
繊維、自動車、機械、服飾、鉄鋼、化学

対日主要輸入品目
工作機械、繊維産業用設備、時計
対日輸入額
50万2304(単位:百万リラ); 1998年度政府中央統計局資料
対日主要輸出品目
オリーブオイル、羊毛繊維
対日輸出額
140万3395(単位:百万リラ); 1998年度政府中央統計局資料
日本の直接投資
52億円(1999年) 140億円(1998年) 171億円(1997年):大蔵省通関統計
日本の投資件数
6件(1999年) 6件(1998年) 10件(1997年):大蔵省通関統計
在留邦人数
7359人(1999年10月)

出所:

  1. 大蔵省(財政金融月報、外国貿易概況)、外務省(海外在留邦人数調査統計)

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1.労働市場の概況

1999年イタリアの労働市場は、雇用の創出に関し一層の改善を見せた。1999年10月時点での最新のデータでは雇用傾向の改善を示している(1998年10月に比べプラス1.3%)。雇用者数は2069万2000人に達した。この増加は、女性雇用者においてより明瞭な形であらわれ、1998年を通じて顕著な上昇を示した(1998年10月に比べ20万人、2.6%のプラス)。公共部門での雇用の停滞と、長びく農業就業者の減少(マイナス5.5%)、そして大企業での減少を考慮すれば、この結果は、農業以外の民間部門の小企業のみに起因するものである。

1999年の労働力率は47.9%となっている。1999年10月時点では52.9%である。特に強い増加を示しているのが若年層労働者で、高年層の率は減少している。イタリアにおける労働市場への参加の度合いは、全体として先進工業国の中でもっとも低い水準の一つにとどまっている。しかし、1999年の雇用状況は改善を見せ、これは、労働市場の非正規的労働力需要の回復に裏づけられたものである。この現象は、労働力人口が1999年10月には2286万8000人から2334万7000人、労働力率が1年間で47.0から47.9%へ上昇したこと、そして失業率の数字(1998年10月時点で11.7%)によって裏づけられている。

失業率に関しては、1999年、特に南部で、主に労働者の労働市場からの引退による顕著な低下がおきたことを指摘しなければならない。東北部では、失業率は明らかに5%を下回るものであった。同様の良好な傾向は、若年層失業率でも確認できるが(1998年の10月の11.9%から99年10月には11.1%)、南部では、まだ非常に高い水準にある(35.2%から33.3%)。

産業分野では、第3次産業分野の良好な発展と工業分野の停滞状況が確認された(変動はそれぞれ+2.4%と-0.2%であった)。建設分野は改善段階(1998年に比べ+2.1%増)、農業分野は減少が続いた(-5.5%)。また、自営業(-0.1%)よりも雇用者(-1.9%)に影響が大きかった。

地域別では、需要回復効果は北部州に大きく見られ(+1.8%)、南部州の年間成長は0.1%であった。南部では失業率が上昇し、北部地域ではさらに低下した。労働力率も、北部においてはるかに高かったが、南部も顕著な伸びを示し、1998年は、前年結果に比較し、ともに上昇した。就業率は、1998年に比べほとんど変化がなかった。

1999年でも雇用の拡大は、その多くが有期雇用(最近12カ月で12%に相当する20万の雇用を創出)、パートタイム雇用(9.4%)の強い伸びに支えられたものである。しかし、雇用ストックという点で、非正規雇用労働が8~9%の数値に留まっているが、新しい採用は、大部分が非定型的契約により行われており、企業に対し実施された標本調査では、柔軟性が増し、強い変化への傾向が見られ、小企業におけるリストラは、今日労働者の約25%に影響を与えている、という状況を示している。この変化は、イタリア労働市場を一貫して柔軟性へと導いている臨時労働の導入、有期労働に対する制裁の軽減、見習期間の拡大のような契約制度の重要な改革を導入することになった政府と労使との間で1993年に結ばれた協約(1998年12月に確認)、97年から導入された立法改革(1.196/97いわゆるTreu一括法案)の結果といえる。

会社規模の拡大に従い、いかにシフト制労働の増加と超過勤務および休日出勤の減少が起こってくるかが明らかになった。

大企業においては、新規契約における標準的契約形態が50%未満であり、有期契約労働者は4%以下であるが、有期契約での新たな雇用者は、小企業の労働者で約25%、大企業の労働者で3分の1強となっている。

1999年から2000年までの2年間に関する推定では、新規雇用者の数は82万人強となっており、このうち12万人は有期雇用者、5万5000人がパートタイム、47万8000人が期間の定めのない雇用、そして18万人が職業訓練プラス労働契約の採用者である(資料:Unioncamere)。

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賃金制度の概要

イタリアには最低賃金に関する法律は存在しない。最低賃金、並びに職場での雇用期間および条件は団体協約により定められ、また、均一で全般的に有効な法的規定も存在しない。

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1.労働時間の概要

所定労働時間は、一般に、主要労組の代表者との協議を基に定められる。使用者は、一方的に従業員の労働時間を短縮し、報酬をその対応分減額する権利を認められていない。実際上、イタリアの法律のみが、労組および対象労働者の承諾を必ず得て、労働時間を短縮する権限を備えている。

2.労働時間関連法

法的規定は、1923年3月の692号法律で、1日の労働時間を8時間以内、週労働時間48時間以内に定めた。196/1997号法律(第15条)では、この規定が改正され、週労働時間を40時間に短縮した。団体協約は、40時間の標準週労働時間、またはEC指令93/104号に基づき、複数週にわたる一定期間内(1年を超えてはならない)で平均労働時間としての40時間変形労働時間制を定めた。その結果、複数週平均時間が40時間を超えないという条件で、報酬を増加せずに労働時間を週当たり40時間以上とすることが可能となった。

労働時間の上限は、196/1997号法律に明確に規定されるように、非連続的労働、監視業務就業者(守衛、護衛官等)、および管理職者には適用されない。公務員の標準労働時間は週36時間で、団体協約により定められている。

法律に基づけば、"時間外労働"とは、法律が定める時間を超えて行われた労働時間を意味する。どのような場合であっても週に52時間の上限を超えることはできない(40時間の通常労働時間プラス12時間の時間外労働)。

しかし、団体協約で異なった上限を定めることができる。契約で定めた時間を超え、しかし法律が定める上限内で行われた労働は、通常「補足」労働と規定され、時間外労働に対する手当を受ける。

3.有給休暇の概要

多くの職種の労働者が、労働時間帯または一定の機会に報酬を維持しながら、または維持せず、法律および団体協約に基づき、職場を離れる権利を持つ。

  • 300/1970号法律ではこの権利を、組合代表者、組合活動のために加入した者、その役割を遂行するため公開選出された代表者に対し保証している。
  • 特別規則では、労働者に対し、他の特殊な公的任務を果たす場合に、報酬付きまたは報酬なしで、休日を認めている。全国選挙および市町村選挙管理委員会、または司法裁判での証言に関与する労働者がこのケースに該当する。
  • 300/1970号法律第10条は、勤労学生に便宜を図る特別措置を定めている。国立学校または公的証明のある学校、もしくは公認された学業証書を交付する学校に通う労働者は、授業に出席し試験を受けられるような労働日程を求める権利を持つ。勤労学生は、時間外労働、日曜出勤を行う義務はなく、試験を受ける際は有給休暇を得る権利を持つ(各試験に対し少なくとも1日)。

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1.労使関係の概況

組合の自由は、一方が労組、他方が使用者連盟からなるイタリア労使関係の基本的原則で憲法第39条に記載されている。イタリアの労組および使用者団体は、法的人格を持たず公認されていないが、実際上存在する組織である。憲法第39条の規定は、これを施行するために必要な法律が公布されることはなかったので、空文化してしまったのである。公認されない私的な団体であるため労組および使用者団体は、一般的に民法典第36条、第37条、第38条により規定される。

イタリアには、ナショナルセンターとしてイタリア労働総同盟(CGIL)、イタリア労働組合連盟(CISL)、イタリア労働同盟(UIL)および公共部門で活動を行う自治労組同盟(CISAL、CONFSAL、COBAS等)がある。

労働組合組織率は、44.1%(1994年値。ILO, World Labour Report 1997-98による)となっている。また、イタリアの労働争議件数は110万3000件、労働争議参加人員は43万5400人、労働損失日数は58万400日(1日7時間労働を基準として計算、ともに1998年値)である。

2.労組および労使関係に関する法律

(1)概況

労働者代表組織または多数代表組織の概念を定めた特殊規定がある。この概念は、法律により定められ、全国レベルで組織され存在するという事実により労組に認められた一定の特権を取得するために重要である。

(2)個別法律

  • 1970年5月20日法律300号
    この法律は、イタリアにおける労働組合の自由、労働者および労組の権利を保護している。
  • 立法令29/1993号および委任立法59/1197号(その後立法令396/1997,8号、387/1998号)
    これらの法律は、公共分野の団体協約と労使関係を規定している。
  • 1990年6月14日法律146号
    この法律は、不可欠な公益業務におけるストを規制し、ストの際に必要最小限の公益業務を確保する手段を定めている。

(3)労組

イタリア共和国憲法第39条は、労働組合結成の自由を宣言した。それは、各個人が組織を作り、法律から一切の条件を付けられずに労組に加入し、それより脱会し、多くの労組の中から選択を行い、参加を拒否する(否定的自由)自由を意味する。

しかし、第39条の規定は空文化しており、労組および使用者団体は、その組織員のために合法的に適用可能な団体協約を結ぶことができない。

2000年4月現在、CGIL が524万7000人、CISL が226万3000人、UIL が177万7000人の加盟者(国際自由労連 ICFTU 発表)となっている。この3ナショナルセンターは、「行動の一致」により特徴づけられている。これらの団体は、現在闘争を低減しようと努めている。

少数派であるが重要度を増しているのが、CISAL である(いくつかの公共行政分野、特に学校、鉄道等のみで顕著に認められる新ファシスト同盟)。いくつかの独立した組合が一つの組織に集合した CISAL は、1980年代、上記3労組の活動低下により成長した。今日 CISAL は、組合員を100万人と発表している(第2次産業で35万人、公益業務で35万人)。また CONFSAL は、いくつかの自治労組により構成されるもう一つの組織で、特に学校で活動が盛んである。

ラジカルな独立したいくつかの労組で作られる COBAS は、行政のいくつかの部門(郵便、学校、鉄道)で勢力を持っており、極端な団体行動を行い、しばしば主要同盟と明確に対立している。

第2次産業の緊張は、伝統的に常に強く、重大な不均衡と政治的分裂を反映している。最近、労使関係当事者の行動形態が変化し、この10年間の労使紛争の指数(期間、激しさ、参加者数)は減少している。

(4) 使用者団体

使用者団体は、大きく2つの機能を持っている。使用者の権利を保護することと、労組と団体協約を結ぶことである。民間の使用者は、工業(イタリア工業連盟)、商業(イタリア商業連盟)、農業(農業総同盟)の経済分野ごとに組織されている。その他、中小企業を組織する連盟もある(Confapi)。手工業分野は、その代表である2つの異なる連盟を持っている。手工業職人連盟と CNA である。イタリア工業連盟は、使用者団体の中で最大の力を持っている。最新の推定(1998年)によれば、この連盟は420万人を雇用する11万の企業を代表している。

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労働政策の概況

イタリアの1992年から98年までの労働市場に対する方針は、92年から93年の間に行われた政府と労使当事者との合意の結果であった。1993年7月23日の協定によって、所得政策と労使合意のモデルが準備され、インフレを抑止し、家計の収入を守り、公共財政を健全化し、ヨーロッパ統合の目標を達成することを可能とするような、制限、手続き、行動形態に関するシステムを決定する団体交渉制度が作られた。

1990年代初頭に開始された構造改革は、96年、政府と労使当事者の間で署名され、2年後立法措置がとられ新たな推進力を得た。

しかし、このような努力が、労働の柔軟性の向上とその結果としての労働市場の規制緩和を目指していたとしても、新しい雇用の創出、失業率の減少という点では僅かなものであった。マクロ経済指標を追い求める中で達成されたものは、雇用の創出には反映されなかった。

イタリア政府は、欧州連合の他の国々すべてと同様に1998年ルクセンブルクのヨーロッパ評議会で承認された方法を遵守し、労働政策および雇用戦略が以下の指針に基づくような、雇用に関する全国規模の行動立案およびその後の実行計画を欧州委員会に提出した。

  • 労使当事者の合意に基づき実行される所得政策
  • 行政分権をも考慮した積極的労働政策の展開(雇用のための新たなサービスを含めた、情報、職業教育、指導)
  • 特に中小企業を対象とした、企業の発展に資する全般的条件の設定
  • 学校、教育(学校、代替、継続、生涯、上級の各級の教育)、科学的研究に対する投資の質的・量的改善
  • 南部各州における雇用率の向上、実情に即した企業発展条件の成立
  • 男性と女性の失業率格差の減少に向けた機会均等行動の促進

1998年にイタリアは、雇用保護ヨーロッパ戦略に呼応し、失業を減少させ、労働者の連続的雇用条件を保証することを目的とした新たな措置を打ち出した。この措置は特に、労働市場に入ってくる若者および長期失業者の指導、見習契約、雇用に対する補助業務を対象としている。

南部の発展の動きを再開させるため、複合的で体系的な戦略に資する措置が講じられた。これにはインフラ投資、中小企業に照準を当てた税優遇措置の計画、地域を特定した労使間の契約形態の柔軟性に関する政策指針の実行等がある。

1998年10月に成立した新政府は、国の発展に決定的役割を果たし、労働コストの抑制等に特徴づけられる、インフレを伴わない、堅固で継続性のある成長という目標を追求する構造改革の実行を政策の中心に据えた。

この目標を達成するため、1998年12月、雇用の拡大、人的資本の蓄積と向上、イタリア経済の社会的正義と全体的な最新化に関する新たな共通の目標を提示する発展・雇用協定に、政府、労使当事者、地方自治体は合意した。南部問題は、この協定の優先課題となっており、これはインフラ、職業教育、そして南部起業家への直接支援を通じて南部の人的資源を有効利用する条件を成立させるために向けられたという点で革新的な事業である。

この協定は、雇用の促進、生産の基礎の拡大に向けた所得政策を通じて、労使当事者、国会、地方自治体の協力を保証する方法を強化、任務と機能は、国から州、県、市町村へ大幅に移転される。

政府と労使当事者の関係は、自治と責任を労使当事者に保証し、国会の権限であるものは別として、労使関係に直接影響を及ぼす案件については強力な法的発議権が与えられたことで、一層安定した継続的なものとなった。

この合意は、経済政策決定段階でも強化された。しかし、協定に署名した当事者間の合意に基づく確認である達成成果の報告をも国会に提出する任務も担っている。

その際、政府は約束した措置に、労使当事者は自己の行動形態の一貫性に責任を持つ。この会合において、どれほどの労働コストの低減、税優遇措置、奨励金が、新たな投資として、新たな職場として還元されたかを共同で確認する。

また、全国規模で実施される雇用推進政策とEU指令との方法論的かつ連続的照合を行い、欧州連合に提出する雇用に関する全国規模の行動立案の検討も実施される。

労働についての協定では、人的資本に対する多額の投資が予定されている。これは、バランスの取れた社会制度と高い競争力のために必須な条件である教育、職業訓練、研究、テクノロジーの普及に対処していくことを意味する。このような状況の中で、18歳時点での職業教育義務、見習工への職業教育の拡大、教育実習の普及、労働時間短縮と職業教育活動を相殺させる契約方式の実験、地域活動に職業教育を結びつける発展計画への助成などが考えられている。政府は、上記目標を達成するために必要な業務、時間、資源に関する数カ年計画を提出する。協約では職業教育に対し1999年から2001年にかけてさらに1.6兆リラを充当している。この額は、奨励金の再編により増額の可能性があり、また継続職業教育のための基金への資金移転の加速も予定されている。

この協定は、民間の投資を支え促進するため、分担金・税金の負担軽減に関し重要な対策を予定している。労働コスト軽減は、他のヨーロッパ諸国労働者の平均的社会負担の倍額となるイタリア労働者の負担に直接働きかけるものである。政府は、予定されていた0.82%の労働コスト削減を即座に実行し、現在の負担率を改善するためさらなる対策を実行する。特に家族手当、育児手当を一般税処理に段階的に移行し、軌道に乗った段階では、労働コストのかなりの削減を行う(約3ポイント)。

また、労使双方は、財政的に可能な範囲内で、税負担の段階的軽減を開始することに合意した。これは、企業に対する税負担の最初の軽減をもたらした新しい生産活動州税(IRAP)により、部分的にすでに開始されていた。企業の競争力を高め、仕事を創設する設備投資は、一時的に優遇措置を受けることになる。政府が中・低額納税者の大部分が対象となる税率低減目標を明確に提示したことにより、家計に対しても減額される予定である。

さらにこの協定には、全体の競争力回復のための戦略目標である行政簡素化に向けた部分も含まれている。1999年第1四半期には、行政手続簡素化により6兆リラの資金で20兆リラの投資の開始が可能と計算されている。これは、政府が行政組織の近代化、簡素化という方向で追い求めようとしている対策の軸となるものである。

1999年末のマクロ経済分析では、98年から99年の国内総生産の成長予測は1.1%であり、一方雇用は、0.6%を追加することになるであろう。また、創出された雇用の種類の分析では、新しい雇用者22万8000人のうち、10万9000人が正規の職を見つけ、12万人弱はパートタイムの職に就いた。前年に比べて増加は0.6%(正規の業務)と8.7%(パートタイム)であった。特に新しい傾向は、ほぼ専門職と考えられる167万6000人の半従属的労働者が職を得ることができたことである。1999年に雇用全体の8.1%を占めることになったこのグループは、労働市場内に存在する新しい形態である。臨時労働の成長も高いが(44.3%)、ここ2年飽和状態にあり、全体から言えば低いレベルに留まりつづけている(0.4%)。

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労働法制の概況

主な労働法の内容は以下のとおり。

(1)労働者憲章法(1970年法律300号)

この法律は以下の内容を含んでいる。

  • 差別的手続きの禁止、制裁規定の公布による所定手続きの導入を通した、使用者の監督・制裁権限の制限(運営規範の掲示、雇用者の誤謬の事前通告、仲裁の実行等)
  • 会社内における組合結社自由の保証
  • 大多数を代表する労組の促進(この根本原則は1995年の国民投票によって否定された。現在は団体協約に署名したすべての労組に、特権的労働組合権が認められている)

(2)期限付き労働の規制(1962年法律230号)

この法律では、期限付き労働を利用することが可能なケースの厳格な目録を定めている。引き続く1987年の法律では、大多数を代表する労組に対し、期限付き労働を導入できる新たなケースを可能としている。

この法律は、期限付き契約の延期、引き続く期限付き採用、法律に対する不正行為のケース等に関し、Treu一括法案により最近改正された。

(3)パートタイム労働および職業訓練・労働契約に関する規制(1984年法律863号)

この法律では、パートタイム労働および職業訓練・労働契約を行うことができるケースを規制している。全般的に両立しうる限り、正規の労働と同様の規制を適用している。職業訓練・労働契約により採用された労働者は、期限付き契約で採用された者と同様、違法解雇に対する保護を受けることはできない。

(4)労使関係における仲介および中間介入の禁止(1960年法律1369号)

この法律は原則として、営利目的での労働力の供給を禁じている。唯一の例外は、臨時労働を適法とする1997年法律196号に定められている。

(5)男女均等処遇と関連措置(1977年法律903号および1991年法律125号)

1997年の法律は、男女の経済的・制度的な待遇の平等原則(給料、採用、昇進、出世)を導入している。1991年の法律は、男女の機会均等のための計画実施を通じて、この原則を実効性のあるものとしている。

(6)不当解雇に対する保護(1966年法律604号および1990年法律108号)

期限なしの雇用関係に適用されるこの法律は、正当な理由、主体に関わる(労働者の過失)若しくは客体に関わる(会社の経済的理由)正当な動機なしに行われる不当解雇を違法として保護を導入するものである。1990年の法律は、上記法律の適用範囲を小企業にまで拡大した。

労働者基本法第18条廃止の国民投票が提出され、その結果、個別解雇規制の改正に関する一連の法案が提出された。

(7)不可欠な公益業務でのストの規制(1990年決議146号)

イタリアにおいて憲法で保障された権利であるストは、不可欠な公益業務でのストでない限り規制されることはない。このようなケースでは、立法者が闘争の冷却化と憲法の下平等な労働者の利益と公益業務受益者の利益(健康、自由な移動、教育等に関する権利)の調整手続きを定めている。

1999年に1990年法律146号の改正のため法案が提出された。

(8)雇用促進に関する規定(1997年法律196号)

この法律は、雇用保護のための一連の措置を定めている。

  • 臨時労働の適法化。一時的な労働供給が、法律あるいは団体協約があらかじめ定めたケースに該当し、かつ労働省認可代理機関の仲介である場合に限る。
  • 週40時間への所定労働時間の短縮。しかし、時間外労働により納税率が上昇する場合、週、月、年における労働時間の短縮・変更の可能性を付加する。
  • 見習、職業実習、指導、継続的職業教育制度の促進。
  • "闇"労働および地下経済に対する戦いにおける有効手段の導入。
  • 公共の利益となる労働、国内の停滞した地域に住む若者のための支援労働制度の規定。

(9)職場紹介に対する公共の独占の廃止(1997年立法令469号)

いわゆるバッサニーニ法の施行に向けたこの暫定措置令により、1949年法律264号により定められた職場紹介に対する公共の独占が廃止された。職業紹介機能は、国から州へと移転され、労働省の所定の認可を得た民間業者に対して職業紹介の自由が定められた。しかし、民間の職業紹介業者は、一時的労働力を供給したり、または依頼されることはできない。

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労働災害の概況

職場での健康および安全に関する規制は、ヨーロッパ共同体指令第9号の施行となる1994年立法令626号に定められている。

公式統計によれば、1998年の職場での死亡者は1218人、負傷者は約90万人である。しかし、これは、政府中央統計局によれば労働力人口の23%とされる闇労働・不正労働を考慮しておらず、実際よりかなり低い数字である。

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人的資源開発および訓練

職業教育については、1997年法律196号第17条により改正が行われた。この箇条の施行を目的とした規定が施行されなかったので、この改正はまだ発効してはいない。

一方、同法に定められた代替職業訓練(見習および職業実習)の改正は、部分的に発効している。この場合も、部分的に重複する法規制を再編する必要がある(見習期間と職業教育・労働、および職業実習)。


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