基礎情報:インドネシア(2005年)

基礎データ

  • 国名:インドネシア共和国 (Republic of Indonesia)
  • 人口:2億2,278万人 (2005年)
  • 実質GDP成長率:5.1% (2004年)
  • GDP:2,576億ドル (2004年)
  • 一人あたりGDP:1,165ドル (2004年)
  • 労働力人口:1億690万人 (2005年)
  • 就業者数:9,530万人 (2005年)
  • 失業率:10.9% (2005年)

資料出所:(人口):UN "World Population Prospects" (2004)、
(GDP):インドネシア中央統計局(BPS)、
(その他):IMF "World Economic Outlook Database"、インドネシア中央統計局(BPS)

I.労働関係の主な動き

1.雇用失業情勢

2005年は、政局が比較的安定化したが、投資は依然スローペースで、失業問題は引き続き危機的状況にあった。燃料価格の引き上げが年間2度にわたり行われたことが労使関係の緊張をもたらし、経営側は生産コストの上昇に労働者の解雇を含め厳しい対処を迫られる一方、労働側も一層の雇用不安と購買力の低下に見舞われた。

失業率、失業者数ともに近年上昇を続ける中、国内の多くの専門家は年初、政府が打開策を実施しなければ失業者の急増に直面するとみていたが、中央統計局(BPS)発表の2005年の失業者数及び失業率はそれぞれ1090万、10.3%とこの5年間で最悪の数字を記録した(表1)。なお、不完全就業の状態にある者を含めた数字は約4000万人(失業率38%に相当)に達すると見られており、失業問題は極めて深刻な事態にある。また、労働移住省が把握した解雇者数は10万9000人に達し、前年(10万1000人)から7.9%増となっている。

こうした状況に対し、政府は2006年に向けた「政府行動計画(RKP)」を策定し、失業者数を960万人に削減する目標を立て、雇用回復のための10項目からなる政策枠組みを盛り込んだ。その項目は、労働市場の弾力性の向上、規制緩和を通じた投資促進、経済の高コスト化の改善、企業に対する許認可の簡素化、関税調整などを通じた競争力強化と輸出拡大、中小企業の事業環境改善、起業家精神の向上などとなっている。これらの施策を通じて労働集約的産業の振興を図り雇用を拡大していくこととしている。

なお、政府の政策努力にもかかわらず、専門家の中には今後も失業の増加は止まらないとみる者も少なくなく、2006年の失業者数は1250万~1260万人に上るとの予測もある。

表1 失業の状況
  失業者数 失業率
2001年 800万人 8.1%
2002年 910万人 9.1%
2003年 980万人 9.6%
2004年 1,030万人 9.9%
2005年 1,090万人 10.3%

出所:中央統計局(BPS)

2.労働法改正に関する動き

2005年は、現労働法に対する労使のそれぞれ相反する評価が固まった年であった。経営者や投資家は、雇用及び解雇に関する労働法の規則が厳しいため、投資環境を不利にしていると不満を表明する一方、労働側は、多くの企業が労働法に違反する雇用慣行を続けていると指摘する。労働側が批判する端的な例は労働法第59条の「期間限定雇用」規則についてである。同規則では期間は原則2年までとされるが、実際にはこの規則を無視し、企業の多くが契約更新を行うことにより期間を延ばし「正規雇用」としないようにしているというものである。一方、経営側は経営環境の著しい変化の中で競争力を維持していくためには、この「システム」が必要不可欠であると主張する。

労働法に対する政府の考え方も、経営側の主張に沿ったものとみられ、インドラワティ前国家開発委員会(BAPPENAS)議長(現財務相)は、「現行労働法は賃金や各種手当の面で労働者にメリットを与えている一方、企業側はその分労働コストの上昇に直面している」と述べている。また、エルマン・スパルノ労働移住相も12月に大臣就任早々「労働環境の改善が投資環境の悪化を招くことがあってはならない」と述べるなど、経営側への配慮を表明している。

その後提案された政府の労働法改正案の主な項目は次のとおりである。

  1. 期間限定雇用:適用職種を全職種に拡大、上限期間を最大5年に延長
  2. 地域最低賃金の決定権限:州知事から地方首長へ移管
  3. ストライキ:解釈を明確化と違法ストについて新たに規定
  4. 退職手当:勤続期間による支給割合の見直しなど
  5. 外国人労働者の認可:特定職種への限定など

3.賃金動向とその反応

アジアの経済危機後約7年が経過したが、インドネシア経済は依然動揺が続いており、労働市場も回復に至っていない。その一端は実質賃金の低下傾向からも覗うことができる。

農業部門における2005年の実質賃金は、日額2431ルピア、前年比6.1%の低下であった。工業部門は月額28万1507ルピア、前年比1.9%の低下であった。業種別では、タバコ製造が月額15万6073ルピア、衣類製造が月額28万1411ルピア、レンガ・タイル製造が月額12万9950ルピアとなり、それぞれ前年比で5.8%、0.2%、29.1%の低下となった(表2)。

表2 実質賃金の動向
産業(業種) 実質賃金額 増減率
2004年 2005年
農業(日額) 2,589ルピア 2,431ルピア -6.1%
工業(月額) 工業計 286,832ルピア 281,507ルピア -1.9%
タバコ 165,590ルピア 156,073ルピア -5.8%
衣服 282,022ルピア 281,411ルピア -0.2%
レンガ・タイル 183,236ルピア 129,950ルピア -29.1%

出所:中央統計局(BPS)

職種別では、12月の建設労働が日額9238ルピア、理髪師が日額2090ルピア、家内労働が月額4万3825ルピアとなり、年初比でそれぞれ、2.8%、0.5%、9.0%の低下となった。

実質賃金低下の相当な部分は燃料価格の上昇を受けたものである。燃料価格の引き上げは国際石油価格の高騰によるためであるが、インドネシアでは3月と10月の2度にわたって引き上げが行われたため、物価の急上昇を招く結果となった。労働者の中には賃金のほとんどを交通費に充てざるを得ない者も現れ、こうした急激な購買力の低下に見舞われた労働者が数千人規模で国内の主要な都市の大通りに集まり抗議行動を起こした。

最低賃金については、毎年見直しが行われており、2006年1月から適用される最低賃金の更新が10月から12月にかけて各地の政労使の三者協議機関で行われたが、その結果、ジャカルタ特別州では15.1%、西ジャワ州では19.0%、北スマトラ州では23.0%、東ジャワ州では15.1%、リアウ州では26.0%と、それぞれ引き上げが提案された。しかし、労働側の要求と引き上げ額との差が大きかった地域(メダン(北スマトラ)及スラバヤ(東ジャワ))では、提案に反対する旨の大規模な抗議行動が起こり、一部では暴動となった。

表3 最低賃金の改定の状況(月額、ルピア)
地域 2005年 現行 2006年改訂案 労働側要求
ジャカルタ特別州 711,843 819,100 1203,015
西ジャワ州 601,000 715,000 819,487
東ジャワ州 578,000 665,000 1,330,000
北スマトラ州 600,000 737,794 (単身者)1,300,000
(既婚者)1,500,000
リアウ州 635,000 800,000 864,000

出所:各種現地紙等

一連の労働者の抗議行動について、全インドネシア労連(KSPSI) のヤコブ議長は「これらの抗議は、ほとんどの地域において低賃金、劣悪な労働条件、不当な扱いを受けている労働者の不満表明である」と述べた。最低賃金の大幅な引き上げが難しい理由は、最低賃金に関する政労使の交渉が経営側び政府側優位に行われているからであるとの指摘がある。

こうした中で、政府は最低賃金の計算方式の改訂を進めていることを明らかにした。最低賃金をより公正で労使が受け入れやすいものにすることが目的で、最低賃金の計算にあたり、各地域におけるインフレ率を勘案する等の改訂が行われる予定となっている。また併せて、賃金決定方式として新たに、企業における労使間の団体交渉及び専門職についての個別交渉方式の導入を進めることとした。労使の団体交渉は企業レベルでの賃金決定に必要となる。専門職の個別交渉システムは専門的な職業に就く者が自分の能力と職業経験に応じた賃金を経営側との直接交渉して要求する機会を与えるものである。

4.「津波」被害の雇用への影響

2004年12月に起こったスマトラ沖大地震及び津波は、スマトラのアチェ州、ニアス島、シメル島を中心に大きな被害をもたらした。死者は13万人、行方不明者は3万7000人に上る。特に被害の大きかったアチェ州及びニアス島では約51万世帯が家屋を失い、約60万人が生計の途を失うなど、すでに貧しい地域であったこれら被災地の経済社会に甚大な損害を与えるものとなった。同地域の失業率は被災前の6.8%から30%超に急上昇し、失業者の多くはサービス業、漁業、農業、零細事業において発生した。被災による経済損失は約12億米ドルと見積もられている。なお、アチェ州及びニアス島の経済活動は被災により、それぞれ5%、20%低下したと見られる。

政府をはじめ国連機関やNGOなどの参加による被災地の復興・再生支援が開始されたが、復興による建設ブームが同地域の雇用改善に寄与した。2005年11月までにアチェ州のバンダ・アチェ県、チャラン県などの職業安定所に4万3000人(うち女性1万4000人)を超える求職登録があったが、うち約7000人が臨時又は契約雇用のあっせんを受け就職した。その後も大規模な再建工事の開始により雇用改善が期待されている。また、就職に際し必要とされる技術や技能を身に付けるための職業訓練施設(自動車、溶接、建設技能等から英会話、コンピュータ、裁縫等と訓練コースを幅広く提供)が同地域の約7000人の利用に供せられた。また、12万人以上の労働者がCash-For-Workスキームの給付を受けている。

津波後の復興に伴う建設ブームは同地域の雇用創出に大きな役割を演じたが、ブームはいずれ終息を迎えるため、今後の同地域の雇用創出を持続的なものとしていくための支援策の実施が引き続き求められている。

参考資料:

  1. 当機構委託調査員現地レポート
  2. 同海外労働情報

参考:

  1. 1米ドル=114.87円(※みずほ銀行ホームページ2006年6月22日現在のレート参考)

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※2002年以前は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:インドネシア」

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