基礎情報:タイ(2004年)

基礎データ

  • 国名:タイ王国(Kingdom of Thailand)
  • 人口:6,486万5,523人(内務省、2004年6月推計値)
  • 経済成長率:6.8%(2003年、タイ中央銀行)
  • GDP:1,431億米ドル(2003年)
  • 一人あたりGDP:2,236米ドル(2003年推計値)
  • 労働力人口:3571万1000人(2004年第3四半期)
  • 失業率:2.3%(2003年推定値)
  • 就業者数:3,426万3,000人(2002年)

資料出所:タイ内務省統計局、タイBOI、タイ中央銀行、在タイ日本大使館資料

2004年の動向

1. 最低賃金の改定

2005年1月1日から全県の最低賃金が4~5バーツ引き上げられた。最低賃金の決定に関しては、政労使の3者構成からなる賃金委員会だけではなく、研究者や実務関係者を含めた各方面の意見を集めて、検討を重ねてきた。

労働団体は数年前から全国一律の最低賃金200バーツという主張を行ってきたが、2004年の賃金交渉ではより現実的な額としてバンコクと周辺県は175バーツ以上を提示していた。労組側では現在のバンコクの物価水準を勘案すると190~200バーツの間の額が適切だと主張している。

バンコクとバンコク周辺県、及びプーケット、ナコンラチャシマでは5バーツの引き上げ、その他64県でも4バーツの引き上げとなった。全県での一斉引き上げは、現行の賃金決定方式が開始されて以来初となった。

表1:タイの最低賃金額(日給)2005年1月1日改訂版

表1

資料出所:BangkokPost、2004年12月10日号より。

表2:タイの労働指標(1995-2004年)

表2

資料出所:タイ国家統計局HP(http://www.nso.go.th)

2. タクシン首相率いる愛国党、下院選で圧勝、労働政策への影響

2001年のタクシン首相就任以来、100万バーツ農村基金、30バーツ医療制度、農民債務返済延長、一村一品運動(OTOP:1タンボン≪行政区≫1産品運動)などの大衆迎合(ポピュリスト)政策を打ち出してきた愛国党(タイラックタイ)は、2005年2月6日行われた総選挙において、下院の75%の議席を占める大勝利を収めた。単一政権が総選挙で過半数以上を占め、連続して第1党となることは、タイの憲政史上初である。

競争原理を利用した政策(例:CEOスローガン)や麻薬撲滅運動に伴う非人権的な政策など、批判される点も多いものの、選挙公約を全て実行した実行力と、構想力などが国民から評価された結果と見られている。

首相の再任後も、上記のような政策を継続するとともに、就任以来力を注いできた麻薬撲滅運動の更なる推進、南部のテロ問題への解決などの大きな課題が残っている。

労働政策の観点からは、農村に焦点を当てた政策による農村部の所得向上、雇用問題の解決に当たることが予想されている。また、30バーツ医療制度(注1)による、低所得者層の社会保障の拡充、及び1村1品運動による中小規模のビジネス(SME)に対する支援を通じた雇用の拡大、更にEGATを中心とした国営企業の民営化問題と30万人以上に上る公務員の人員削減政策などが課題となっている。

また、麻薬撲滅運動の一環として就任以来外国人労働者の取り締まりを強化しており、周辺国からの単純労働者の流入だけではなく、日本を含めた先進国からの特殊技能を持たない長期滞在の観光者・労働者へのビザ発行を厳しく取り締まっている。

3. タイ南部の雇用不安:スマトラ沖大地震およびテロ問題

(1) スマトラ沖大地震による観光業への悪影響

2004年12月26日未明にスマトラ沖で起きた大地震および津波は、アジア全域で15万人以上の死者を出す大惨事となった。タイでは、国内最大の観光地である南部のプーケット県、クラビー県、パンガー県の3県で甚大な被害を受けている。

特に観光業、サービス業、漁業などへの悪影響は深刻で、2005年2月の時点での同県でのホテルの客室稼働率は10%程度まで低下している。最大の被害地となったカオラックでは、街の復興に少なくとも1年は必要と見られており、住民の雇用不安が深刻な問題となっている。

現在の客室稼働率と、観光客の減少が続く場合には、同県の約50万人とも言われるホテル・関連業界の従業員が失業する恐れがある。

タイ観光公団(TAT)の予想によると、プーケットなど観光3県の年間減収は400億バーツ程度に上ると見られている(パンガー県カオラック150億バーツ、プーケット県208億バーツ、クラビー県ピーピー島37億バーツ)。

(2) イスラム教過激派による政治不安が及ぼす雇用への影響

タイ南部国境3県(ナラティワート、ヤラー、パッタニー県)では、2004年1月4日の陸軍武器庫襲撃事件をきっかけに、連日テロ活動が続いており、2004年内だけで300人以上が犠牲となっている。さらに、10月25日に発生した、ナラティワート県タクバイ郡における85人の死亡事件など、南部の治安はさらに混迷をたどっている。

こういった情勢を受け、現在南部では、テロの標的となってきた警察官や教員をはじめ、医者や看護婦などの公議員な職員が異動希望を出すなどの結果、公議員の絶対的不足に直面している。これらの地方に勤務している公務員には一時的に「危険地手当て」支給などの対処は行っているが、公務員離れを食い止めるまでには至っていない。

民間部門でも、2004年8月期の南部全体の空席数(求人数-就職者数)は2592席で、前年同期比で3倍に増加している。しかしながら、今回の津波被害による観光業の大打撃によって、雇用不安がいっそう深まるのではないかと懸念する声が強い。

4. 外国人労働者受入れ問題

2004年7月、外国人労働者の雇用登録終了までに、約114万人の外国人が雇用登録を行った。その80%がミャンマー人で占められている(ついでラオス人、カンボジア人)。

今回の雇用登録が、従来と異なる点として、まず業種や県別での雇用者数に制限がなく、タイの銀行での口座開設可能などの、労働者の権利を守るような動きが見られることだ。

地方別ではバンコクでの就業者が19万人と最大で、ついでターク県、サムットサコン県、チェンマイ県、ラノン県、チョンブリ県と続いている。

今回の登録で、労働者らは13桁のIDナンバーを持ち、氏名、性別、職種、指紋、出身地などの情報が雇用局のデータベースによって管理される。また、外国人労働者でも、銀行口座の開設や児童保護施設の利用などの、労働者の権利の拡大を検討中であるという。

5. 国営企業民営化問題

電力・電話などの分野でタクシン政府が強く推し進めている民営化政策に労組、特にタイ発電公社(EGAT)が強く反対しており、民営化の進展が一時停止状態にある。国営企業の給与が、一般よりも高く、基本的に終身雇用であることが反対の主な理由であり、民営化後の給与や雇用問題も懸念材料となっている。

国営企業の労組は、EGATの株式上場による外国資本のテイク・オーバーに繋がると主張しているため、政府は4月の閣議で外国人出資比率を制限する国営企業民営化上場に関する新規定を定めたが、労組の反対運動は収まっていない。

政府は2004年中に、国営企業6社の民営化上場を計画していたが、上場を達成したのはエアポート・タイランド(AOT)の1社のみで、残りの5社は民営化のめどが立っていない。タイ発電公団(EGAT)の民営化反対運動は、首都電力公団(MEA)や地方電力公団(PEA),首都水道公団(MWA)、地方水道公団(PWA)などに飛び火している。


参考資料:

  1. 労働政策研究・研修機構「海外労働情報」2004年1月号~12月号
  2. 厚生労働省「海外労働情勢報告2003年~2004年」
  3. 外務省ウェブサイト「資料:タイ第九次国家経済社会開発計画概要」
  4. Economic Corporation Strategy Report(Thai Government, 2004)
  5. Thai National Statistical Office "Labor Forcr Survey 2004"

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※2002年以前は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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