第1分科会 地域雇用における公共職業安定所のマッチング機能の強化
JILPT研究フォーラム2007 「労働市場の構造変化と多様な働き方への対応」
第26回労働政策フォーラム(2007年9月7日)
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第1分科会 地域雇用における公共職業安定所のマッチング機能の強化
伊藤 実 / 周 燕飛 / 大谷 剛
職業紹介事業の規制緩和などに伴い、公的職業紹介の効率性に関心が高まっている。第1分科会では、地方圏の労働市場での求人・求職のマッチング効率の向上などに関連した2つの研究報告が行われた。
まず、JILPTの周燕飛・研究員が「公的職業紹介のマッチング効率―就職率と充足率による検討―」をテーマに公的職業紹介事業のマッチング効率の地域間格差と、そのトレンドについての分析内容を報告。マッチング効率は「都市部が高く、地方部が低い」といった地域間格差が存在しているものの、その格差は縮小傾向にあることから、「公的職業紹介事業は、中長期的には就職機会における地域間不均衡の解消に貢献している」と指摘した。また、マッチング効率の改善には、求人企業との連携強化や職業能力開発施設の増設、求人開拓推進システムの導入などの施策が有効であることなども提起している。
続いて、大谷剛・JILPT研究員が2004年の常用労働者および常用的パートタイマーについての職業安定所別・職業中分類別データを、雇用圏(通勤圏)別・職業中分類別に再編したデータを利用した研究の成果を発表した。
全国10地域ブロックごとに、失業の要因を【1】摩擦的失業【2】構造的失業(職業間ミスマッチ)【3】構造的失業(地域間ミスマッチ)【4】労働需要不足失業――の4つに分解。各地域の失業特性を浮き彫りにしたうえで、それぞれに応じた失業の解消策の必要性を訴えた。一例をあげれば、労働条件や賃金などの違いによって発生し得る摩擦的失業は、コンサルティングなどで求職・求人双方の乖離を狭めることが重要だし、労働需要不足の改善には職安における求人開拓や、国・地方自治体による雇用創出などが積極的に行われるべきだという。
一方、質疑では、仕事を探す際にかかるコストやマッチング効率の官民比較に関する質問、ハローワークの統計データの公開を求める意見などが出された。こうした声に、コーディネーターを務めた伊藤実・JILPT統括研究員は、「就職困難者は公的職業紹介に集中する一方、民間に登録している人は、もともと職業技能があったり意欲が高いなど(再就職の)難易度が低い人が多く、コストが低いイメージがある」などと単純な比較が難しいことを説明。最後は「(官民が)持ちつ持たれつのようなところが一番よいのでは」と述べて、分科会を締めくくった。
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page8 | 第3分科会 「職業情報提供の最前線と政策的展開」 | |
page9 | 第4分科会 「育児と仕事の両立」 | |
page10 | 第5分科会 「非正社員からのキャリアと能力形成」 | |
page11 | 第6分科会 「変容する雇用システムの実態」 | |
page12 | 第7分科会 「中高年齢者のためのキャリア・ガイダンス─ツールの開発と活用を通して」 | |
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