第4分科会:育児と仕事の両立
JILPT研究フォーラム2007 「労働市場の構造変化と多様な働き方への対応」
第26回労働政策フォーラム(2007年9月7日)

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第4分科会 育児と仕事の両立

戸谷久子 / 今田幸子 / 池田心豪

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近年、長時間労働が問題視されるなかで、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)への企業や自治体の取り組みが進んでいる。この分科会では、育児と仕事の両立について、企業・地域・家庭の支援の相互関係を中心に2つの研究報告が行われた。

分科会光景3(写真)

まず、池田心豪・JILPT研究員が「企業・家族・地域社会の連携による両立支援に向けて」をテーマに、出産・育児期の雇用継続に関する調査結果を報告。育児休業制度や保育サービスが拡大した時期に出産した世代(均等法後世代)でも雇用継続が増えていない現状を明らかにした。その原因としては、非正規雇用の拡大や、女性の職域拡大が雇用継続をより難しくしたとしている。

また、分析結果から、育児休業制度は、親族援助や保育サービスと組み合わせることで、雇用継続をより高める効果があることも指摘。雇用継続を促進するためには、企業・家族・地域の連携による体系的支援が重要であることを強調した。

続いて、戸谷久子・千葉県商工労働部次長が育児にかかわる地域支援の事例報告として、千葉県でのワーク・ライフ・バランス支援の取り組み状況を報告。その課題として、【1】夫婦の家事・育児分担ができるような男性の働き方や就労環境の改善【2】女性の就労継続や再就職の促進による子育ての経済的負担軽減の必要性【3】育児休業や両立支援について就業規則による制度化の促進と、制度を利用できる企業風土づくり――の3つをあげた。

また、千葉県では堂本暁子知事のワーク・ライフ・バランスに対する問題意識のもとで、地域行政、経済界、労働界との連携が強化されている現状も紹介。その取り組みとして、ワーク・ライフ・バランスを進める情報誌の刊行やセミナーの開催、「子育てお母さん再就職支援センター」によるワンストップでの就職相談体制の整備をあげた(同センターにはマザーズハローワークちばの分室が併設されている)。

千葉県では、中小企業の比率は99.8%であり、50人未満企業も8割を占める。中小企業では女性社員比率が高い場合も多く、次世代育成支援対策推進法が施行される前から、自主的に女性の働きやすさを追求する企業もみられた。そこで、千葉県は、仕事と子育ての両立支援に取り組む企業を「“社員いきいき! 元気な会社”宣言企業」として募集。その取り組み事例を地場企業や大学の就職支援窓口などに紹介することで、奨励・啓発活動も実施中だという。現在、宣言企業は185社。同県では、2009年末までに700社の宣言企業を目標として掲げている。

報告を受け、コーディネーターを務めた今田幸子・JILPT特任研究員は、「ワーク・ライフ・バランスは、誰もが納得するものであり、どんどん課題が拡大していくことで、現実から遊離していく可能性」があることを示唆。県や市町村、企業のレベルで、両立を実現するための具体的なプログラムをたてることで現実を変革し、効果あるワーク・ライフ・バランスの方向性を打ち出していかなければならないなどと述べて、分科会を締めくくった。



第2部 分科会 INDEX
  page6 第1分科会 「地域雇用における公共職業安定所のマッチング機能の強化」
  page7 第2分科会 「中小企業における労使コミュニケーションと労働条件決定システム」
  page8 第3分科会 「職業情報提供の最前線と政策的展開」
(現在表示ページ) page9 第4分科会 「育児と仕事の両立」
  page10 第5分科会 「非正社員からのキャリアと能力形成」
  page11 第6分科会 「変容する雇用システムの実態」
  page12 第7分科会 「中高年齢者のためのキャリア・ガイダンス─ツールの開発と活用を通して」
  page13 第8分科会 「勤労者生活の質の向上のために─均衡処遇とワークライフバランス」

第1部 シンポジウムへ (page 1 - 5)