第5分科会:非正社員からのキャリアと能力形成
JILPT研究フォーラム2007 「労働市場の構造変化と多様な働き方への対応」
第26回労働政策フォーラム(2007年9月7日)

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第5分科会 非正社員からのキャリアと能力形成

戸嶋容子 / 小杉礼子 / 稲川文夫 / 堀有喜衣

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正社員に比べ、非正社員は能力開発の機会に恵まれていない。この分科会では、非正社員の能力開発の現状や、非正社員からキャリアを築いていくためには何が課題となっているなどについて検討した。また、ハローワークを通じた一定期間の試行雇用によって、職業経験などの面から就職が困難となっている人の本採用を手助けする「トライアル雇用」の現場が紹介された。

まず、JILPTの稲川文夫アドバイザリーリサーチャーが非正社員の能力開発の現状を報告した。厚生労働省の能力開発基本調査によると、過去1年間に「研修や自己啓発」を実施した非正規社員は4人に1人にとどまる。自己啓発に関して不足している情報として、非正規社員では「コースの選択肢」をあげる人が最も多い。自己啓発にあたっての問題点では、非正規社員では特に「やるべきことがわからない」との回答割合が、正社員よりも2倍近く高いという。

稲川リサーチャーは、能力開発に対する助言をしてくれる窓口はハローワークや雇用能力開発機構のポリテクセンターなどがあり、時間的に余裕のない人でも、やりたい自己啓発の中身がわかっていれば十分支援は可能だと指摘した。

JILPTの堀有喜衣研究員が非正規社員の正社員への移行の現状について解説。近年では、若者自身が正社員への移行に行動を移さない傾向がみられるという。若者の非正規での滞留要因をまず、「プル要因」と「プッシュ要因」とに分けて説明。プル要因は企業の採用抑制行動などがあげられる。一方、プッシュ要因は、【1】フリーターの一般化(フリーターでも恥ずかしくないなど)【2】20歳代後半層のうちに正社員になろうとする年齢規範の崩れ【3】ソーシャルネットワークの縮小化(生きる世界が狭い)――の3点。

分科会光景4(写真)

堀研究員は、非正規社員に滞留するデメリットとして、キャリア形成の面だけでなく、「結婚して子供を持つなど安定的に生きることを難しくさせる」(=生きる世界を規定してしまう)、と警鐘を鳴らした。

トライアル雇用の仕組みや成功事例などを報告したのは、ハローワーク府中の戸嶋容子上席職業指導官。トライアル雇用で求人案内すると、ほとんどの企業が活用し、利用の70%は30人未満の企業だと紹介した。筆記試験や面接だけでは掴めない求職者の個性を把握することができるのが同制度のメリットだと指摘。今後は、「本採用後のフォローができていないので、定着指導できたらよい」と希望を語った。

JILPTの小杉礼子統括研究員がこの分科会のコーディネーターを勤めた。



第2部 分科会 INDEX
  page6 第1分科会 「地域雇用における公共職業安定所のマッチング機能の強化」
  page7 第2分科会 「中小企業における労使コミュニケーションと労働条件決定システム」
  page8 第3分科会 「職業情報提供の最前線と政策的展開」
  page9 第4分科会 「育児と仕事の両立」
(現在表示ページ) page10 第5分科会 「非正社員からのキャリアと能力形成」
  page11 第6分科会 「変容する雇用システムの実態」
  page12 第7分科会 「中高年齢者のためのキャリア・ガイダンス─ツールの開発と活用を通して」
  page13 第8分科会 「勤労者生活の質の向上のために─均衡処遇とワークライフバランス」

第1部 シンポジウムへ (page 1 - 5)