第3分科会:職業情報提供の最前線と政策的展開
JILPT研究フォーラム2007 「労働市場の構造変化と多様な働き方への対応」
第26回労働政策フォーラム(2007年9月7日)
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第3分科会 職業情報提供の最前線と政策的展開
石井 徹 / 松本真作 / 下村英雄
JILPTでは、昨年9月より総合的職業情報データベース「キャリアマトリックス」をインターネットで一般公開している。分科会では、キャリアマトリックスの紹介と活用方法、提供のあり方などについて論議した。報告者は松本真作・JILPT主任研究員と下村英雄副主任研究員。コーディネーターは石井徹・副統括研究員が務めた。
キャリアマトリックスは、約500職種の仕事内容や就業経路、能力特性、入職要件などの必要情報に加え、アクセスした人の特性に基づく適職診断や今までの仕事の経験で身につけた知識・スキルを確認できるサービスなども提供する「職業とキャリアのインターネット百科事典」。24時間無料で利用でき、その利便性や豊富な情報量などから、既に多くの人に活用されている。石井研究員は冒頭、「開始時は月に300万件のアクセスが来ていた。その後、1年を経た今も、月に150万件を超えるアクセスがある」と、実績を紹介した。
松本研究員は、まず職業ハンドブックからキャリアマトリックスの開発に至るまでの職業情報の変遷と経緯を説明。そのうえで、キャリアマトリックスの基本的な役割について「労働市場の受給調整機能を強化してスムーズに進むようにすることと、キャリア形成支援があり、このような支援が行われることで経済社会全体が活性化して、個人も豊かな職業生活が送れるのでは」などと話した。さらに、基本的な機能として、【1】職業情報・キャリア情報の提供【2】自己診断やキャリア分析の開発ツールの提供【3】求人サイトなど関係システムの連携・連動【4】職業情報の収集【5】共通言語の提供――をあげている。なお、共通言語とは、職業名や職業分類の番号、関連用語、(スキル、知識、仕事環境などの)基準といった、なかなか統一されてこなかった要素の共有化に取り組むものだという。
そして、用語基準の共有化と最新情報をネットから収集して提供することが可能になったことで、「社会の情報や政策の基盤を提供できていることで、キャリアマトリックス・レボリューション(新しい世界)と言えるのではないか」とまとめた。
続く下村研究員は、キャリアガイダンス政策と職業情報の今後のあり方について、研究成果を交えて報告した。例えば、中小企業の従業員を対象とした調査でキャリアに対する問題意識や悩みは性別や年齢に関係なく従業員が等しく抱えている。また、別の20~34歳の働く人を対象とした調査では、自分のキャリアは自分の力で切り開きたいとのニーズが浮き彫りになるなど職業情報の重要性がわかる結果も出ている。
こうした現状を踏まえ、下村研究員は職業情報の今後の展開について、【1】労働市場情報とのリンク【2】情報格差に対応したキャリアガイダンスや(若年者、女性、中高年層などに)必要な情報の整備【3】職業情報を活用するスキルの育成――の必要性を指摘した。
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