第6分科会:変容する雇用システムの実態
JILPT研究フォーラム2007 「労働市場の構造変化と多様な働き方への対応」
第26回労働政策フォーラム(2007年9月7日)
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第6分科会 変容する雇用システムの実態
立道信吾 / 中村良二 / 藤本 真
経営戦略や企業統治構造の変化を背景に、日本企業の多くが人事・賃金制度に成果主義を取り入れた。分科会では、こうした実態について調べたプロジェクト研究「企業の経営戦略と人事処遇制度等の総合的分析」に関連した3つの報告がなされた。
はじめに、立道信吾・JILPT副主任研究員が研究成果の概要を解説した。同プロジェクトでは2004年に実施したアンケート調査(約1280社の人事担当者の回答を分析)をもとに、現在の日本企業の雇用システムを【1】Japan型(長期雇用+非成果主義)【2】New Japan型(長期雇用+成果主義)【3】America型(非長期雇用+成果主義)【4】その他型(非長期雇用+非成果主義)の4タイプに分類した。それぞれ調査対象の30%、39%、18%、12%を占めており、各類型によってメリット、デメリットが分かれているという。
立道研究員は、「企業業績だけをみれば、New J型やA型は非常によくJ型は少し劣る。ただし、労働者の満足度をみるとJ型はプラスでNew J型は関係なく、A型は下がっている」などと説明。今後については「どの形に収れんしていくか、収れんしないで多様化したまま残るかの2つの考え方がある」とした。そして「個人的な意見」と前置きしつつ、「現在進んでいる労働市場改革は、労働市場の流動性を高めようという方向だが、こうした雇用システムに収れんさせてよいのかどうか非常に検討の余地がある」と述べ、日本の雇用システムや労働政策の見直しを訴えた。
続いて、中村良二・JILPT副主任研究員と藤本真・研究員が、ヒアリング調査の事例を発表した。中村研究員は、業績が悪化した時期に成果主義を導入した自動車販売会社について、同社の人事制度改革の歴史と現制度の内容、労使それぞれが感じている制度の課題や問題点などを紹介。今後、【1】より公正な評価に向けて、管理者評価のバラつきをなくせるか【2】評価を「する」「受ける」ことへの慣れや曖昧化をいかに排除するか【3】企業の存続危機で賃金があがらないことに慣れてしまった従業員にとって、働くことの新しい魅力は何なのか――を今後の課題にあげた。
一方、藤本研究員は「経営の主体やあり方ががらっと変わる時が、コーポレート・ガバナンスの変化が人事労務管理に影響を与える局面だ」として、営業譲渡などの企業再編時に人事制度を改革した製造業2社の事例を取り上げた。その局面の特徴については「人事労務管理の変化は、コーポレート・ガバナンスの変化の有無にかかわらず実施されるが、コーポレート・ガバナンスが人事労務管理に影響を及ぼす場合はドラスティックな改革が含まれている」ことなどを指摘している。
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