第2分科会:中小企業における労使コミュニケーションと労働条件決定システム
JILPT研究フォーラム2007 「労働市場の構造変化と多様な働き方への対応」
第26回労働政策フォーラム(2007年9月7日)
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第2分科会
中小企業における労使コミュニケーションと労働条件決定システム
龍井葉二 / 呉 学殊 / 内藤 忍
JILPTが2006年7~9月に、1000人未満の企業を対象に実施した調査の結果をもとに、JILPTの呉学殊・副主任研究員が中小企業の労使コミュニケーションの状況を、同じく内藤忍・研究員が労働条件決定における労働者の参加の実態を報告した。両報告に対して、連合の龍井葉二総合人権・男女平等局長(兼総合労働局長)がコメントを述べた。
呉研究員は調査結果から、社長の労使コミュニケーションの基本方針を4段階に分類。(労使コミュニケーションを)「肯定型」、「やや肯定型」、「やや否定型」、「否定型」に分類し、タイプ別にみた従業員の経営への協力度や企業業績などの違いを解説した。
それによると、従業員の経営への協力度については、「肯定型」の企業が最も「そう思う」とする割合が高い。従業員を管理する上での問題点では、「否定型」に行くほど、各問題点の回答割合の合計が高かった。企業業績(1990年以降の売上+経常利益)をみると、「否定型」に行くほど、「下降・(その後)上昇型」の割合が高く、「肯定型」が最も「上昇型」の企業割合が高くなっている。呉研究員は「中小企業が経営危機を回避し、従業員の協力を得る、また企業業績を持続的に向上させていくには『肯定型』が最も望ましいと言える」とコメントした。
内藤研究員は、【1】就業規則の変更手続き【2】いわゆる労働基準法の36協定(第三六条の規定)における過半数代表選出――にテーマを絞り、労働条件決定への労働者の参加がどれくらい機能しているかについて報告。就業規則の変更時に、過半数の労働組合および(法に則った手続きを踏んで選出された)従業員代表が意見書を作成した企業は2割にすぎない。また、その作成は、過半数組合がある企業でも半数近くが適正に行われていないことが分かった。一方、36協定の締結時における過半数代表者の選出方法をみると、39.4%の企業が適正に実施していない状況が浮かび上がる。
今後の課題として、内藤研究員は「法を知っていても遵守できなかった場合には、遵守できない理由についてさらに慎重に調査・分析を進めることが必要だ」と述べた。
連合の龍井総合局長は、自らの労働組合活動の経験から、100人未満や50人未満となると、労働組合をつくったとしても継続的な活動をするのは至難の業だと中小企業における労働組合活動の難しさを吐露。ただ、小規模でも、法に基づいた最低限の手続きができているかのチェックは可能であり、必要ではないかなどとコメントした。
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