人材ビジネスにおける「効率」VS「職人技」

JILPT主任研究員 西澤 弘

ホワイトカラー職種の職業紹介を行う有料の職業紹介事業所(いわゆる人材紹介会社)は、2000年以降、その数が急増している。この背景には、1997年の紹介職種に関する規制緩和と1999年の労働者派遣法の改正に伴う紹介予定派遣制度の導入がある。現在、職業紹介の事業許可を受けた事業所は、規制緩和前の1996年に比べて2倍以上に増えており、その結果、同業者間での競争が激化している。このような厳しい事業環境のもとで各社は生き残りのための戦略を模索しているが、その代表的なものが効率の追求と職人技である。本コラムでは、このたびとりまとめた調査結果[1]にもとづいてそれらの戦略とその課題の骨子を紹介したい。

二極化の進行

有料職業紹介事業は、企業の求人依頼に対して確保した求職者をマッチングすることを通じて収益を確保する事業である。事業運営のポイントは3つある。いかに求人を確保するか、いかに求職者を確保するか、いかに精度の高いマッチングを実現するか、である。事業運営の違いに注目すると、業務効率を重視する紹介会社と、紹介業務従事者(いわゆるコンサルタント)の個人的な能力に全面的に依存する紹介会社のふたつのタイプに大別できる。

事業運営の違いは、事業の根幹であるマッチングに対する視点の違いでもある。業務効率を重視する紹介会社ではマッチングを組織レベルの仕事ととらえ、コンサルタント個人の能力に依存する紹介会社ではあくまでも個人レベルの仕事とみている。前者の特徴は、効率的な求人・求職者の確保、情報システムの充実、目標管理制度、そして成果主義にもとづく賃金である。一方、後者では業務請負契約のもとでコンサルタントには自己管理、自助努力、自己責任が求められている。

コンサルタントの働き方

これらふたつのタイプの紹介会社では、コンサルタントの働き方も大きく異っている。業務効率を重視する紹介会社は、一連の業務過程の中で節目となる業務ごとに目標値を設定していることが多い。コンサルタントはその業務目標を指針にして仕事を進めることになる。他方、業務請負のもとで個人事業主的に働くコンサルタントは業務遂行の自由度を享受できるが、経験・スキル・知識の総合力である「職人技」(現実にはその代理指標である売上高)の高さによって評価される。

外発的動機づけの限界

いずれの働き方にしろ、業務管理を徹底したり、成果に対する高い報酬を提供したりしても、コンサルタントの売上高の格差は大きい。業績向上の誘因としての業務管理や報酬などの外発的動機づけには限界があると言わざるを得ない。コンサルタントの能力向上を図らない限り個人レベルでの業績を向上させることは難しいと考えられる。

一般的にはコンサルタントの能力や技倆は、短時間で育成や向上を期待できるものではなく、日々の業務のなかで、時間をかけて企業と人について経験と思索を深めながら高まり、かつ深まるものと考えられている。しかし、コンサルタントの育成にあたり重要なことは、経験による熟練を待つのではなく、学習スピードを速めて熟練に至る過程を短縮することである。