働き方・休み方を見直す季節

本コラムは、当機構の研究員等が普段の調査研究業務の中で考えていることを自由に書いたものです。
コラムの内容は執筆者個人の意見を表すものであり、当機構の見解を示すものではありません。

副主任研究員 池田 心豪

夏が来た

「夏休みの予定は?」そのような会話があちらこちらで交わされる季節になった。子どもが通う学校は夏休みが始まった。大人にとっても胸躍る季節の到来である。

さっそく遠出をした人もいるのではないだろうか。筆者も家族と沖縄に行ってきた。シュノーケリングでみた熱帯魚、はじめて口にしたイカスミ汁、久しぶりの友人との再会、途中で降り出した大雨、のんびり過ごした時間、すべてが良い思い出となった。

これで夏休みは終わり、あとは仕事に精を出す。・・・というわけにはいかない。8月の帰省シーズンは、わが家も例にもれず帰省する。それとは別に墓参りの予定もある。さらに、子どもが釣りに行きたいと言い出した。子どもは子どもで忙しく、週末は予定が埋まっている。平日に行くしかない。結局、8月もしっかり休暇を取ることになっている。

忙しくても休む

だが、ふと「そんなに仕事を休んで大丈夫なのか?」という不安が頭をよぎる。仕事が暇ではないからである。秋以降の仕事の予定も考えると、いろいろやらなければならないことは山積みである。はっきり言えば、忙しい。「休んでいる暇はない」と言って、出勤しつづけた方が気分的には楽なくらいである。

しかし、仕事が暇になるのを待っていたら、いつまで経っても休めない。あるときそのことに気づいてから、どんなに仕事が忙しくても、必ず夏休みを取るようにしている。“休めそうなら休む”ではなく、“休むと決めて休む”のである。

もちろん休み明けは、しばらくの間、いつもより忙しくなる。しかしそれでも、仕事を離れて、遊びに行ったり、のんびりしたりした方が楽しい。休み中にリフレッシュできていれば、休み明けは仕事の能率が上がるので、休んだ分の遅れを問題なく取り戻すことができる、という面もある。反対に、出勤しているから、仕事がはかどっているかというと、そうでもない。がんばっているつもりでいても、毎日暑い中、切れ目なく仕事をしていると集中力が落ちてくる。職場でボーっとしているくらいなら、スパッと休んだ方が良い。

備えあれば憂いなし

童話「アリとキリギリス」に出てくるアリは、夏にがんばって働いたおかげで冬に苦労しなくてすんだ。一方、夏に遊んでいたキリギリスは、冬にその報いを受けることになった。しかし、何かと忙しい今日の仕事と生活においては、夏に働き続けるのではなく、仕事を休んで遊ぶ日があってもパフォーマンスは落とさない、という働き方・休み方を構築しておかないと、冬に苦労するかもしれない。

仕事の繁閑と無関係に仕事を休む必要が生じる、ということは、実は日常茶飯事である。カゼやインフルエンザが流行る冬は特にそうである。年末年始から年度末に向かう冬は、仕事も夏より忙しい。仕事が忙しい時に限って、子どもが熱を出す、高齢の家族が体調を崩す、あるいは自分が寝込んでしまう、という経験をもつ人は少なくないだろう。そうしたときに困らないために、仕事が忙しいときも支障なく休める態勢をつくっておくことが重要である。

このように、仕事のためと思えば、休みやすくなるだろう。休んだ方が良い。夏休みなのだから。

(2015年7月31日掲載)