地方にも景気回復の波

調査員 遠藤 彰

当機構の調査・解析部では各地のシンクタンクに地域の経済・雇用動向に関するモニタリングを依頼し、四半期ごとにその結果をとりまとめる「地域シンクタンク・モニター調査」を実施している。前回調査(9月)では、アベノミクスの恩恵が地方に波及しはじめたことを指摘する報告が寄せられた。次回調査(12月)が目前に迫るなか、地域の最新情報をリサーチしてみた。

前回調査では、アベノミクスの恩恵が地方に波及しはじめていることが報告される一方、その動きは大企業が中心で、内需向け中小には及んでいないとの指摘もあった。

こうしたなか、ある地方都市の中小部品メーカーから話しを聞く機会が得られた。アベノミクスについては、「輸出向け大企業が先導するかたちで、地域でも景気回復感が広がりをみせている。しかし中小企業に限っていえば、その恩恵を受けているのはごく一部にとどまる。残念ながら、わが社には景気回復の波がまだ届いていない」。

消費税増税前の駆け込み需要については、「今のところ、目立った動きがあるわけではない。むしろ、円安に伴う輸入原材料高が収益圧迫要因としてのしかかる」と説明する。一方で、「わが社の部品は建設機械にも組み込まれている。公共工事が増え、部品の交換サイクルが早まれば、受注も増え、従業員の処遇改善にもつながる」と公共工事の増加に期待を寄せた。

一方、飲食チェーン店を展開する中小企業の経営者は、「アベノミクスで消費マインドにも改善が広がる。お祝い事などハレの日には支出を惜しまないが、日常の飲食については、依然として財布のヒモは固い。例えば、昼食なら上限は800円と決めてあり、もう一品注文する動きは限定的。フトコロが暖まらないと客単価は上がらない」と嘆く。一方で、「新幹線や高速道路など大型公共工事が積み増しされ、ヒトの動きが活発になると、売上げ増につながる。工事に携わる建設作業員だけでなく、現場に資機材を運ぶドライバーなどの来店が増えるからだ」。気になる消費税引き上げについては、「4月は消費者も倹約につとめるが、5月の大型連休明けからもとの消費スタイルに戻り、気がつけば預金残高が目減りして、6月頃から財布のヒモを締め直すかもしれない」と増税後の消費者の動向に気をもんでいた。

モニターが指摘するように、アベノミクスの恩恵が内需向け中小に到達するには、もうすこし時間が必要なのかもしれない。とはいえ、話を聞いた中小経営者の表情は明るかった。4月には消費税増税という厳しいハードルが待ち構えるが、賃上げムードを追い風に、消費マインドが上向き、足元の株高・円安基調が維持されれば、本格的な春が到来するかもしれない。

次回調査では、成長戦略から半年を振り返り、向こう1年間の見通しをモニターにご回答いただく予定。その内容は、「ビジネス・レーバー・トレンド」2014年2月号に掲載する予定。モニターからどんな報告が寄せられるか、今から楽しみにしている。

(2013年11月29日掲載)