日本的インターンシップの展開

JILPT副統括研究員 金崎 幸子

インターンシップの季節

夏はインターンシップの季節である。文部科学省の調査によると、インターンシップを実施する時期は「夏期休業中」が最も多く、参加する大学生の7割が夏休み期間中に実習をしている。今年の夏は、厚生労働省でも初めてインターンシップ学生を募集したとのことだ。職場体験に臨む学生の目に、施策立案の現場はどのように映っただろうか。

日本において、インターンシップが施策として本格的に取り上げられるようになったのは1997年から。この時点で2割に満たなかった大学のインターンシップ実施率は、2002年度には5割に近づき、今年は導入大学が過半数となっているのではないかと思われる。

(文部科学省「大学等における平成14年度インターンシップ実施状況調査」)

施策としてのスタート

1997年、閣議決定された「経済構造の変革と創造のための行動計画」にインターンシップの推進が位置づけられ、当時の労働省が「インターンシップ等学生の就業体験のあり方に関する研究会」(座長:諏訪康雄法政大学教授)を立ち上げ、文部省・通商産業省・労働省連名の「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」が取りまとめられた。

ちなみに、この研究会の事務局を担当していた経験から個人的な印象を述べると、当時最もインターンシップへの取組みの「温度」が高かったのは、正直のところ通産省であったと思う。通産省は、走りながら考えるという流儀の下、議論と平行しながら早々に東海地域をモデル地域として官民連携の事業をスタートさせている。

これに対して、文部省は、カリキュラムの検討や教育現場のコンセンサス作りのために、より時間を必要とするところがあった。また、労働省の立場では、インターンシップの「グレーゾーン」、例えば、採用・就職活動との区別や労働者性の問題(報酬は賃金に当たらないか、事故が起きた場合の補償は、etc.)など、検討が必要な課題も多かったのである。

評価と課題

三省の「基本的考え方」では、「施策として推進するインターンシップ」のあり方として、職業意識啓発に資すること、学校教育との連続性、産学連携による実施、責任の明確化、公平性・公開性、採用・就職活動へ悪影響を及ぼさないこと、などの条件が示されている。

現時点でこれらの条件がどのように実現されているかと考えると、このうち、採用・就職活動との関係については、同じ97年から就職協定が廃止されたこともあり、インターンシップだけの影響を云々することは難しい。事前に心配されていた事故等への対応については、インターンシップに適用される傷害保険や賠償責任保険などの仕組みが整備されたこともあり、幸いあまり大きな問題は起きていないようだ。

一方、実習先の確保や学校・企業での実施体制の整備など実務面・運用面での問題は、引き続き現場の大きな課題として残されているようである。さらに、期待された職業意識啓発や人材育成への効果はどうなのか、最も気になるところである。

現時点ではまだすべてを評価することは困難だが、インターンシップが「目新しいカタカナ語」の段階を過ぎ、キャリア教育の方法として定着してきたことは確かだと思う。

※労働政策フォーラム「日本的インターンシップはどこまで広がってきたか」(当機構主催で7月23日に開催)における議論も本ホームページ上に掲載される予定です。ご参照ください。