労働市場の担い手として、50代女性の元気さに注目

統括研究員 西村公子

少子・高齢化の中で、全ての人々が能力を十分発揮して職業生活を送ることは、社会の活力を維持するためにも、個人のキャリア形成の観点からも不可欠である。減少する労働力の供給源として、若年者、女性、高齢者等があげられるが、女性の中でも50代という、今まであまり注目されなかった層の元気さが明らかになった当機構の調査研究結果がある(1)

50代の人に、横軸に年齢、縦軸にプラス-マイナスをとり、自らの職業生活を振り返って自分が思うキャリアの浮き沈みを線で描いてもらう(2)と、男性では30代をピークに40代が谷となり、50代での上昇が緩やかなS字型を描くのに対し、女性は30代でのピークはなく、20代から緩やかに40代まで下降、50代に入って大きく上昇した。女性は20代後半から40代まで家事・育児で職業生活を中断し、働き続ける人が少ないためからかというと、そうでもない。働き続けた女性に限定しても曲線の形状は、20代後半から40代まで緩やかに下降し、50代で急上昇する。まさに50代でぴょんと跳ね上がる、といった感じなのである。

同じ調査結果で、今後のキャリア開発を進める上で行政にしてほしいサポートの内容をみると、50代の女性は50代の男性に比べて、教育訓練機会の情報提供、公共職業訓練の充実等に対する要望が統計的に高かった。もっと勉強して能力を高め、キャリア拓いていきたいという、50代女性の意欲の表れではないかと思う。

これらの結果をみて、個人的に、成程と合点がいった。私の周りをみると元気な50代女性が結構いる。少し例をあげると、フランス語を勉強し直して50代でフランスに留学して帰ってきたある人は、日本に来る留学生の支援に取り組んでいる。結婚まで勤めてその後専業主婦で過ごし、50代でカウンセリングの勉強をして、資格を取った人もいる。彼女は、勉強とボランティア活動を重ねてNPOの立ち上げを計画している。50代、これからよ、という勢いなのである。

労働力率をみると2009年で50~54歳女性は72.5%、55~59歳女性は62.5%と、50代女性は労働市場にいることが多数派である。15年前と比べた上昇の状況は、50~54歳で5.1%ポイント増、55~59歳6.1%ポイント増と25~29歳、30~34歳(順に11.9%ポイント増、13.7%ポイント増)には及ばないものの、それに次ぐ。60~64歳女性の労働力率も15年前に比べて5.2%ポイント増と上昇幅が大きいが、労働力率は44.6%と過半数は労働市場にいない。このような50~64歳女性の労働力率上昇の勢いを考えると、現在の50代の女性が60代前半になったときの労働力率は、現在の60代前半層の女性よりさらに高くなるのではないかと考えられる。一方男性の労働力率は25~59歳で90%を超えているが、15年前と比べると60~64歳を除く各年齢で低下している。

50代女性は、子どもの最終学校への入学、就職、結婚等のライフイベントを経験し、家庭生活での重要な役割を果たして職業に力を傾注できる状況を迎えている。この年代の女性の活用を本気になって考える時期にきているのではないか、と数字(量)とライフライン法で描かれた曲線(質)をみて、考えている。

  1. (独)労働政策研究・研修機構 2010 「成人キャリア発達に関する調査研究」労働政策研究報告書No.114
  2. ライフライン法。質的アセスメント技法の1つ。

(2010年10月15日掲載)