個別研究:平成18年度

1 労働市場の構造変化への対応

【総合的雇用政策の必要性】

研究テーマ名 趣旨・内容

社会保障と労働市場の関係に関する基礎的研究

少子高齢化社会の進展に伴い、今後も、年金制度改革をはじめとする社会保障制度の改革が予想される中、社会保障制度の改革が雇用・労働市場に与える影響、特に高齢者、女性とその配偶者の労働供給に与える影響について調査研究を行う。

労働力需給の推計

就業形態の多様化、少子・高齢化の進展等労働市場の変化に対応した労働力需給推計を実施する。

アジア諸国における外国人労働者受入れ制度の実態調査

外国人労働者を自国の労働市場に迎え入れるにあたり、アジアは、どのようなモデルを目指すべきなのか。アジア各国の政策そして実態を分析し、さらに各国が目指そうとしている社会のあり方に着目する。本研究は先進国に焦点をあてた16年度個別研究「外国人労働者に関する研究」において得られた知見を基に、アジアと欧州の相違点、或いは共通性にも言及し、わが国における外国人労働者問題の議論の素材としたい。

失業者の実態に関する追跡調査

失業者の実態について3年間の追跡調査を行い、パネルデータとして分析することにより、一層的確な失業対策の企画立案の参考にする。

【地域の雇用情勢と政策】

研究テーマ名 趣旨・内容

地方における産業・雇用政策の在り方に関する研究

産業・雇用政策の地方分権化が進展する現在、地域間格差が拡大することが予想されるが、経済活動や雇用創出が活性化している地域とそうでない地域の産業・雇用政策を比較研究し、活性化していない地域の産業・雇用政策のあり方を検討する。また、地域類型別にどのような人材ニーズがあるのかを明らかにし、地域における人材育成のあり方を検討する。

都市雇用戦略研究

都市政策と雇用政策の体系について総合化・精緻化を図るとともに、広域機能連関としてモデル地域の雇用構想を検討することにより、雇用政策の立案に資する。

【効果的な労働政策の推進 】

研究テーマ名 趣旨・内容

労働政策等の政策評価の実証研究

経済政策、社会保障等の政策の雇用・労働条件等への影響、労働政策の雇用・労働条件等への影響、他の政策への影響について、先行研究事例の研究、実証を行う。また、行政組織の効率性を評価する手法として、外的条件の違いを調整する「条件調整済み成果指標」を検討し、日本の労働政策におけるその適用可能性と意義を、職業紹介や職業訓練の文脈において吟味する。

職業安定業務統計等を活用した求職者等に関する分析方法の研究

職業安定業務統計・雇用保険事業統計を活用して、求職者等のより詳細な分析の実施可能性を探ることにより、雇用政策の企画立案に資する。

ハローワークにおけるマッチングの効率性の評価に関する研究

求職者側、求人側の両面から現在のハローワークのマッチング効率性についての評価に関する研究を実施する。現在ある指標(就職件数・率、賃金上昇率、期間等)を用いて現状分析を行うことが主眼であるが、分析結果によっては新たな評価指標の提案もめざす。

職業紹介業務におけるキャリア・コンサルティング技法の活用に関する調査研究

ハローワーク職員のキャリア・コンサルティングに関する技術等を効果的に高めるためのモデル的な研修カリキュラムの策定、当該研修で活用できるテキスト(映像情報等も含む。)の開発を行う。また、各労働局等において、当該研修が円滑に実施できるようにするため、当該テキストを活用した研修の在り方(効果的な教授法等)に関する研究も併せて実施する。

労働大学校における研修技法等に関する研究

職業紹介やキャリア・コンサルティングの分野においては、雇用環境や制度・政策の急速な変化に対応し、利用者のニーズに的確に応え得る人材の養成が求められている。このため、第一線機関職員に対する効果的な研修に資するべく新しい研修技法・システム・教材等についての研究及び開発を推進する。

職業の構造化に関する研究

職業の構造化に係る課題や職業の体系化に対する対応のあり方など職業分類に関する論点を整理し、労働省編職業分類の次期改訂のための検討を行う。

【高齢者問題と政策】

研究テーマ名 趣旨・内容

「団塊の世代」の就業と生活の見通しに関する調査研究

いわゆる団塊の世代の人々を対象にして、就業を含めたどのような近未来ビジョンを描いているか、またその実現可能性や準備状況などを調査し、今後5ないし10年の政策立案の基礎資料とする。

【若年者問題と対策】

研究テーマ名 趣旨・内容

キャリアガイダンスツールの開発・改訂に関する研究

新たなキャリアガイダンスツールの開発及びこれまで開発されてきたツールの充実・発展のための改訂を行うとともに、活用促進のための諸方策について検討する。

(1)職業ハンドブック OHBYの改訂・開発に関する研究

(2)職業ガイダンス支援機関に対するサポートのあり方に関する研究

(3)HRM等基盤尺度の研究開発

(4)若者用キャリア発達支援ツール開発に向けた予備的研究

(5)学校段階のキャリア発達支援のためのキャリアガイダンスプログラムの研究

「職業レディネステスト」の改訂に関する研究

「職業レディネス・テスト」は平成元年の改訂以後 15年が経過しており、さまざまな問題点の指摘がある。このため、現行の質問項目、尺度の構成、換算点の見直しといった観点を基本とした、大幅な改訂を行う。

コミュニケーション場面における自己分析ツールの開発に関する研究

グループや二者間でのやりとりの中で自分がどう見られているのかを理解し、自分らしさを十分に発揮するためにはどうしたらよいかを考えさせる材料を提供するため、グループワーク等の他者とのコミュニケーション場面を通して、自己分析や自己理解ができる、カード等を使った新しい手法を開発する。

職場環境の変化と若年者の離職理由・離職後の状態の実態調査

最近の若者が離職する理由を詳細に把握するとともに、その後の状況(就職(正規・非正規)、求職活動(正規・非正規)、無業者)を把握することにより、職場定着に必要な要件や、フリーターやニートとなることを予防するために必要な課題を把握するための検討に資する。

人材育成における高等教育の役割について

大卒者の進路選択・就職過程についての実態調査を行い、大学における就職指導・キャリア形成支援の現状の検討を踏まえて、高等教育における人材育成の課題を分析する。

若年求職者の個性の評価に関する研究

平成17年度から実験運用を行っている「キャリア・インサイトD版」で収集されているデータを使って、システムを利用した若者の職業適性の特徴を明らかにし、また、パーソナリティに関する諸特性の関連を検討する。

若者の包括的な移行の実態に関する調査研究

若者の移行の実態がどのように変化しているのかについて包括的に検討し、今後の日本における移行支援政策の検討に資する。

若年者就職支援のサービス・モデルと支援者の要件に関する研究

若年者の就職支援を行っている民間団体の支援者が行った好事例を収集し、その事例の支援実行者が何をどうやって進めたかを整理する。そのことによって、効果的なサービスのモデルと、それを実行する者の要件を抽出し、今後の諸施策の検討に資する

【人材開発の新段階】

研究テーマ名 趣旨・内容

個別管理の時代の職業キャリア形成支援に関する研究

日本における職業キャリア形成支援の現状を把握し、社会人に対する職業キャリア支援施策の今後の方向を探ることによって、進路選択、生涯設計など広くキャリアに関する相談支援サービスのあり方を展望しつつ、キャリア形成支援策の今後の検討に資する。

技能継承と若年層の戦力化に関する調査研究

団塊の世代が60歳定年の時期に達し、彼らの熟練技能をいかにして継承していくかの問題(2007年問題)について危機意識が高まっている。一方、2007年には、大学・短大の進学希望者数と合格者総数が等しくなる「大学全入時代」を迎えると予測されており、企業内で若年者をどう育成していくかについて関心・懸念が高まりつつある。 こうしたことから、技能継承及び若年者の戦力化について実態並びに今後の方向性について明らかにする。

高度技能の分析と評価に関する研究

多くの大企業では能力評価制度や人事評価制度が既に購入・運営されており、一通りの成果を上げているが、中小企業においては、充分に普及しているとは言いがたい。中小企業にとって、特出した技能・技術を維持・開発するとともに生産性を高めるためには、適切な技能の分析と能力の評価は必須である。中小企業における技能の分析と評価の現状を把握し、より効果的な評価制度の導入を中心に人材育成の支援策を提言する。

2 多様で柔軟な働き方への対応

【多様な働き方と公正な処遇】

研究テーマ名 趣旨・内容

パートタイム労働者の均衡処遇に関する事例調査

パートタイム労働者と正社員との間の均衡処遇に関し、各社の取り組みの事例を調査・整理し、このテーマの政策形成に資する。

最低賃金制度に関する調査研究

賃金秩序の実態(企業内最賃協定・産業別最低賃金が当該企業内・産業内の賃金形成等に与えている影響)、企業の賃金・処遇制度の実態(企業横断的な職種等の明確化状況、職種別賃金の設定状況等)を収集・分析し、今後の最低賃金制度のあり方について検討するための基礎資料とする。

【企業構造・行動の変化と人的資源管理の変化】

研究テーマ名 趣旨・内容

諸外国における任意規範等の社会的機能と企業等の投資行動に与える影響の実態に関する調査研究

「社会的責任」やSRIの前提となる労働分野における法制度、社会システムについては、各国ごとに大きく異なっており、今後のCSR施策の推進に当たっては、こうした点を十分に踏まえていく必要がある。こうした観点から、参考になると考えられる欧米等諸外国において任意規範等が果たしている社会的機能と企業等の投資行動に与える影響の実態を明らかにする。

賃金制度等に関する日韓比較研究

成果主義的な賃金制度の実態を日韓両国で比較することにより、成果主義的な賃金制度のどの様な点が両国で類似しており、またどの様な点が両国で異なるのかを調査する。こうした比較により、日本における成果主義的賃金制度の特徴を明らかにする。本研究は、韓国労働研究院からの共同研究の要請に応じるものである。

高齢者のさらなる活用に向けた人事労務管理の要件

高齢者雇用の拡大につながるより踏み込んだ実践的インプリケーションを引き出すことを目的とし、主に雇用延長を実際に支える事業所職場レベルでの人事労務管理や、雇用延長対象者の状況に焦点をあてて、実態把握と分析を行う。

自動車産業の雇用・労働に関する研究

オーストラリア・シドニー大学ランズベリー教授の提案による、5カ国(豪・米・独・韓・日)共同研究のための国内研究。 (1) 仕事遂行組織、(2) 技能形成、(3) 賃金・給与制度、(4) 人事慣行(雇用保障を含む)、(5) 企業統治について、実態把握と分析を行い、国際研究会で発表、討論する。

【労使関係の変容と胎動】

研究テーマ名 趣旨・内容

企業内紛争処理システムの整備支援に関する調査研究

最近の労使紛争の動向を見ると、企業組織の再編、人事管理の個別化等を背景として、その数の増加、多様化・複雑化が進展している。その要因として、企業内における既存の紛争処理システムが有効に機能しなくなっていることが挙げられることから、企業内紛争処理システムのあり方及び企業内紛争処理システムの整備支援策のあり方を検討し、今後の施策の企画立案に資する。

賃金をめぐる団体交渉の最近の傾向についての研究

賃金決定が個別化する傾向の中、賃金をめぐる団体交渉はどう変わっているのか、労使の団体交渉の役割はどこにあるかを明らかにし、賃金に関する団体交渉(春闘)の姿の「現在」を探ることによって、「将来」を展望する。

裁判経験と雇用調整に関する研究

企業の裁判経験と雇用調整についての関係を明らかにすることにより、どのような社会的なルールを確立すれば実際の雇用調整における問題を緩和することができるかを探ることによって、雇用調整に関わる制度的議論に資する。

地域レベルの労使関係に関する研究

失業・雇用の問題は地域別に異なり、その問題の的確な解決のためには地域での取組みが重要であるとともに、その効果的な解決のためには政労使の協調的な対応が肝要である。本研究は失業・雇用問題の解決に最適な地域レベルの政労使関係のあり方を明らかにする。

【豊かな勤労者生活の実現】

研究テーマ名 趣旨・内容

所得の世代間移動についての研究

日本における所得の世代間移動の推定を行い、親の所得が次世代の所得に、どの程度、かつどういう経路で影響を与えるのかを検証することで、日本の所得格差を生み出している要因が何であるかを明らかにする。

有期契約労働者の育児休業等の利用状況に関する研究

改正育児・介護休業法の施行により新たに対象となる有期契約労働者について、育児休業及び介護休業の取得状況など改正法の施行状況を把握し、有期契約労働者の仕事観の変化等について調査・分析を行う。