個別研究:平成16年度
1 厳しい雇用失業情勢と雇用問題への対応
【総合的雇用政策の必要性】
研究テーマ名 | 趣旨・内容 |
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労働力需給の推計 |
雇用政策の基本情報である2050年程度までの労働力人口、失業率等の予測を行う。 |
外国人労働者問題に関する研究 |
現状の高失業率の下での企業の外国人労働者に対する労働需要動向を把握し、その原因を検討する。 |
【失業の解明】
研究テーマ名 | 趣旨・内容 |
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失業者の属性と再就職経路に関する研究 |
失業者の実態調査を行い、その属性によって再就職経路にどのような違いがあるのかについて分析し、失業者の再就職に向けた政策提言を行う。 |
失業者の実態に関する追跡調査 |
失業者の実態について3年間の追跡調査を行い、パネルデータとして分析することにより、一層的確な失業対策の企画立案の参考にする。 |
失業率の理論的分析に関する研究 |
構造的・摩擦的失業率をより適切に分析するための手法を検討し、労働市場の状況を把握するとともに、労働政策の構造的な失業又は摩擦的な失業への対応の有効性について検証する際の参考資料を提供する。 |
【高齢者問題と政策】
研究テーマ名 | 趣旨・内容 |
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中高年長期失業者の構造に関する研究 |
長期失業者の実態を追い、失業が長期化する要因を明確化し、長期失業者の減少に向けた政策に資する。 |
団塊の世代を対象とした生活・職業経歴の追跡 |
団塊の世代を中心とする中高年を対象とした本格的な追跡調査の実施に向けて、先行調査の分析、テスト調査の実施等を通じて、追跡調査の調査票の設計、調査方法・調査体制や分析方法の検討を行う。 |
【若年者問題と対策】
研究テーマ名 | 趣旨・内容 |
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若者の職業への移行の実態と移行支援フあり方に関する調査研究 |
平成16年度は、15年度の対象者ヒアリングの追加・補完の他、新たに始まったわが国の若者支援策についての現状のヒアリング、イギリスのコネクションズ等新たな背策の運営実態と評価状況を調査し、今後のわが国の若年者就業支援策を有効に展開するための資料を提供する。 |
若年者にとっての「魅力ある仕事、職場」に関する研究 |
HRMチェックリストを使用して、若年者にとって魅力ある仕事、魅力ある職場とは何かについて事例研究を行い、若年者対策の参考にする。 |
若年者労働市場の現状及び将来見通しについて |
今後の若年者労働対策を検討する際の資料として、最近の高卒・専門学校卒等それぞれの入職経路を調査し、高卒求人の減少の要因について分析するとともに、将来の若年者労働市場を展望する。若年雇用者の職業スキル向上のために何を行っているのかも把握する。 |
人材育成における高等教育の役割について |
産業界における高等教育卒業者の採用や人材育成のあり方、高等教育ならびに高等教育卒業への評価の特徴を英国との比較を通じて相対化することにより、わが国の人材育成に果たす高等教育の役割を明らかにする。 |
【就職支援メソッドの開発】
研究テーマ名 | 趣旨・内容 |
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「職業レディネス・テスト」の改訂に関する研究 |
「職業レディネス・テスト」は平成元年の改訂以後15年が経過しており、さまざまな問題点の指摘がある。このため、現行の質問項目、尺度の構成、換算点の見直しといった観点を基本とした、大幅な改訂を行う。 |
「適性診断システム:キャリア・インサイト」の改訂に関する研究 |
キャリア・インサイトVer.1.01のプレスおよび公表。インターネット対応版の実施試験を行う。 |
若年者職業ガイダンス実施者に対する支援に関する研究 |
近年ニーズの高い若年者を対象とした職業ガイダンスについて、それを実施する者を支援するためのガイドツールを開発する |
若年者向け職業情報OHBYの改訂に関する研究 |
高等学校を中心に広く活用され、好評を得ている「OHBY」について、インターネット化を始めとする、より適格性が高く、また、使い勝手のよいものに改訂を進める。 |
2 さまざまな構造変化への対応
【就業・雇用の多様化】
研究テーマ名 | 趣旨・内容 |
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労働者の副業に関する労働契約等の実態に関する調査 |
副業(雇用)から企業(自営)というセカンドキャリアのライフデザインがどのような副業から可能になるか、企業の就業規則やキャリアカウンセリング、教育訓練制度の中での副業の取扱いの変化、副業としての受託契約労働やNPO就労、等について考える。 |
【企業構造・行動の変化と人的資源管理の変化】
研究テーマ名 | 趣旨・内容 |
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大企業における過去10年の賃金改革と今後の課題 |
いわゆる「失われた10年」における電気、自動車産業のリーディング・カンパニーにおける賃金制度の変遷を事例収集し、賃金制度の将来像を展望する。 |
職務・職責基準の賃金データに関する研究 |
「賃金構造基本統計調査」に代表される賃金情報は、職務や職責といった仕事内容そのものにリンクした情報は、一部の外資系企業を除いて入手できないというのが現実である。このため、コンパクトな仕事基準に基づいた賃金情報を整備・提供することとする。 |
パートタイム労働者の均衡処遇に関する事例研究 |
昨年10月に改正されたパートタイム労働指針が示す、先進的な企業事例を収集・報告するとともに、通常の労働者との均衡処遇の確保に向かえない企業の背景を明らかにすることにより、今後のパート労働政策の立案に資する。 |
自動車産業の雇用・労働に関する研究 |
オーストラリア・シドニー大学ランズベリー教授の提案による、5カ国(豪・米・独・韓・日)共同研究のための国内研究。・仕事遂行組織、・技能形成、・賃金・給与制度、・人事慣行(雇用保障を含む)、・企業統治について、実態把握と分析を行い、国際研究会で発表、討論する。 |
長時間労働の実態とその雇用・生産性に及ぼす影響に関する研究 |
労働者の長時間勤務の実態を把握し、雇用や生産性に及ぼす影響について考察し、労働時間政策の立案に資する。16年度においては、15年度の研究成果を踏まえたアンケート調査を実施し、日本の労働者の長時間労働に関する実証研究を行う。 |
【制度・政策の変化と対応】
研究テーマ名 | 趣旨・内容 |
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労働基準・労働契約法制研究(労働契約の展開に関する調査) |
第156回通常国会において成立した改正労働基準法の附帯決議を踏まえ、企業、労組へのアンケート・ヒアリングを実施し、国内における労働条件の変更、出向、転籍、配置転換等の労働契約の展開の実態を明らかにする。 |
労働基準・労働契約法制研究(諸外国の労働契約法制について) |
第156回通常国会において成立した改正労働基準法の附帯決議に関連し、諸外国(ドイツ、フランス、イタリア、スウェーデン、イギリス、アメリカ、オーストラリア)の労働契約法制の制度及び実態を調査・研究し、今後の日本における労働契約法制の検討に資する。 |
労働基準・労働契約法制研究(諸外国の労使協議制について) |
第156回通常国会において成立した改正労働基準法の附帯決議に関連し、比較的労使協議に関する法制度が整っているイギリス、フランス、ドイツについて、その制度及び実態を見極め、今後の日本における労働契約法制の検討に資する。 |
労働基準・労働契約法制研究(解雇無効判決後の現職復帰の状況について) |
第156回通常国会において成立した改正労働基準法の附帯決議を受けて、解雇無効判決後の当該労働者の元の職場への復帰の状況(復帰しているか否かを含む)について実態把握を行い、あわせてその問題点を整理する。 |
労働基準・労働契約法制研究(ホワイトカラー・イグゼンプションに関する調査研究) |
今後の労働時間法制の議論のあり方に資すべく、アメリカにおけるホワイトカラー・イグゼンプション制度を中心に、諸外国のホワイトカラー労働者等に対する労働時間法制について調査研究を行う。 |
産業別最低賃金制度に関する調査研究 |
産業別最低賃金設定の効果に係る実証分析、文献調査、労使へのヒアリングを行う。 |
特別法に基づく企業組織再編に伴う労働関係上の諸問題に関する研究 |
改正会社更生法、改正産業活力再生特別措置法、株式会社産業再生機構法といった特別法の枠組みの中で行われる営業譲渡等の企業組織再編が活発化するとともに、質的にも営業譲渡等企業組織再編に伴う労働関係上の実態の変化も予測される。このため、この実態を把握し、問題点等を明らかにし、労働関係上の取扱いに関する指針の策定等の検討を行う際の参考資料とする。 |
行政の支援による起業事例と雇用創出効果に関する研究 |
今産・官・学連携の起業支援の課題を明らかにするため、起業・雇用創出に成功した事例などを収集・整理する。 |
解雇権濫用法理と雇用調整に関する定量的分析 |
我が国において、「解雇権濫用法理」が現実の解雇行動を制約していると考えられてるが、現実の雇用調整への影響については定見がない。このため、「解雇権濫用法理」と現実の雇用調整がどのような関係にあるかを、実証面を中心に考察することにより、雇用調整に関わる制度的議論に資することとする。 |
雇用調整助成金が事業所の構造調整に与える影響についての研究 |
雇用調整助成金については、近年、構造調整を阻害しているとの指摘があるため、これを踏まえ、業種指定方式の廃止や支給限度日数の見直しなど一時的な雇用調整を行う事業主への支援へ重点化が図られたところである。こうした見直しにより、当該助成金が構造調整を阻害することなく、真に必要な事業主への支援となっているかについて、調査を実施し、有効性を検証する。 |
企業のコンプライアンスと雇用に関する研究 |
企業のコンプライアンス(法令遵守等)の視点から人的資源管理を研究し、雇用政策の企画の参考にする。その際、近年米国を中心に議論のさかんな障害者雇用を例としてアプローチする。 |
労働大学校における研修技法等に関する研究 |
職業紹介やキャリア・コンサルティングの分野においては、雇用環境や制度・政策の急速な変化に対応し、利用者のニーズに的確に応えうる人材の要請が求められている。このため、第一線機関職員に対する効果的な研修に資するべく新しい研修技法・システム・教材等についての研究及び開発を推進する。 |
【労使関係の変容と胎動】
(プロジェクト研究「労働条件決定システムの再構築研究」)
研究テーマ名 | 趣旨・内容 |
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諸外国の集団的労使紛争解決制度とその実態に関する研究 |
不当労働行為審査制度固有の問題、および、その司法審査制度に関する諸外国の実情と問題点、さらに、問題点克服の制度改善の動向を含め、集団的労使紛争全般にわたる諸問題の解決方法の現状について諸外国の現状を調査することを目的としている。 |
【諸外国の動向】
研究テーマ名 | 趣旨・内容 |
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イギリスにおける能力開発を担う指導者の養成及び資格に関する調査研究 |
イギリスでは、若年者の教育訓練やNVQの取得訓練において、指導者が有効に機能しているといわれている。このため、イギリスに焦点を当てて、指導者の養成や資格に関する制度や実態について調査・分析し、日本における各種の教育訓練指導者の資格制度や彼らの養成、再訓練のあり方の検討に資することとする。 |
ロシアにおける労働政策と労使関係に関する研究 |
資本主義化以降のロシアにおける労働政策及び労使関係の動向を調査するとともに、我が国、特に日本海側諸地域との経済関係とその雇用に与える影響などに関して、概括的な研究を行うものである。 |
アジア諸国の雇用・職業訓練政策について |
アジア各国で行われている雇用・職業訓練政策の類似点・相違点を明らかにし、国内政策の立案、国際業務に活用する。 |
3 労働者・企業の意識の変化と仕事と生活の調和
【仕事と生活の調和】
研究テーマ名 | 趣旨・内容 |
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労働者の職業意識に関する研究 |
終身雇用を前提とした日本的雇用慣行に代わり、パート、派遣労働、契約労働といった多様な働き方に対するニーズが大きくなっている。また、成果主義に基づく能力評価制度の導入など労働者を取り巻く状況も大きく変化している。こうした中で、きめ細かな雇用政策を的確に推進していくため、労働者の職業意識やニーズの変化の方向を適切に把握する。 |
ITとディーセントワーク(良質な就業機会)に関する研究 |
ITが労働分野に普及するに際して、これを質量両面が整備された就業機会(ディーセントワーク)の拡大に結びつけていくための方策を検討する。 |
【人材開発の新段階】
研究テーマ名 | 趣旨・内容 |
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職業訓練の就職行動に及ぼす影響に関する研究 |
職業訓練が技能付与とともに幅広い教育指導機能を有することを捉え、失業者に対する職業訓練が就職行動に及ぼす影響を把握し、早期就職を促進するための支援方策についての手がかりを得る。16年度はその結果を踏まえつつ公共機関の直接実施について調査分析する。 |
その他、国際ワークショップのための研究、予備的研究として、10テーマ程度の研究を実施している。