1995年 学界展望
労働調査研究の現在─ホワイトカラーの人事管理、女性労働、国際化
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はじめに

八幡

今回の学界展望は1992年から94年までの3年間を対象にホワイトカラーの人事管理、女性労働、国際化の3テーマを取り上げた。参加者3名がそれぞれの関心に従って、調査をべ一スに書かれた実証的な論文を中心に、調査報告書、場合によっては実務家の書いた著述、講演録などにも視野を広げ、現実の問題解決にどのように貢献しつつあるのかを取りまとめてみた。

サービス経済化の進展、高学歴化などによりホワイトカラーが量的に増加したこと、そのうえ、高度成長期に大量採用した層を中心に余剰感が高まっていることなどから、ホワイトカラー労働への関心が高まっている。当初は広くホワイトカラーの生産性、人事労務管理制度など全般の問題を取り上げようとしたが、議論が拡散するので、ここでは近年の研究動向をふまえて、ホワイトカラーのキャリアに限定して議論することにした。

女性労働では、まず、男女雇用機会均等法が施行されて10年近く経つが、その当時採用された女性を視野において、キャリア形成やコース別人事制度、昇進・昇格の問題を取り上げた。さらに、パートタイム労働者問題や女性の就業選択の問題にも触れている。パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善などに関する法律)の施行に伴って、典型パート(短時間パート)についての雇用管理上の問題はかなり整理されてきたが、残された課題は何であるか、そして、広く女性の就業選択はどうなるのかといったことも含めて取り上げた。

国際化では、海外現地生産の展開と労働面での対応として、日系企業で行われている人事労務管理上の問題や広い意味での技術移転の問題、それの資本国籍別にみた対応の違い、さらに中小企業でのそれらの問題を取り上げた。同時に、内なる国際化として、外国人労働者も取り上げている。彼らの就労実態がどのようで、日本人との協業関係がどのようであり、何が課題になってきているのか、また、団体型外国人研修生受け入れ事業が本格的に動きだしたが、その実情と問題点、課題は何なのかなどを取り上げることにした。

議論に参加した3人の問題関心はそれぞれ異なるが、日本的雇用慣行の見直しがジャーナリスティックに叫ばれるなか、冷静に評価しようとのスタンスでは一致していたと思う。そして、どの程度成功したかは疑わしいが、原点を意識するなかから少しでも何かをつかみ出したいとの意欲は強かった。われわれの議論が今後の労働調査研究に少しでも貢献できれば幸いである。