資料シリーズ No.229
日本企業のグローバル戦略に関する研究(2)

2020年3月27日

概要

研究の目的

本研究の目的は、わが国企業が現在、どのような認識からいかなるグローバル戦略を選択し、その際、どういった課題を抱えているのかを探ることにある。

周知のとおり、AIやITを中心とした技術革新が仕事の進め方そのものを根本から変え、さらに、わが国国内と国外との関係も急速に変えつつある中で、現在から今後にわたり、海外関係、とりわけアジア地域との関係緊密化がいっそう進展することは確実であろう。その際、わが国の雇用や労働、そして、経済社会全体の発展に寄与するような方向性を検討するためには、グローバル化の中でのわが国企業の戦略と、海外、とりわけ、アジアの国々の経済・労働社会に関する適確な状況把握がぜひとも必要である。

わが国企業がグローバルに事業展開をする中で、現在から今後、短期的、中長期的にどういった戦略を採用し遂行しようとしているのであろうか。今後の雇用システムの中で重要な一つの要素となるわが国企業のグローバル戦略を検討することが本書の目的である。

研究の方法

ヒアリング調査結果の分析

期間:
2019年6月~11月
対象:
上場企業9社

主な事実発見

1 人事管理全体にわたる問題点、およびコア人材の育成、タレントマネジメント

① 今後の経営を考えるうえで大前提となるのは、「技術進歩、環境変化のスピードは、現在もそうであるが今後ますます速くなり、その中で継続的に『変革』が必要である。そしてその際、ダイバーシティの進展への対応が必須となっている」という点である。

② 将来の経営を安定的に継続することができる人材と、まったく新しいイノベーションを生み出すことが可能となる人材の双方を育成することが重要である。

③ コア人材・経営人材の育成に関しては、より早い段階から、将来の経営人材を念頭においた育成の仕組みが必須であり、可視化も含め、その仕組みを整備する企業が増えている。

④ 早い段階から「選抜組」を育てると同時に、その時点で「選抜されなかった」従業員がモティベーションを下げることのないように対処することが必要となる。

⑤ 人材活用の効率化は、場合によっては、組織構造として採用されてきた事業部制の仕組みと人事の仕組みとの関連性にも変化をもたらす可能性がある。

⑥ 「ヒトの現地化」は、以前に比べ相当進展し、フェーズが変わってきている。現地はローカル・スタッフに任せることが基本となりつつある。

⑦ コミュニケーション言語として英語の使用は当然のこととなりつつあるが、暗黙知となっている部分など、より立ち入った内容を正確に伝えるためには、日本語が用いられることが多い。日本語は「壁」となり得る。

⑧ コア人材とは、ほぼ将来の経営を担うことができる人材を指す。キーワードは「変革」であり、そのために「課題形成し、その達成をリードできる」ことがイメージされている。

➈ 優秀人材の育成には、二段階以上の人材のプール・研修という体制を取る企業が多い。その際、企業が意識しているのは「修羅場経験」の重要性である。

⑩ 海外拠点も含めたグループ全体の職務グレードをグローバルに統一し人事管理を行うことを目指す企業は多いが、人事情報に対する見方が国により異なるなど、実施に向けてのハードルが高い。

⑪ 海外拠点における人材育成では、拠点ごとの育成を進めると共に、その中の優秀層を日本本社に招き、一定期間、研修させる企業が確実に増えつつある。

2 外国人従業員、グローバル化

① 日本国内の本社でホワイトカラーに相当する外国人を雇用することは、グローバル化への対応やダイバーシティの観点から肯定的に捉えられているものの、そのために外国人を日本人とは別様に採用ないしは育成しようとする事例はほとんど見られなかった。

② 調査対象となった9社は、総じてグローバル化に先進的な対応をみせる企業であるが、そうした企業でも外国人を本格的に採用し始めたのは諸についたばかりである。

③ 「グローバル人材」の定義は企業によって異なり、統一的な像が結ばれているわけではなかった。

④ 概してグローバル人材とは、企業の基幹人材を兼ねる概念であり、多様性の尊重や言語・異文化理解能力、国際的なリーダーシップなどを備えた人物だと考えられていた。

⑤ こうしたグローバル人材は今後必要になるが、現在は充分に雇用できていないという企業の認識は共通してみられた。

⑥ 企業のグローバル化については、すべての企業が同じイメージを想起しているわけではないが、調査対象企業の語りからいくつかの理念型が導かれた。具体的には、企業のシステムを世界規模で均一化すること、日本本社の中枢機能を維持しながら他にも拠点を設けて多元化すること、本社から自律的に世界規模で経営を現地化することという3つの理念型が、今回のインタビュー調査から明らかになった。

⑦ グローバル化に関する認識は、今後の組織づくりの構想とも強く関連していた。

政策的インプリケーション

わが国企業のグローバル展開に関する情報を収集し、政策立案のための基礎的データを提供する。

本文

お詫びと訂正

本文 30ページに誤りがありましたので、以下のとおり訂正してお詫びいたします。本文PDFはすでに訂正済です。(2020年5月27日)

誤:
K社において全世界のスタッフの拠り所となっている、K社のグループ経営理念や
正:
I 社において全世界のスタッフの拠り所となっている、I 社のグループ経営理念や

研究の区分

プロジェクト研究「雇用システムに関する研究」
サブテーマ「産業構造と人口構造の変化に対応した雇用システムのあり方に関する研究」

研究期間

平成29年度~令和4年度

研究担当者

中村 良二
労働政策研究・研修機構 特任研究員
園田 薫
東京大学大学院人文社会系研究科

関連の研究成果

お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ

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