資料シリーズ No.129
労働力需給の推計
―労働力需給モデル(2013年度版)による政策シミュレーション―

平成26年 5月15日

概要

研究の目的

経済構造、労働力需要・供給構造の変化に関する分析の基礎資料として、労働力需給に関するシミュレーション結果を提供する。

研究の方法

国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(2012年1月推計)と政府の「日本再興戦略」(2013年6月14日閣議決定)の成果目標を踏まえ、将来の性・年齢階級別労働力人口及び就業者数、並びに産業別就業者数について、次の3つのシナリオにわけて計量経済モデルによるシミュレーションを実施した。

  1. 経済再生・労働参加進展シナリオ(以下、経済再生・参加進展):各種の経済・雇用政策を適切に講ずることにより、年率2%程度の経済成長注1)で、若者、女性、高齢者などの労働市場への参加が進むシナリオ(経済成長と労働参加が適切に進むケース)
  2. 参考・労働参加漸進シナリオ(以下、参考・参加漸進):各種の経済・雇用政策をある程度講ずることにより、年率1%程度の経済成長注2)で、若者、女性、高齢者などの労働市場への参加が一定程度進むシナリオ(経済成長と労働参加が一定程度進むケース)
  3. ゼロ成長・労働参加現状シナリオ(以下、ゼロ成長・参加現状):ゼロ成長に近い経済成長で、性・年齢階級別の労働力率が現在(2012年)と同じ水準で推移すると仮定したシナリオ(経済成長と労働参加が適切に進まないケース)
  • 注1) 「日本再興戦略」では今後10年間の平均で、実質2%程度の成長を目標としている。
  • 注2) 「日本再興戦略」における成長率目標の半分程度の成長率。

主な推計結果

  1. 2030年の労働力人口は、2012年の6,555万人から、ゼロ成長・参加現状では5,683万人に減少すると見込まれる(図表1)。一方、経済・雇用政策を講じ、経済成長とともに労働市場への参加が進む場合、参考・参加漸進で5,954万人、経済再生・参加進展で6,285万人と、それぞれゼロ成長・参加現状に比べ減少幅が縮小すると推計される。とりわけ経済再生・参加進展では、女性の労働力人口は、2012年の2,766万人から2030年には2,771万人に増加すると見込まれる。2030年の労働力率は、2012年の59.1%から、ゼロ成長・参加現状では54.3%、参考・参加漸進では56.9%とそれぞれ低下すると見込まれる。経済再生・参加進展では、60.1%と2012年水準よりも上昇する結果となる(図表1)。
  2. 2030年の就業者数は、2012年の6,270万人から、ゼロ成長・参加現状では5,449万人、参考・参加漸進では5,725万人にそれぞれ減少すると見込まれる。経済再生・参加進展では、6,103万人と他のシナリオと比べ減少幅が縮小すると見込まれる(図表2)。2030年の就業者数の性別構成については、ゼロ成長・参加現状では2012年(男57.7%、女42.3%)とほぼ同様であるが、経済再生・参加進展及び参考・参加漸進では女性の構成比がそれぞれ0.8及び1.9ポイント上昇するとの結果を得る。とりわけ経済再生・参加進展では、女性の就業者数は、2012年の2,654万人から2030年には2,697万人に増加すると見込まれる。2030年での年齢別構成については、人口の高齢化を反映して、60歳以上の者の割合が2012年の19.0%から、ゼロ成長・参加現状で19.8%、参考・参加漸進及び経済再生・参加進展で21.7%といずれも高まると見込まれる。2030年の就業率は、2012年の56.5%から、ゼロ成長・参加現状では52.1%と低下すると見込まれる。参考・参加漸進では、54.7%と緩やかに低下すると見込まれる。一方、経済再生・参加進展では、58.4%と上昇する結果となる(図表2)。
  3. 「日本再興戦略」では、2020年の就業率の成果目標として、20~64歳の就業率80%、20~34歳の就業率78%、60~64歳の就業率65%、25~44歳の女性就業率73%が掲げられている。経済再生・参加進展では、「日本再興戦略」の就業率成果目標と整合的な状況となることが見込まれる。
  4. 2020年の産業別就業者数は、2012年と比較すると、経済再生・参加進展で「日本再興戦略」の成長分野に関連する一般・精密機械器具(10万人増)、 電気機械器具(11万人増)、 その他の製造業(12万人増)、情報通信業(19万人増)、その他のサービス(28万人増)で増加する他、その他の事業サービス(5万人増)、並びに、高齢化の進展とともに需要が増大する医療・福祉(144万人増の850万人)において増加すると見込まれる。2030年の産業別就業者数は、2012年と比較すると、経済再生・参加進展で、一般・精密機械器具(6万人増)、電気機械器具(1万人増)、情報通信業(33万人増)、医療・福祉(256万人増の962万人)、その他の事業サービス(15万人増)及びその他のサービス(55万人増)において増加すると見込まれる。製造業全体では、経済再生・参加進展で、2020年に16万人増の1,048万人、2030年に38万人減の994万人と推計される。

図表1 労働力人口及び労働力率(右軸)の推移

図表1画像

注)2012年実績値は総務省統計局「労働力調査」、2020年及び2030年は推計値。

図表2 就業者数及び就業率(右軸)の推移

図表2画像

注)2012年実績値は総務省統計局「労働力調査」、2020年及び2030年は推計値。

政策への貢献

  1. 今後、我が国が重点的に取り組むべき雇用・労働政策の方向性を検討した厚生労働省雇用政策研究会において基礎データとして活用され、同研究会報告書(平成26年2月)にも多数引用された。
  2. 厚生労働省社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会資料(平成26年2月、平成26年3月)に活用された。
  3. 内閣府「選択する未来」委員会資料(平成26年2月、平成26年4月)に活用された。

本文

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研究の区分

プロジェクト研究「我が国を取り巻く経済・社会環境の変化に応じた雇用・労働のあり方についての調査研究」

サブテーマ「労働力需給推計に関する研究」

研究期間

平成25年度

執筆担当者

中野 諭
労働政策研究・研修機構 研究員

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