調査シリーズNo.260
解雇等に関する労働者意識調査
概要
研究の目的
解雇等及び解雇等をめぐる紛争の実態、並びに解雇無効時の金銭救済制度に対する意識等について把握するため、解雇、雇止め(以下「解雇等」。)経験者及び解雇等未経験者(以下「その他の者」。)を対象としてアンケート調査を行った。なお、本調査は厚生労働省労働基準局の要請に基づいて実施したものである。
研究の方法
調査会社の登録モニターを対象としたインターネット調査として実施した。まず、全体の目標回収数を解雇等経験者1万人、その他の者1万人と設定し、総務省統計局「令和4年就業構造基本調査」結果に基づく人数分布により性×年齢階級の層別に目標回収数の割付を行った。次に、アンケートの冒頭において解雇等の経験の有無、性、年齢によるスクリーニングを行い、各層の目標回収数に達するまで回収を行った。
調査の実査期間は2025年3月3日から3月8日である。
主な事実発見
- 解雇等の際の状況(解雇等経験者)
解雇等の理由 (複数回答)は、「経営状況の悪化」が34.0%と最も多く、次いで「自身の担当する業務がなくなったから」(14.3%)、「その他」(12.3%)、「会社の倒産」(10.5%)、「理由なしに単に「帰れ」「やめろ」「来なくていい」などと言われたから」(9.1%)、「職務能力不足(仕事ができない)と判断されたから」(9.0%)などが続いている。雇い止めのケースでは、解雇のケースと比べ、「自身の担当する業務がなくなったから」「その他」「年齢が高いから」といった理由がやや多く、「会社の倒産」「理由なしに単に「帰れ」「やめろ」「来なくていい」などと言われたから」といった理由はやや少なくなっている(図表1)。
図表1 直近の解雇等の理由(複数回答)
- 解雇等の際の紛争解決制度の利用状況(解雇等経験者)
解雇等の際に紛争解決制度 を利用したかどうかを尋ねると、「利用した」が7.6%、「利用していない」が92.4%となっている。雇止めのケースに比べて解雇のケースではやや「利用した」の割合が高くなっている(図表2)。
図表2 直近の解雇等の際の紛争解決制度の利用の有無

- 解雇等をめぐる紛争解決やその予防のために必要と考えること
復職請求等の現行制度は維持しつつ、解雇等をめぐる紛争解決やその予防のために何が必要と考えるかについて、解雇等経験者とその他の者それぞれに尋ねたところ(複数回答)、解雇等経験者においては「わからない」が49.0%と最も多く、次いで「紛争となった場合どのような結果になるか予想しやすくするための解雇等に係るルールの分かりやすい周知」が25.2%、「和解等で支払われる金額の算定方法や考慮要素(給与額、勤続年数等)の明確化」が19.3%、「解雇等無効判決を得た労働者が復職や継続就労しやすくなるための環境整備」が18.7%、「解雇等無効判決や金銭での和解が成立した具体的事例の周知」が16.5%、「簡易迅速に解決可能な、都道府県労働局のあっせん等や労働審判等のさらなる利用促進」と「解雇等無効時に労働者の請求により金銭を受け取ることで労働契約を終了させる制度の創設」がそれぞれ15.9%などとなっている。
その他の者については「わからない」が61.6%と最も多く、次いで「紛争となった場合どのような結果になるか予想しやすくするための解雇等に係るルールの分かりやすい周知」が21.6%、「和解等で支払われる金額の算定方法や考慮要素(給与額、勤続年数等)の明確化」が19.0%、「解雇等無効判決を得た労働者が復職や継続就労しやすくなるための環境整備」が18.3%、「解雇等無効判決や金銭での和解が成立した具体的事例の周知」が14.8%、「簡易迅速に解決可能な、都道府県労働局のあっせん等や労働審判等のさらなる利用促進」が13.4%、「解雇等無効時に労働者の請求により金銭を受け取ることで労働契約を終了させる制度の創設」が12.6%などとなっている。
「わからない」の割合がその他の者で高いものの、解雇等経験者とその他の者で回答傾向に大きな差異はみられない(図表3)。
図表3 解雇等をめぐる紛争解決やその予防のために必要と考えること(複数回答)

政策への貢献
労働政策審議会労働条件分科会資料で引用された。
本文
分割版
研究の区分
プロジェクト研究「多様な働き方とルールに関する研究」
サブテーマ「多様な/新たな働き方と労働法政策に関する研究」
研究期間
令和6~7年度
調査・執筆担当者
- 濱口 桂一郎
- 労働政策研究・研修機構 研究所長
- 渡邉 学
- 前 労働政策研究・研修機構 調査部(統計解析担当)部長
- 長山 直樹
- 労働政策研究・研修機構 調査部(統計解析担当)部長
- 上村 聡子
- 労働政策研究・研修機構 調査部(統計解析担当)主任調査員
※執筆は調査部(統計解析担当)が行った。
関連の研究成果
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