調査シリーズNo.244
解雇等無効判決後における復職状況等に関する調査
概要
研究の目的
解雇無効時の金銭救済制度について、地位確認がされた労働者の実際の職場復帰の割合等を把握することが重要であるとの観点から、弁護士へのアンケート調査を行った。
研究の方法
労働問題を専門とする日本労働弁護団、経営法曹会議に加え、日弁連その他の各弁護士会の労働問題に関連する委員会のメーリングリストに登録している会員弁護士を対象に、WEB上の調査票で回答を記入してもらうというやり方を採用した。実査は令和5年10月6日から11月6日に行われた。
人 | % | |
---|---|---|
日本労働弁護団 | 101 | 43.7 |
経営法曹会議 | 65 | 28.1 |
両団体以外 | 65 | 28.1 |
全体 | 231 | 100.0 |
主な事実発見
- 解雇等無効判決後の復職状況
解雇・雇止め(以下「解雇等」)が無効との判決で終局した事案に係る労働者99人のうち、「再び働いた」(復職)が37人(37.4%)、「再び働くことはなかった」(復職せず)が54人(54.5%)であり、概ね4割弱が復職し、5割強が復職していないことになる。ただし、いったん復職した者のうち復職後継続就業している者は30人(30.3%)であり、7人(7.1%)は復職後、労働者本人は継続就業を望んでいたにもかかわらず、不本意な退職をしている。
人 % 労働者数 99 100.0 復職した 37 37.4 復職後継続就業 30 30.3 復職後不本意退職 7 7.1 復職せず 54 54.5 不明 8 8.1 - 復職しなかった労働者の復職しなかった理由
解雇等が無効との判決で終局したが労働者が復職しなかった事案(54人)において、復職しなかった理由(複数回答)は、「復職後の人間関係に懸念」が21人(38.9%)、「訴訟で争ううちに退職する気になった」が12人(22.2%)、「労働者の復職に対する使用者の拒否が強い」が11人(20.4%)となっている。
- 復職後不本意退職者の退職理由
解雇等が無効との判決で終局した後労働者が復職した事案(37人)において、復職後労働者が不本意に退職した理由(複数回答)は、「使用者からの嫌がらせ」が6人(16.2%)、「職場に居づらくなった」が3人(8.1%)となっている。
- 和解案の拒絶
判決で終局した労働者数185人中、判決までの過程で裁判所から和解案が示されたものの、和解案を拒絶したのは160人(86.5%)に上り、大部分の事案において裁判所からの和解提案を拒絶することによって判決に至っていることがわかる。そのうち、労働者側が拒絶したケースが72人(45.0%)、使用者側が拒絶したケースが34人(21.3%)、労使双方が拒絶したケースが54人(33.8%)となっている。
人 % 労働者数 160 100.0 労働者側が拒絶 72 45.0 使用者側が拒絶 34 21.3 双方が拒絶 54 33.8 - 労働者側が和解案を拒絶した理由
このうち、労働者側が和解案を拒絶した理由(拒絶した理由の回答があったもの(121人)。複数回答)としては、「合意退職の和解案だったが、労働者が復職を希望」が42人(34.7%)、「合意退職の和解案だったが、解決金額が低かった」が37人(30.6%)、「合意退職の和解案だったが、解雇無効を確信」が27人(22.3%)となっている。
- 使用者側が和解案を拒絶した理由
また、使用者側が和解案を拒絶した理由(拒絶した理由の回答があったもの(72人)。複数回答)としては、「合意退職の和解案だったが、使用者が金銭支払を希望せず」が14人(19.4%)、「地位確認の和解案だったが、使用者が復職を希望せず」が11人(15.3%)、「合意退職の和解案だったが、解決金額が高かった」が10人(13.9%)となっている。
政策的インプリケーション
労働政策審議会労働条件分科会における解雇無効時の金銭救済制度に関する審議の素材となる。
政策への貢献
令和6年5月、規制改革推進会議働き方・人への投資ワーキング・グループにおいて、厚生労働省より概要を報告。
本文
分割版
研究の区分
プロジェクト研究「多様な働き方とルールに関する研究」
サブテーマ「多様な/新たな働き方と労働法政策に関する研究」
研究期間
令和5~6年度
執筆担当者
- 濱口 桂一郎
- 労働政策研究・研修機構 研究所長
- 中村 良二
- 労働政策研究・研修機構 特任研究員(研究当時)
関連の研究成果
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