調査シリーズNo.245
副業者の就労に関する調査

2024年7月12日

概要

研究の目的

厚生労働省によって平成30年に、副業・兼業(以下「副業」という。)で働く人の労働時間管理や健康確保等の留意事項をまとめた「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が策定されるなど、副業を行うための環境整備が進められてきた。

副業のための環境整備が一定程度進んだことから、現在の副業をめぐる状況について、副業を行う労働者の割合や、労働者が実施する副業の形態、業種、副業を行う理由等を把握し、副業者の就労状況を確認するためのアンケート調査を実施した。

なお、本調査は厚生労働省労働基準局労働条件政策課の要請を受けて行った。

研究の方法

調査方法:
インターネット利用したWeb調査
調査対象:
調査会社が保有する全国の登録モニターのうち、モニター登録上の職種が「無職」の者を除く18歳~64歳の男女、159万8,770人。
調査実査期間:
令和4年10月3日~10月13日
有効回収数:
調査対象159万8,770人に調査回答依頼のメールを送信し、18万8,980人から有効回答を得た。有効回答率は11.8%である。このうち、スクリーニング設問で「仕事は2つ以上」と回答した1万1,358人を抜き出して「副業者」として集計している。また、スクリーニング設問で「仕事は1つだけ」と回答した「副業していない者」(「本業みの人」)についても、比較参考値として2,182サンプルを集計している。

主な事実発見

  • 仕事をしている人のうち、副業をしている人の割合は6.0%で、男性(5.1%)よりも女性(7.4%)で高い割合となっている(図表1)。

    図表1 仕事の数(男女別、年齢階級別、単位:%)

      n 仕事は1つだけ 仕事は2つ以上
    (副業をしている)
    188,980 94.0 6.0
    男性 115,397 94.9 5.1
    女性 73,583 92.6 7.4
    18~29才 11,580 94.2 5.8
    30~39才 28,599 93.6 6.4
    40~49才 53,432 93.6 6.4
    50~59才 71,077 94.5 5.5
    60~64才 24,292 93.8 6.2
  • 副業する理由(複数回答)は、「収入を増やしたいから」が54.5%でもっとも割合が高く、次いで「1つの仕事だけでは収入が少なくて、生活自体ができないから」(38.2%)、「自分が活躍できる場を広げたいから」(18.7%)などとなっている。これを本業の就業形態別にみると、「1つの仕事だけでは収入が少なくて、生活自体ができないから」の割合は「非正社員」が43.9%、「非雇用者」が38.9%、「正社員」が31.6%。

    図表2 副業する理由(複数回答、本業の就業形態別、単位:%)

    本業の就業形態 n 収入を増やしたいから

    1つの仕事だけでは収入が少なくて、
    生活自体ができないから

    自分が活躍できる場を広げたいから 時間のゆとりがあるから 様々な分野の人とつながりができるから ローンなど借金や負債を抱えているため 定年後に備えるため 仕事で必要な能力を活用・向上させるため 副業のほうが本当に好きな仕事だから 仕事を頼まれ、断りきれなかったから 独立したいから

    本業の仕事の性格上、別の仕事をもつことが
    自然だから(大学教員、研究者など)

    働くことができる時間に制約があり、
    1つの仕事で生活を営めるような収入を
    得られる仕事に就けなかったから

    転職したいから その他
    11,358 54.5 38.2 18.7 15.8 13.2 11.3 11.3 11.0 9.7 7.9 4.8 4.4 4.1 3.2 3.1
    正社員 4,327 59.1 31.6 20.2 13.7 14.9 14.9 15.6 12.8 10.7 7.3 7.0 4.6 1.9 4.7 3.1
    非正社員 4,657 53.2 43.9 15.4 17.2 10.5 9.5 9.1 7.7 10.0 7.1 3.1 2.0 6.1 2.7 2.7
    非雇用者 2,374 48.7 38.9 22.7 17.1 15.5 8.2 7.5 14.2 7.6 10.5 4.0 8.8 4.1 1.4 3.8
  • 副業をしている理由は新型コロナが「影響している」とする人の割合は34.7%だった。本業の業種別にみると、「宿泊業、飲食サービス業」(45.0%)がもっとも高く、以下「生活関連サービス業、娯楽業」(40.8%)、「建設業」(39.3%)、「製造業」(39.2%)、「運輸業、郵便業」(38.0%)、「その他のサービス業」(37.1%)などの順となっている。

    図表3 副業している理由には、新型コロナの流行が影響しているか(本業の業種別、単位:%)

    本業の業種 n 影響している 影響していない
    11,358 34.7 65.3
    農林漁業・鉱業 144 29.2 70.8
    建設業 491 39.3 60.7
    製造業 1,330 39.2 60.8
    電気・ガス・熱供給・水道業 129 28.7 71.3
    情報通信業 540 35.0 65.0
    運輸業、郵便業 684 38.0 62.0
    卸売業・小売業 1,321 34.9 65.1
    金融業・保険業 277 31.4 68.6
    不動産業、物品賃貸業 303 28.1 71.9
    学術研究、専門・技術サービス業 653 32.0 68.0
    宿泊業、飲食サービス業 742 45.0 55.0
    生活関連サービス業、娯楽業 754 40.8 59.2
    教育・学習支援業 1,008 27.3 72.7
    医療・福祉 1,584 27.9 72.1
    複合サービス事業 189 33.3 66.7
    その他のサービス業 852 37.1 62.9
    その他 357 31.9 68.1

政策への貢献

副業の現状を踏まえた政策を検討していくための基礎資料を提供した。厚生労働省の「労働基準関係法制研究会」および「過労死等防止対策推進協議会」の資料として活用された。

本文

分割版

研究の区分

プロジェクト研究「労働市場とセーフティネットに関する研究」
サブテーマ「格差・ウェルビーイング・セーフティネット・労働環境に関する研究」

研究期間

令和4~6年度

調査・執筆担当者

郡司 正人
労働政策研究・研修機構 リサーチフェロー
岩田 敏英
労働政策研究・研修機構 調査部主任調査員補佐

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