調査シリーズNo.225
自動化技術の普及による雇用の代替可能性に関する個人調査

2022年3月31日

概要

研究の目的

自動化確率の指標の精度を高めることを目的として実施された「自動化による職業リスク指標作成のための個人調査」のデータを記述的に分析した。この調査の特徴は、① 27,000強の個人からデータを収集しているため、OECD等の先行研究と同様に個人を単位とした自動化確率やタスクの分析が可能な点、② Frey and Osborne(2017)やAutor and Handel(2013)で用いられた質問項目を忠実に再現することで、それぞれの概念や定義に基づく分析と議論が可能となる点、③ PIAACデータでは考慮されていない雇用形態や役職、従業員規模、キャリアのタイプなどを調査することで、日本の雇用制度に即した分析を行うことができる点の3つである。

研究の方法

調査会社のモニター登録会員を対象にしたインターネット調査を実施。調査概要は、以下の通り。

  • 対象:就業者(全国の15~74歳。全業種、全職種を含む。自営業、家族従業者、アルバイト学生、就労ビザがある場合の外国人等含む。)
  • 期間:令和3年10月12日~10月31日
  • スクリーニング調査:2015年の『国勢調査』の分類に基づき、40産業×11職業に区分し、各セルの回収目標件数を60に設定。実査の中で、回収目標件数に満たないセルについては、職種間での回収数の調整を実施。
  • 回収数:27,287

主な事実発見

① Autor and Handelタスクと就業状況やキャリアの関係

Autor and Handel(2013)の定義に基づく4つのタスク(非定型分析タスク、非定型相互タスク、定型タスク、手仕事タスク)と就業状況等の関係を分析した。その結果、全体的には、就業状況やキャリア等と非定型分析タスク、非定型相互タスクとの関係は同様の傾向が、手仕事タスクはそれら2つとは反対の傾向が見られ、定型タスクは就業状況等とあまり関連がなかった。

非定型分析タスクや非定型相互タスクの平均値は、職業では専門・技術職、従業上の地位では正規雇用者や役員が高く、労務職や輸送・機械運転職、そして非正規雇用者が低い。また、役職の高さ、OJTなどの教育訓練期間、業務に求められるコンピュータ(PC)スキルや情報通信技術(ICT)の利用頻度と正の関連が見られた。また、非定型分析タスクは、勤務先の従業員規模や勤続年数との正相関が見られるという特徴がある一方、非定型相互タスクは販売職が高く、生産工程職が低いという特徴も見られた。

他方、手仕事タスクは労務職、生産工程職、生活衛生サービス職が高く、事務職や管理職は低い。非正規雇用者、中でもパート・アルバイトや家族従業者は、手仕事タスクの平均値が高く、民間企業の従業員規模や役職の高さ、自己啓発にかける時間、PCスキル、ICT等の利用頻度と負の相関が確認された。

② Frey and Osborne タスクと就業状況やキャリアの関係

Frey and Osborne(2017)の定義に即した3つのタスク(認知・操作タスク、創造性タスク、社会知性タスク)と就業状況等の関係を分析した。全体的には、創造性タスクと社会知性タスクは就業状況に対して同様の傾向を示していた。それらの平均値は、管理職や専門・技術職が高く、労務職、農林漁業関連職、輸送・機械運転職は低い。また、役員や正規雇用者の平均が相対的に高く、勤務先の従業員規模や役職、教育訓練期間、自己啓発にかける時間、PCスキルやICTの利用頻度と正相関が見られた。社会知性タスクは、勤続年数とのプラスの関連性も確認された。

他方、認知・操作タスクは生産工程職が高く、輸送・機械運転職や保安職、事務職が低い。また、役員や正規雇用者、自営業者、自由業者はこのタスクスコアが平均的に高く、非正規雇用者は低い。OJTの期間とタスクとの間に正の関連は確認されたものの、勤務先の従業員規模や勤続年数、役職、PCスキル等とは明確な関連性がなかった。

③ 自動化確率と就業状況やキャリアの関係

Nedelkoska and Quintini(2018)に準拠し、雇用の代替可能性を表す自動化確率を算出した上で、就業状況等との関係を分析した。その結果、自動化確率の平均値は46.7%、中央値は49.9%であり、低リスク(自動化確率30%未満)は全体の20.0%、高リスク(自動化確率70%以上)は10.0%を占めていた(図表1)。また、正規雇用者の自動化確率の分布は形状が比較的なだらかであるのに対して、非正規雇用者は、50%以上60%未満が占める比率が顕著に高く、非正規全体の4割弱を占めた。

自動化確率は、専門的・技術的知識を要する職業が平均的に低く、消費者向けの産業で働く販売職やサービス職、農林漁業関連職が高い。また、役員や正規雇用者は低く、非正規雇用者と自営業者、家族従業者は高い。特に正規雇用者に関して、勤務先の従業員規模や勤続年数、役職の高さと負の相関がある。また雇用形態に関わらず、OJT等の教育訓練期間や自己啓発にかける時間、PCスキルのレベル、ICT等の利用頻度ともマイナスの相関がある。

図表1  自動化確率の分布、平均値、中央値

図表1画像

④ タスクや自動化確率が収入に与える影響

Autor and HandelタスクやFrey and Osborneタスク、自動化確率と月収の関係を最小二乗法によって推定した結果、非定型分析タスクと非定型相互タスク、そして創造性タスクと社会知性タスクは収入にプラスの影響を及ぼしている。それに対して、定型タスクと手仕事タスク、そして認知・操作タスクは収入にマイナス方向に作用している。また、業務の自動化確率が高いほど、収入は低い(図表2)。

これらの関連性は、労働時間や個人属性、就業状況に関する変数を統計的に統制しても、強い影響力が残存する。すなわち、タスクや自動化確率は、収入に対して、就業状況等では説明できない独自の効果を持っているものと解釈できる。

図表2  自動化確率と収入に関する多変量解析(最小二乗法)

図表2画像

参考文献

Autor, D. H. & Handel, M.(2013) “Putting Tasks to the Test: Human Capital, Job Tasks, and Wages,” Journal of Labor Economics 31 (2), S59-S96.

Frey, C. B. & Osborne, M. A. (2017). “The future of employment: How susceptible are jobs to computerization?” Technological Forecasting & Social Change, 114, 254-280.

Nedelkoska, L. & Quintini, G. (2018) “Automation, skill use and training,” OECD Social, Employment and Migration Working Papers, No.202.

政策的インプリケーション

雇用の代替可能性(自動化確率)が70%以上の高リスク層が占める比率は全体の10.0%である点から、市場全体として、技術革新による雇用の喪失が生じる可能性は大きくない。また、タスクや自動化確率が、収入に対して就業状況や個人属性等では説明できない独自の効果を持っている点は、タスクに注目した転職・再就職支援や教育訓練が有効である可能性を示唆するものである。

政策への貢献

自動化技術の導入が働き方にもたらす影響を把握することで、労働力需給推計や転職・再就職支援に関する政策の基礎資料となることが期待される。

本文

研究の区分

プロジェクト研究「技術革新等に伴う雇用・労働の今後のあり方に関する研究」
サブテーマ「技術革新、生産性と今後の労働市場のあり方に関する研究」

研究期間

令和2~3年度

調査・執筆担当者

森山 智彦
労働政策研究・研修機構 研究員
高橋 陽子
労働政策研究・研修機構 副主任研究員
奥田 栄二
労働政策研究・研修機構 主任調査員

関連の研究成果

入手方法等

入手方法

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