調査シリーズNo.198
高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)

2020年3月31日

概要

研究の目的

日本は人口減少社会を迎えており、労働力を確保・維持するために、働く意欲と能力のある高年齢者が年齢を問わず働くことができる社会へと歩みを進めている。それを背景に、「一億総活躍プラン」及び「働き方改革実行計画」では、高齢者就業の実態を調査し、継続雇用延長・定年引き上げに係る制度のあり方を再検討することとされている。

当該検討を行うため、現行の高年齢者雇用安定法の下で、企業はどのように高年齢者の雇用管理を行っているか、どのような意向を持っているかを把握することが、本調査の目的である。高年齢者の雇用に関しては、厚生労働省『高年齢者の雇用状況』による実態把握も行われているが、この調査は雇用確保措置や定年制といった制度の把握に特化している。それに対して、本調査は高年齢者の雇用状況や雇用管理の実態、企業の意向について、継続雇用と中途採用を分け、さらに年齢層別(60代前半層、60代後半層、70代前半層)に詳細に尋ねている点が特徴である。また、2015年にも本調査とほぼ同様の質問紙を用いて調査を実施しており(以下「2015年調査」と記述。調査シリーズNo.156)、4年間の変化が把握できる点も本調査の特徴である。

研究の方法

常用労働者50人以上を雇用している企業20,000社(農林、漁業、鉱業、複合サービス業、公務は除く)を対象とするアンケート調査を実施し、結果の集計を行った。対象企業の抽出にあたっては、東京商工リサーチが保有する企業データベースに基づき、「経済センサス」(H26年基礎調査)の産業・従業員規模に合わせて比例割当層化無作為抽出法を用いた。実査は令和元年5月20日から6月30日にかけて郵送で行い、令和元年5月1日時点の状況について回答することとした。有効回収数は5891、有効回収率は29.5%である。

主な事実発見

定年制や継続雇用制度はほとんどすべての企業で設けられている。60代前半の継続雇用者の雇用形態は、「嘱託・契約社員」が57.9%、「正社員」が41.6%、「パート・アルバイト」が25.1%となっているが、2015年調査時と比べると、労働力不足の産業を中心に正社員継続雇用者の比率が若干増加している。正社員としての継続雇用率が高い産業では、定年前後の仕事が変わらないのに対して、嘱託・契約社員の継続雇用率が高い産業では、同一の仕事内容だが責任の重さが軽くなる傾向がある。また2015年調査時と比べると、定年前後の仕事内容が変わらないとする企業の比率が増加している。

65歳以降の高年齢者が希望すれば全員働くことができる企業は全体の21.8%、基準該当者が働くことができる企業は58.0%、働くことができない企業は17.3%である。運輸業や飲食業・宿泊業、医療・福祉、サービス業、建設業では希望者全員が働き続けられる企業の割合が高いのに対して、金融・保険業と情報通信業は半数以上の企業が希望の有無にかかわらず働けない。

また、65歳以降も働くことができる企業のうち、84.0%の企業は実際に雇用している。この割合は2015年調査時より若干高まっている。職種面では、専門・技術職を雇用している企業が45.5%を占めている。65歳以降の継続雇用の基準として多くの企業が挙げたのは、健康上支障がないことや働く意思・意欲があること、会社が提示する労働条件に合意できること、会社が提示する職務内容に合意できること、出勤率、勤務態度である。

60代後半層を対象とする雇用確保措置を実施または予定している企業は、全体の46.0%である。また、70歳以上対象の措置を実施・予定しているのは、そのうち56.6%である。雇用確保措置を実施する場合に必要となる取組みとして多く挙げられたのは、「継続雇用者の処遇改定」や「健康確保措置」、「全社的な人事制度・賃金制度の見直し」である。一方、雇用確保措置の予定がない企業は、「従業員の世代交代のため」、「病気や労災事故のリスクが高いため」、「一般的に引退時期と考える」といった理由で特段の措置を行わないとしていた。

以上より、高年齢者に対してある程度「多様な働き方」が提供されていると同時に、高年齢者を50代までとあまり変わらない戦力として位置づけている企業が増加していることが窺える。

図表1 定年前後での仕事の変化(業種別・従業員規模別、単位:%)

図表1画像

政策的インプリケーション

働く意欲と能力のある高年齢者が年齢を問わず働くことができる仕組みを構築するためには、専門的スキルの養成と労働需要に応じたマッチング機能を高めること、及び健康面のリスクを抑え、企業に対する雇用への動機づけを高めることが有効だと考えられる。

政策への貢献

  • 高齢者雇用に関する政策の企画立案、実施等に当たっての基礎資料となることが期待される。
  • 労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会で結果の一部(速報値)を資料配付。

本文

全文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。

研究の区分

研究期間

平成30年度~令和元年度

執筆担当者

森山 智彦
労働政策研究・研修機構研究員
山岸 諒己
労働政策研究・研修機構アシスタントフェロー

Adobe Readerのダウンロード新しいウィンドウ PDF形式のファイルをご覧になるためにはAdobe Readerが必要です。バナーのリンク先から最新版をダウンロードしてご利用ください(無償)。Adobe Readerをダウンロードしても、PDFファイルが正常に表示されない場合は「閲覧に必要なソフトウェアについて」をご覧ください。