調査シリーズ No.132
採用・配置・昇進とポジティブ・アクションに関する調査結果

平成27年5月15日

※データを精査したこと等に伴い、平成26年10月14日に公表した<速報版>から数値及び表記の見直しを行ったものである。

概要

研究の目的

女性の管理職登用の促進に有効と考えられるポジティブ・アクションへの取り組みの実態と背景を明らかにするため、以下の点を明らかにすることを目的とする。

  1. 男女を偏って配置する職場がある企業割合、その増減と理由。
  2. 男女中途採用者の管理職登用の状況。
  3. 女性の活用指標についての実績公表、目標設定・公表の状況。
  4. 再雇用・中途採用・正社員転換制度の導入状況。      等

研究の方法

企業6,000社に対するアンケート調査。

<アンケート調査の詳細>

対象は、民間信用調査会社所有の企業データベースを母集団とし、平成21年経済センサス基礎調査の構成比に基づき、産業・規模別に層化無作為抽出した全国の従業員10人以上の企業6,000社。平成26年8月12日~25日(4月1日時点の状況を把握)に実査し、1,528社(25.5%)から有効回答を得た。

主な事実発見

  1. 女性社員の妊娠・出産時までの就業継続の状況を正社員、非正社員の別にみると、正社員では「出産後も働き続ける女性が大多数だ」(40.2%)が最も多く、次いで「出産後も働き続ける女性はほとんどいない」(29.1%)の順である。非正社員では「出産後も働き続ける女性はほとんどいない」(44.0%)、「出産後も働き続ける女性が大多数だ」(28.0%)と順番は入れ替わるが、正社員、非正社員ともに働き続ける女性が「大多数」か「ほとんどいない」かに二極分化している状況がみられる。

    図表1 女性社員の妊娠・出産時の就業継続の状況

    図表1画像

  2. 2014(平成26)年春の新規学卒採用者のうち女性は40.1%で、うち総合職等(管理職以上への登用の途が広く開かれている採用区分(注1))についてみると女性は38.1%であった。大卒者に限ってみると、総合職等採用者に占める女性の割合は39.2%であり、現在の管理職等(課長相当職以上)に占める女性の割合(10.7%)を上回っている。常用労働者数100人以上企業に限ってみると、総合職等採用者に占める女性の割合は39.7%であった(100人以上企業での課長相当職以上に占める女性の割合は5.2%)。

    (注1)コース別雇用管理制度を導入していない企業を含む。また、転居を伴う転勤がない又は一定地域内のみの転勤があるいわゆる「地域限定型」の総合職等を含んでいる。

    図表2 2014年春卒業の新規学卒採用者の女性の割合

    図表2画像

  3. 部門ごとに男女の配置の状況を見ると、いずれの職場にも男女とも1割を超えて配置している企業が多い部門は「人事・総務・経理」、「調査・広報」、「企画」で、約6割の企業が男女とも1割を超えて(バランスよく)配置している部門である。一方、男女とも1割を超えて配置している企業割合が低い部門は「生産(建設、運輸、物流を含む)」、「販売・サービス」、「営業」で、約7割の企業が男女どちらかを9割以上(偏って)配置している部門となっている。

    女性が9割以上配置されている職場がある企業は「人事・総務・経理」、「販売・サービス」で比較的多く、「人事・総務・経理」では男性が9割以上の職場がある企業割合よりも高い、女性が偏って配置されやすい部門となっている。また、「販売・サービス」は男性が9割以上の職場がある企業も約4割あり、女性、男性それぞれが偏って配置される職場がある部門となっている。

    男性が9割以上の職場がある企業割合は、「生産」、「営業」で6割を超えており、「研究・開発・設計」でも5割を超えている。

    図表3 部門、配置状況別企業割合

    図表3画像

    最近5年間に女性の配置が拡大している部門としては「営業」(8.4%)、「人事・総務・経理」(7.4%)、「販売・サービス」(4.9%)の順で多く、「営業」部門は男性に偏った配置をする企業割合が高い一方で、女性の配置も進んでいる。

  4. 男女いずれかの配置が9割以上となっている職場の割合が5年前と比べて増えている企業割合、減っている企業割合はともに4.6%であった。

    「増えている企業」について、その理由(複数回答)をみると「業務の性格上いずれかの性に向いている職場が増えてきたため」(42.1%)、「男女がそれぞれ特性を活かした職場で活躍してもらうことが会社の方針であるため」(20.7%)、「採用数は特に絞り込んでいないが、採用者がいずれかの性に偏るようになったため」(20.0%)の順で多く挙げられている。

    一方、「減っている企業」では「採用数は特に増えていないが、採用者の男女バランスがとれてきたため」(43.8%)、「業務の性格上どちらの性でも能力が発揮できる職場が増えてきたため」(29.3%)、「採用数が増えたために、多くの職場に男女とも配置できるようになったため」(23.1%)が比較的多く挙げられている。

    図表4 男女いずれかの社員が9割以上を占める配置となっている「職場」の割合の増減

    ① 5年前に比べた増減

    図表4①画像

    ② 「増えている」理由

    図表4②画像

    ③ 「減っている」理由

    図表4③画像

  5. 係長相当職以上の役職について、女性の割合が30%未満のものがある企業について、その理由(複数回答)をみると、「管理職世代の女性(管理職登用の可能性のある職種)の採用が少なかった(30% 未満)」(24.0%)、「管理職世代の女性(管理職登用の可能性のある職種)の継続就業率が低く、管理職になる以前に辞めてしまっている」(18.8%)、「管理職世代の女性(管理職登用の可能性のある職種)の配置・育成が同世代の男性と異なっており、必要な知識・経験・判断力を有する女性が育っていない」(17.8%)といった「採用・育成・継続就業の課題」を回答する企業が多く、次いで「業務の難易度が増す。責任が重くなることを女性が望まない(時間外や夜間・休日の勤務によるものを除く)」(17.5%)であった。

    一方、「取引先・顧客等が、女性管理職を希望しない」(0.9%)、「全国転勤が求められるため女性が希望しない」(2.6%)などの理由は少ない。

    図表5-1 女性の割合が30%未満の役職がある理由

    図表5-1画像

    女性の割合が30%未満の役職がある理由として「管理職世代の女性(管理職登用の可能性のある職種)の採用が少なかった(30%未満)」、「管理職世代の女性(管理職登用の可能性のある職種)の配置・育成が同世代の男性と異なっており、必要な知識・経験・判断力を有する女性が育っていない」、「管理職世代の女性(管理職登用の可能性のある職種)の継続就業率が低く、管理職になる以前に辞めてしまっている」のいずれか(採用・育成・継続就業の課題)を選んだ企業について、管理職登用の可能性がある職種の管理職の手前(係長等)の世代の女性の採用・育成・継続就業の状況をみると、その世代においても「採用数が30%を下回っている(注2) 」(53.0%)、「配置・育成が同世代の男性と異なっており、必要な知識・経験・判断力を有する女性が育成されていない」(34.3%)、「継続就業率は依然として低く、もうじき管理職になる世代がのこっていない」(21.2%)とする企業がそうでない企業を上回っており、特に女性の採用者数が少ないことについて、係長世代においても課題は解消されていない。

    (注2)管理職の手前(係長等)の世代が学卒採用された当時の女性比率が30%を下回っていた企業。

    図表5-2 管理職の手前(係長等)の世代の女性(管理職登用の可能性のある職種)の採用・育成・継続就業状況

    図表5-2画像

  6. 最近5年間の課長相当職昇進者に占める中途採用者の割合は、男性で44.7%、女性では59.4%と、女性では中途採用された企業で昇進した者が学卒採用された企業で昇進した者より多い。

    最近5年間をさらに前の5年間と比較すると、学卒採用者、中途採用者、男性、女性いずれも昇進者が増えた企業割合が減った企業割合を上回る中で、男性中途採用者での増加、男性学卒採用者からの減少が比較的多く、女性については男性ほど昇進者数の変化がみられない。

    図表6-1 最近5年間の課長相当職昇進者(6~10年前との比較)

    図表6-1画像
    (創業10年以上の比較可能企業=100.0%)

    最近5年間の課長相当職昇進者について、昇進時の平均勤続年数は男性学卒採用者15.21年、男性中途採用者10.03年に対し、女性学卒採用者16.75年、女性中途採用者9.67年と、学卒採用者では女性の昇進の方が遅いが、中途採用者女性では男性に比べ短い勤続年数で昇進している。

    図表6-2 課長相当職昇進者の昇進時平均勤続年数

    図表6-2画像

  7. 女性の採用、登用、育児休業取得者割合等について実績を公表している企業割合は「採用者に占める女性割合」(4.7%)、「育児休業取得者の割合」と「所定外労働時間数」(2.8%)の順となっている。目標を設定している企業割合は実績を公表している企業割合を上回り、「所定外労働時間数」(7.1%)、「男女別の勤続年数」(4.7%)等となっているが、設定した目標を公表している企業割合は最も高い「育児休業取得者の割合」でも0.6%である。

    図表7-1 女性の採用、登用、育児休業取得者割合等の実績公表、目標設定・公表状況

    図表7-1画像

    実績を公表している媒体(複数回答)としては、「就職情報のサイト(リクナビ等)」(64.8%)が際だって多く、次いで「自社のホームページ」(23.2%)の順となっている。

    図表7-2 実績を公表している媒体

    図表7-2画像

  8. 女性の活躍推進に向けた4つの制度の導入状況についてみると、既に導入している割合が高い制度は「非正社員(パート等)として採用した女性を正社員へ転換する制度」(32.9%)で、次いで「(元社員にかかわらず)出産・子育て等で退職した女性を正社員として中途採用する制度」(22.5%)である。「出産・子育て等で退職した元社員の女性を正社員として再雇用する制度」(14.8%)は5年以上前から導入していた企業割合は8.4%と低いものの、最近5年間に導入した企業割合(6.4%)は「出産・子育て等で退職した元社員の女性を非正社員として再雇用する制度」(5.5%)よりも多く、最近、比較的導入が進んでいる制度である。

    図表8 女性の活躍推進のための制度導入状況

    図表8画像
    (注)無回答を除く

    制度について課題と考える項目(複数回答)としては、「給与等の処遇のあり方(勤続者とのバランス等)」(49.5%)、「能力に応じた配置・昇進」(33.5%)、「雇用後・転換後の仕事と家庭の両立支援」(28.2%)の順である。

政策的インプリケーション

  1. 管理職以上への登用の途が広く開かれている総合職等に採用される女性比率は100人以上企業で約40%である。女性の割合が30%未満の役職がある理由を見ると、「採用が少なかった」に次いで「管理職になる前に辞めてしまっている」が多いことから、女性の登用を促進するためには、女性労働者の継続就業と育成の支援が重要である。
  2. 5年前に比べて、男女いずれかの配置が9割以上の職場がある企業割合には大きな変化がみられない中で、男女比率が偏った職場が減っている理由として「採用者の男女バランスがとれてきた」こと、増えている理由として「採用者がいずれかの性に偏るようになった」ことが多く挙げられており、男女の職域拡大のためには両性をバランスよく採用するよう促していくことが有効と考えられる。
  3. 女性では中途採用されて課長相当職に登用される者も多いことから、「出産・子育て等で退職した元社員の女性を正社員として再雇用する制度」などによって採用した女性を育成、登用していくことも継続就業支援と併せて推進していく必要がある。
  4. 女性の活躍推進について、実績の公表をしている媒体は「就職情報のサイト」が多く、企業は募集・採用への効果を期待して取り組んでいると考えられる。目標を設定している企業に比べ、目標を公表している企業割合は少ないが、これについても募集・採用に有効であることを示していくことによって取組促進につながる可能性がある。

政策への貢献

厚生労働省労働政策審議会・雇用均等分科会において活用されるなど、女性の管理職の登用を図るための施策の検討資料となる。

本文

全文がスムーズに表示しない場合は下記からご参照をお願いします。

研究の区分

緊急調査

研究期間

平成26年度

執筆担当者

永田 有
労働政策研究・研修機構統括研究員
酒井 計史
労働政策研究・研修機構アシスタントフェロー

データ・アーカイブ

本調査のデータが収録されています(アーカイブNo.82)。

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