ディスカッションペーパー26-03
フランスにおける自営業者の職業能力開発法制

2026年3月25日

概要

研究の目的

フランスにおける自営的就労者を対象とする職業能力開発法制について、その位置づけおよび意義を明らかにし、ひいては日本の労働市場法政策への示唆を得る。

研究の方法

文献調査

主な事実発見

フランスにおける自営業者を対象とする職業能力開発制度については、当初、業種ごとに独自の法制度が整備されたが、現在において、自営業者が自らの職業能力開発のために活用しうる制度には、3つのアプローチが存在する。第一に、業種ごとの伝統的な訓練システムとして、職業訓練保険基金を通じた訓練制度が設けられており、この仕組みは現在においても重要な位置づけを維持している。ここでは、自営業者自らが支払う拠出金を主な財源として、業種ごとの共済的な仕組みが採られている点が特徴的である。第二に、職業訓練への普遍的かつ平等なアクセスの確保を目指す政策的潮流の中で、職業訓練個人口座の制度対象が自営業者に拡張された。従来、フランスにおける職業能力開発法制は、主として雇用労働者を中心に形成され、発展してきたが、近年ではそれを働く者全体に拡大ないし一般化する政策的方向性が志向されているといえる。そして第三に、プラットフォームワークに対する法規制の文脈において、就労促進を目的として、一定のプラットフォームに対する職業訓練拠出金の負担および上記口座への拠出が義務づけられた。このような法規制が設けられた背景には、プラットフォーム労働の発展を積極的に評価しつつ、とりわけ若年者のスキルや職業資格の向上の必要性に鑑み、職業能力開発へのアクセスを促進するねらいがある。このように、フランスにおいては自営的就労者を対象とする多様な能力開発制度が整備されている。さらに近年では、自営的就労を促進・支援する政策議論および立法が進んでおり、その中で職業訓練についても、とりわけ従来の伝統的な自営業者モデルとは異なる労働者を念頭に、スキルの維持・向上を支援する必要性が認識されている。

政策的インプリケーション

働き方の多様化や技術革新等が進む中で、キャリアにおける継続的な能力開発の必要性は就労形態を問わず認められるところ、フランスにおいては個人の置かれている状況や法的地位にかかわらず能力開発の機会を保障するような法政策が従来から実施されており、また近年も重要な展開がみられる。このようなフランスの事例に鑑み、日本においても、自営的就労者像と彼らのスキルニーズを適切に把握し、働き方に応じた保護制度を構築することが重要となる。また、制度の財源については、自営業者個人が負担する必要性も一方で認められるところ、いわゆる「雇用類似の働き方」の者や、注文者に対して弱い立場に置かれる者については、契約の相手方に一定程度の負担を課すことも検討に値する。

政策への貢献

厚生労働省による労働政策立案の際に参照されることが期待される。

本文

研究の区分

プロジェクト研究「多様な働き方とルールに関する研究」
サブテーマ「多様な/新たな働き方と労働法政策に関する研究」

研究期間

令和7年度

執筆担当者

岩堀 佳菜
研究員

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お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 お問合せフォーム新しいウィンドウ

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