ディスカッションペーパー 19-05
性的マイノリティの自殺・うつによる社会的損失の試算と非当事者との収入格差に関するサーベイ

2019年3月28日

概要

研究の目的

職場でのいじめ、ハラスメントを中心とした社会的困難の実態把握の一環として、セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントに加え、特定の差別事由に関連するハラスメント、具体的にはSOGIハラスメント(性的指向・性自認に関わるハラスメント)の被害を受ける可能性があるLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)を対象とした社会的困難の整理、およびそれに伴う社会的費用の試算を行うこと。

研究の方法

外部専門家によって構成される研究会において、LGBTの直面する社会的困難を整理する。その困難の費用推計に向けた先行研究のサーベイを実施し、とくに自殺・うつによる社会的損失に関する先行研究(金子・佐藤(2010))の成果を用いて、LGBTの自殺・うつによる社会的損失の簡易的な試算を行う。

なお、自殺・うつの社会的損失には、①自殺死亡による稼働所得の減少、②うつ病による自殺と休業による労災補償給付の増加、③うつ病による休業による賃金所得の減少、④うつ病がきっかけとなって失業することによる求職者給付の増加、⑤うつ病がきっかけとなって生活保護を受給することによる給付の増加および⑥うつ病による医療費の増加(国民医療費ベース)が含まれる。また、社会的損失は、金子・佐藤(2010)の自殺者・うつ患者1人当たり社会的損失額に、本研究で推計したLGBTの自殺者・うつ患者数を乗じて試算している。

主な推計・観察結果

  • LGBT人口比率(日本の人口に占めるLGBTの比率)や自殺率の想定によって幅はあるが、LGBTの自殺・うつによる社会的損失の試算値(暫定)は1,988~5,521億円(うち、差別などLGBT固有の社会的困難によるものは994~4,186億円)となった(図表)。
  • 海外の先行研究によれば、レズビアンの収入は異性愛女性より相対的に高く(レズビアンプレミアム)、ゲイ男性の収入は異性愛男性より低い傾向(ゲイペナルティ)があるが、その収入差は先行研究によってばらつきが大きいことが確認された。ただし、日本での研究事例はほぼなく、日本ではゲイ男性同様、レズビアンも異性愛女性より収入が低いという成果が存在する。

図表 LGBTの自殺・うつによる社会的損失の試算値(暫定)

図表画像

注:LGBT自殺率/非LGBT自殺率とは、LGBTと非LGBTの自殺率の相対比を指す。

政策的インプリケーション

LGBTの自殺やうつ対策や、これの一因となる職場のいじめ、ハラスメント対策を積極的に実施することで大きな経済的損失を回避できる可能性がある。

政策への貢献

LGBTに対するいじめ、ハラスメント等の国の政策的対応の根拠や企業の取り組みの動機になる。

本文

お知らせ
  • 本文の試算に用いた2017年の自殺者数21,302人は暫定値であったため、確定値21,321人に更新しました。 それにともなって、社会的損失額が1~4億円程度増えています。
    なお、HPに掲載の本文PDFファイルには、この更新が反映されています。(2019年4月24日)

研究の区分

プロジェクト研究「労使関係を中心とした労働条件決定システムに関する研究」
サブテーマ「集団的及び個別労使関係の実態に関する研究」

研究期間

平成30年度

研究担当者

内藤 忍
労働政策研究・研修機構 副主任研究員
中野 諭
労働政策研究・研修機構 副主任研究員

関連の研究成果

お問合せ先

内容について
研究調整部 研究調整課 03(5991)5104

※本論文は、執筆者個人の責任で発表するものであり、労働政策研究・研修機構としての見解を示すものではありません。

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