外国人労働者と社会統合:イギリス
域外の移民受入れの規制強化へ

移民の受入れに比較的寛大な姿勢を見せていたイギリス政府だが、流入増加を受け2005年以降欧州経済地域(EEA)外からの移民の受入れに対する規制を強める方向に政策を転換しようとしている。07年中にも新たな受入れ制度を開始する予定だ。新制度では入国を希望する移民を5段階に構造化し、受入れの審査には年齢、職歴、学歴などを点数化し、その合計点数に応じて可否を決定するポイント制が導入される。

受入れの状況

現在イギリスはどの位の規模で外国人労働者を受入れているのだろうか。05年のデータで見てみよう。国際間の流出入は1997年以降一貫して入国超過の傾向が続いており、05年は入国件数56万人、出国件数38万人で約18万人の入国超過となっている。流入を就労目的の入国資格の観点から見たのが図表1である。これを見ると就労目的の入国許可の発給件数約40万件のうち、約7万件が労働許可に基づくものである。さらにワーキングホリデー、各種の外国人労働者受入れ制度(高度技能移民プログラム(HSMP)(注1)、季節農業等労働者制度(SAWS)(注2)、業種別割当計画(SBS)(注3)、労働者登録制度(WRS)(注4)の受入れ数を加えると外国人労働者の流入規模(05年)はイギリスの全労働力人口の約1.3%となる。

新たな移民受入れ制度の概要(注5)

新たな受入れ制度は移民を5層に分類している(図表2)。第1層は従来HSMPで受入れてきた高度な技能を有する労働者(医師や金融専門家など)に相当する。この資格で入国した場合、一定の期間イギリス国内に滞在すれば永住権取得の機会が与えられる。第2層が労働許可の枠組みでの受入れに相当する。この資格で入国した場合、5年間の就労ののちに語学試験と市民資格試験に合格すれば家族とともに英国に定住することが認められる。

第3層はSAWSやSBSなどの制度の下で受入れてきた低熟練労働者に相当する。東欧諸国からの労働者によって低熟練労働の需要を充足できるとの観点から、この層で受け入れる労働者は、国内での人材不足が著しい特定職種に限り、数量を限定かつ短期間の受け入れになるとみられる。この資格で入国した場合、期間終了の段階で出国しなくてはならず、滞在する道は残されていない。また、家族の帯同や社会福祉給付の申請も許可されない。

また不法滞在者対策の強化が強く打ち出されており、第2層から第5層の移民を受入れる企業および教育機関に制度運用の監視者としての責任を求めると同時に、不法入国労働者を雇用した場合は2000ポンドの罰金を科す規定が盛り込まれた。この背景には移民増加に対するイギリス国民の不安の高まりがある。フランスでの暴動や05年7月に発生したロンドン地下鉄同時爆破テロ以降、移民の受入れ政策についての関心が高まっており、より厳格な管理制度を導入することによって世間の批判をかわしたいとの政府の意向がうかがえる。

資料出所:UK visas, Home Office, Work Permits の資料を基に作成


参考

2007年2月 フォーカス: 外国人労働者と社会統合

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