今後10年間の雇用増加率、3.5%に減速
―事務・製造などで減少、BLS予測
連邦労働省労働統計局(BLS)は8月27日、2025~35年の10年間に、米国において約590万人の雇用が増加するという予測を公表した(注1)。この間の雇用増加率は約3.5%で、2015~25年に記録した10.9%増の三分の一程度に減速する。とくにAI(人工知能)や自動化の普及により、事務や製造などの職種での減少が目立つ。一方、在宅医療・介護補助員など医療・介護関連職種は増える見通しで、建設や電気技師などAIや自動化による代替がただちには困難な職種の需要も底堅い。こうしたなか、職務経験の浅い若者の失業率が高まっており、手に職をつけるため、コミュニティカレッジなどでの職業教育への関心が高まっている。
AI普及・自動化の影響で減少する職業
BLSは、労働市場、マクロ経済、産業活動に関する各種統計データに基づき、全国の産業別、職業別の10年間の雇用予測を行っている。
今回発表した2025~35年の雇用予測によると、全米の雇用者数は2025年の約1億7,030万人から、2035年に約1億7,620万人へと約590万人(約3.5%)増加する。しかし、この伸び率はその前の10年間(2015-25年)に記録した約10.9%の三分の一程度にとどまる。
図表1は、今後10年間に雇用者数が減少する見通しの主な職種である(雇用者数の減少が大きい上位30職種を掲載)。レジ係が約20万人、カスタマーサービス担当者が約14万1,800人、それぞれ減少するほか、事務関連(一般事務員、経理・会計・監査事務員、給与・勤怠管理事務員)、製造関連(金属・プラスチックの 切断・パンチ・プレス機のセッター・オペレータ・監視員、縫製機オペレータなど)、秘書、出荷・受領・在庫係、データ入力係などの減り幅が大きい。
| 職業名 | 雇用者数 (2025年、千人) |
雇用者数 (2035年、千人) |
雇用者増加数 (2025-35年、千人) |
雇用者増加率 (2025-35年、%) |
| 全職業 | 170,280.8 | 176,198.5 | 5,917.6 | 3.5 |
| レジ係(Cashiers) | 3,106.3 | 2,905.7 | -200.6 | -6.5 |
| 一般事務員(Office clerks, general) | 2,600.0 | 2,443.7 | -156.2 | -6.0 |
| カスタマーサービス担当者(Customer service representatives) | 2,666.0 | 2,524.1 | -141.8 | -5.3 |
| 秘書・事務補佐(法律・医療・役員除く)Secretaries and administrative assistants, except legal, medical, and executive | 1,889.8 | 1,775.7 | -114.1 | -6.0 |
| 経理・会計・監査事務員(Bookkeeping, accounting, and auditing clerks) | 1,532.4 | 1,446.8 | -85.6 | -5.6 |
| 出入荷・在庫管理係(Shipping, receiving, and inventory clerks) | 827.7 | 765.0 | -62.8 | -7.6 |
| 小売・販売初級管理者(First-line supervisors of retail sales workers) | 1,419.8 | 1,367.4 | -52.5 | -3.7 |
| 銀行窓口係(Tellers) | 339.2 | 294.5 | -44.7 | -13.2 |
| データ入力係(Data entry keyers) | 131.8 | 98.2 | -33.6 | -25.5 |
| 矯正官・看守(Correctional officers and jailers) | 397.8 | 368.2 | -29.5 | -7.4 |
| 梱包作業員(手作業)(Packers and packagers, hand) | 555.5 | 528.0 | -27.5 | -5.0 |
| 調理作業員(Food preparation workers) | 908.5 | 881.3 | -27.2 | -3.0 |
| 農場・牧場・その他の農業管理者(Farmers, ranchers, and other agricultural managers) | 788.7 | 762.2 | -26.5 | -3.4 |
| コンピュータ・ユーザー・サポート専門家(Computer user support specialists) | 750.6 | 724.4 | -26.2 | -3.5 |
| 給与・勤怠管理事務員(Payroll and timekeeping clerks) | 159.6 | 134.3 | -25.4 | -15.9 |
| クレームアジャスター・保険鑑定士・保険調査官(Claims adjusters, examiners, and investigators) | 376.1 | 355.5 | -20.6 | -5.5 |
| 保育労働者(Childcare workers) | 1,010.3 | 990.4 | -19.9 | -2.0 |
| 金属・プラスチックの 切断・パンチ・プレス機のセッター、オペレータ、監視員(Cutting, punching, and press machine setters, operators, and tenders, metal and plastic) | 171.0 | 153.1 | -17.9 | -10.5 |
| 縫製機オペレータ(Sewing machine operators) | 117.2 | 99.5 | -17.7 | -15.1 |
| その他のオフィス・管理サポート労働者(Office and administrative support workers, all other) | 231.1 | 214.1 | -17.0 | -7.3 |
| 請求書・金融口座集金人(Bill and account collectors) | 160.2 | 143.4 | -16.7 | -10.4 |
| インタビュアー(資格・ローン審査除く)Interviewers, except eligibility and loan | 153.6 | 137.6 | -16.0 | -10.4 |
| 受付・案内係(Receptionists and information clerks) | 947.5 | 931.6 | -16.0 | -1.7 |
| コンピュータNC機器オペレータ(Computer numerically controlled tool operators) | 170.0 | 154.1 | -15.9 | -9.4 |
| 小売営業職(Retail salespersons) | 3,998.1 | 3,984.1 | -14.0 | -0.3 |
| ワープロ入力者・タイピスト(Word processors and typists) | 40.4 | 26.5 | -13.9 | -34.4 |
| 製造労働者支援職(Helpers--production workers) | 167.4 | 153.6 | -13.8 | -8.2 |
| 注文係(Order clerks) | 78.9 | 65.1 | -13.8 | -17.5 |
| ネットワーク・コンピュータシステム管理者(Network and computer systems administrators) | 323.6 | 310.4 | -13.2 | -4.1 |
| 作物・苗木・温室の農作業・一般作業(Farmworkers and laborers, crop, nursery, and greenhouse) | 546.8 | 533.6 | -13.2 | -2.4 |
出所:連邦労働省労働統計局ウェブサイト
図表1に掲載した以外に雇用減少率が高い職業として、電話オペレータ(Telephone operators、約27.6%・約1,000人減)、電話交換・応答オペレータ(Switchboard operators, including answering service、約26.0%・約9,200人減)、電話勧誘員(Telemarketers、約21.4%・約1万3,000人減)といった電話通信関係の職種などがあがっている。
これらの雇用が減少する要因について、BLSは「AIソフトウェアは、反復作業を自動化し、特定の作業を高速化するために活用できる」とし、「AIを含む自動化ツールのワークフローへの活用は、オフィスおよび事務サポート職の需要を減少させる可能性が高い」との見方を示す。事務関連の職種では、2025~35年に約4.0%(約75万2,100人)の雇用が減少すると予測されている。
また、eコマース(電子商取引)のさらなる成長と販売プロセスへのAIツールの導入が、販売およびその関連職種での雇用減少(1.4%減)に影響すると推測。さらに、製造業務における自動化機械・プロセスの継続的な導入が、生産関連職種全体の労働需要を0.4%減少させるとの見通しを示している。
医療・介護、情報、建設などで増加
一方、今後10年間に雇用者数が増加する見通しの上位30職種を図表2に示した。それによると、医療・介護関連(在宅医療・介護補助員、登録看護師、医療・保健サービス管理者、診療看護師、医療助手等)、情報関連専門職(ソフトウェア開発者、コンピュータ・情報システム管理者、データ・サイエンティスト等)での増加が目立つ。
| 職業名 | 雇用者数 (2025年、千人) |
雇用者数 (2035年、千人) |
雇用者増加数 (2025-35年、千人) |
雇用者増加率 (2025-35年、%) |
| 全職業 | 170,280.8 | 176,198.5 | 5,917.6 | 3.5 |
| 在宅医療・介護助手(Home health and personal care aides) | 4,677.1 | 5,524.4 | 847.3 | 18.1 |
| 在庫管理・注文対応係員(Stockers and order fillers) | 2,804.3 | 3,055.0 | 250.7 | 8.9 |
| ファストフード店カウンター係(Fast food and counter workers) | 3,855.9 | 4,079.1 | 223.3 | 5.8 |
| 正看護師(Registered nurses) | 3,465.4 | 3,660.1 | 194.7 | 5.6 |
| ゼネラル・オペレーション・マネジャー(General and operations managers) | 3,599.0 | 3,780.3 | 181.3 | 5.0 |
| ソフトウェア開発者(Software developers) | 1,717.8 | 1,892.6 | 174.7 | 10.2 |
| レストラン料理人(Cooks, restaurant) | 1,417.5 | 1,588.8 | 171.4 | 12.1 |
| 医療・保健サービス管理者(Medical and health services managers) | 640.4 | 795.5 | 155.1 | 24.2 |
| 診療看護師(Nurse practitioners) | 336.3 | 474.1 | 137.8 | 41.0 |
| 建設作業員(Construction laborers) | 1,489.3 | 1,598.6 | 109.3 | 7.3 |
| 経営アナリスト(Management analysts) | 1,077.1 | 1,186.3 | 109.2 | 10.1 |
| コンピュータ・情報システム管理者(Computer and information systems managers) | 685.8 | 793.9 | 108.1 | 15.8 |
| 医療助手(Medical assistants) | 833.9 | 941.5 | 107.6 | 12.9 |
| 薬物乱用・行動障害・メンタルヘルス・カウンセラー(Substance abuse, behavioral disorder, and mental health counselors) | 533.4 | 631.4 | 98.0 | 18.4 |
| データ・サイエンティスト(Data scientists) | 275.6 | 371.0 | 95.4 | 34.6 |
| ファイナンス・マネジャー(Financial managers) | 879.7 | 964.6 | 84.9 | 9.7 |
| 大型トラック・トレーラートラック運転士(Heavy and tractor-trailer truck drivers) | 2,221.2 | 2,305.0 | 83.8 | 3.8 |
| 産業機械整備士(Industrial machinery mechanics) | 446.9 | 526.6 | 79.7 | 17.8 |
| 会計士・監査人(Accountants and auditors) | 1,595.2 | 1,674.6 | 79.4 | 5.0 |
| 電気技師(Electricians) | 821.0 | 896.9 | 75.9 | 9.2 |
| プロジェクト管理専門家(Project management specialists) | 1,094.3 | 1,167.4 | 73.2 | 6.7 |
| 一般保守・修理作業員(Maintenance and repair workers, general) | 1,621.8 | 1,690.5 | 68.6 | 4.2 |
| 小型トラック運転士(Light truck drivers) | 1,068.5 | 1,136.4 | 67.8 | 6.3 |
| 食品調理・サービス初級管理者(First-line supervisors of food preparation and serving workers) | 1,236.4 | 1,303.5 | 67.1 | 5.4 |
| 市場調査アナリスト・マーケティング専門家(Market research analysts and marketing specialists) | 952.7 | 1,019.0 | 66.3 | 7.0 |
| その他のマネジャー(Managers, all other) | 1,338.8 | 1,404.4 | 65.6 | 4.9 |
| 人事スペシャリスト(Human resources specialists) | 939.7 | 999.7 | 60.1 | 6.4 |
| 造園工(Landscaping and groundskeeping workers) | 1,188.6 | 1,244.2 | 55.6 | 4.7 |
| 建設管理者(Construction managers) | 609.1 | 664.3 | 55.2 | 9.1 |
| 用務員・清掃員(メイド・家事清掃員を除く)(Janitors and cleaners, except maids and housekeeping cleaners) | 2,432.6 | 2,486.2 | 53.6 | 2.2 |
出所:連邦労働省労働統計局ウェブサイト
情報関連専門職の増加は、AIの開発・普及等に関連したものとみられる。BLSは「AIの普及が進むことで一部の職業の需要が増加すると予想される。しかし、これに関連する生産性向上は、他の雇用需要を抑制する可能性がある」と指摘している。
他方で、ファストフード・カウンター従業員やレストラン料理人などのサービス関連職種、トラック運転士、建設作業員、電気技師など、ただちにAIや自動化の代替が困難とみられる職種の雇用は、増える見込みとなっている。
なお、図表2に掲載した以外に、雇用増加率が高かった職業としては、クリーンエネルギー関連(太陽光発電設置者(Solar photovoltaic installers)で約36.5.%(約1万1,300人)増、風力タービンサービス技術者(Wind turbine service technicians)で約29.5%(約3,500人)増、医療専門職関連(理学療法士助手(Physical therapist assistants)で約23.0%(2万6,200人)増、精神科技術者(Psychiatric technicians)で約22.3%(約3万6,000人)増等がある。
また、労働安全衛生技術者(Occupational health and safety technicians)が約19.4%(約6,100人)増、労働安全衛生責任者(Occupational health and safety specialists)が約18.5%(約2万6,400人増)と高い伸び率を示している。
大卒者の高失業率と技術職志向
上述のように、BLS調査ではAIの普及等により、ホワイトカラーにおける事務作業、ブルーカラーにおける単純な手作業・操作・監視作業等が大幅に減少する見通しとなっている。このため、AI・自動化による代替がただちには困難な、手に職を持つブルーカラー技術職への就職を目指す若者らが増えてきているといわれる。
ニューヨーク連邦準備銀行が8月6日に公表したレポート(注2)によると、最近大学を卒業した者(22~27歳で学士号以上の学位を持つ者)の2026年5月の失業率は5.7%で、全年齢平均の4.1%を上回る。2010年代前半まで、前者の失業率は後者より低い状況にあったが、2020年のコロナ禍前後にほぼ同水準となり、近年は前者の失業率が高い傾向になっている。また、同連銀の別のレポート(注3)によると、コロナ禍でのリモートワークの普及によって、管理者が新入社員の研修や指導を行うことが難しくなり、勤務経験、職業経験が浅く、低スキルの若者の採用に消極的になっている可能性がある。
こうしたなか、米国各地で職業教育を担う2年制大学であるコミュニティ・カレッジで学ぶ者が近年増えている。米国の高等教育進学の動向に関する情報を提供している「全国学生クリアリングハウス(National Student Clearinghouse)」によると、2026年春のコミュニティカレッジの在籍者数は581万4,280人で前年同期に比べ3.1%(17万2,620人)増加。公立4年制大学在籍者数(751万8,770人)の伸び率1.1%(8万3,435人)を上回っており(図表3)(注4)、職業教育への関心の高まりの一端を示しているとみられる。
図表3:高等教育在籍者数の対前年同期伸び率(2022~26年各春) (単位:%)

出所:全国学生クリアリングハウスウェブサイト
注
- 連邦労働省労働統計局ウェブサイト(Employment Projections: 2025-2035 Summary
)参照。(本文へ) - ニューヨーク連邦準備銀行ウェブサイト(Unemployment Rates for Recent College Graduates versus Other Groups
)参照。(本文へ) - ニューヨーク連邦準備銀行ウェブサイト(Remote Work Leaves Younger Workers Sidelined
)参照。(本文へ) - 全国学生クリアリングハウス(National Student Clearinghouse)ウェブサイト(Clearinghouse Enrollment Insights Series:Final Spring Enrollment Trends
)参照。(本文へ)
参考資料
- アクシオス、ウォールストリート・ジャーナル、全国学生クリアリングハウス、ニューヨーク連邦準備銀行、連邦労働省労働統計局(BLS)、各ウェブサイト
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