転職時における企業年金口座の移換手続きを統一・簡素化

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  • 国別労働トピック:2026年9月

中国人的資源・社会保障部は7月、「企業年金個人口座移換・継続規程(暫定)」(以下、「規程」)(注1)を公表した。転職などに伴う企業年金の個人口座の移換について、全国共通のオンライン申請窓口と統一的な事務手続きを整備する。また、複数の企業年金口座を一つに集約することも可能にし、労働移動に伴う手続きの簡素化と加入者の権益保護を図る。2027年1月1日から施行される。

企業年金は公的年金を補完する「第2の柱」

中国における企業年金は、企業と従業員が基本年金に加入したうえで、任意に設ける補足的な年金制度である。中国の多層的な年金制度において、基本年金に次ぐ「第2の柱」に位置づけられている。企業や社会団体、基金会(財団)、民間非営利組織など、都市部従業員基本年金に加入する組織と従業員がその制度を設けることができる。1991年に多層的な年金制度の基本的な枠組みが示されて以降、地方での試行や関連規定の制定を経て、企業年金制度の整備が段階的に進められてきた。(図表1

図表1:中国における企業年金制度発展の流れ
段階 時期 主な動き
制度枠組みの形成 1991年 国務院が「企業従業員年金保険制度改革に関する決定」を公布し、基本年金保険、企業補足年金保険、従業員個人貯蓄型年金保険を組み合わせた多層的な制度の基本枠組みを示す。
模索段階 1991~1994年 大連市などが企業補足年金保険に関する地方規定を制定し、一部の地域や企業が制度の試行に取り組む。
1995年 国務院が企業補足年金保険の基本的な制度枠組みを明確化。
発展段階 2000年 国務院が「都市部社会保障制度の整備に関する試行方案」を公布。遼寧省で企業年金制度の試行を開始。
2004年 労働社会保障部(当時)が「企業年金試行弁法」を公布。
制度整備段階 2017年 人的資源・社会保障部が「企業年金弁法」を公布し、制度をさらに整備。
2026年 人的資源・社会保障部などが「企業年金工作のさらなる推進に関する意見」を公布。各種企業に加え、社会団体、基金会(財団)、民間非営利組織などに対象を拡大。

出所:中国政府サイトなどより作成

現在の企業年金の仕組みについて、企業の拠出額は従業員の賃金総額の8%以内、企業と従業員の拠出額の合計は同12%以内としている。具体的な割合は、企業と従業員の協議によって決定する。加入者は、国が定める定年年齢に達した場合や、労働能力を完全に失った場合、海外に移住する場合に企業年金を受給できる。加入者または受給者が死亡した場合は、受益者が個人口座の残高を相続できる。受給方法は、毎月、複数回または一括での受け取りのいずれかを選択できるほか、個人口座の資金を民間の年金保険商品の購入に充てることもできる。受給時には、「給与・賃金所得」として個人所得税を納める。

人的資源・社会保障部社会保険基金監督管理局の発表によると(注2)、2026年第1四半期時点で、企業年金を導入している企業は18万6,000社、加入者は3,389万人に達し、積立金は4兆2,800億元に迫った。企業にとっては、人材の確保・定着や税優遇措置など給与面でのインセンティブ強化につながり、従業員にとっては、退職後の所得源を増やし、老後の保障を高める効果が期待される。

企業年金の資産は受託機関によって保管されるため、従業員が離職や転職をしても、それまでに確定した権益が失われることはない。ただし、従来は加入している企業年金プランや受託機関が異なる場合、口座移換の手続きが複雑であった。転職を重ねるなかで複数の口座が形成され、長期間利用されないまま残るケースもあった。

全国共通のオンライン窓口から申請可能に

「規程」は、従業員の企業年金個人口座を、異なる企業年金制度間、または同一の共同企業年金制度に加入する異なる企業間で移管する際の事務手続きに適用される。

従業員は、国家社会保険公共サービスプラットフォームなどの全国共通オンラインサービスを通じて、企業年金個人口座の移管を申請する。企業年金の法人受託機関および理事会(以下「受託機関」)は、「年金保険第2の柱情報プラットフォーム」を通じて、申請の受理や情報の連携を行うとともに、従業員からの相談に対応する(図表2)。

転職先の企業年金に加入している場合、従業員は転職先の個人口座を集約先に指定し、オンラインで移換を申請する。転職先の受託機関(新受託機関)は、申請受理後5営業日以内に転職先へ通知するとともに、旧勤務先の受託機関(旧受託機関)へ所定の「連絡票」を送付する。

旧受託機関は、連絡票の受領後15営業日以内に、旧勤務先に企業拠出分と運用収益の権利帰属割合および移換額を確認したうえで、資金を指定口座へ移し、「口座移換情報票」を新受託機関へ送付する。すでに権利帰属の処理が完了している場合は、旧勤務先への確認を省略できる。

新受託機関は、移換情報の受領後15営業日以内に、移換資金を転職先の個人口座へ入金し、情報プラットフォームと転職先企業に手続きの完了を通知する。従業員が複数の企業年金個人口座を持っている場合は、各旧受託機関へ個別に連絡票を送り、それぞれ移換手続きを行う。

これにより、手続きは「従業員がオンラインで申請し、受託機関が情報プラットフォームを通じて情報と資金を移す」仕組みに統一される。従業員が旧勤務先や各受託機関を個別に訪れる必要がなくなり、オンラインで手続きを進められるようになる。

図表2:企業年金個人口座の移換手続き
画像:図表2

出所:「企業年金個人口座移換・継続規程(暫定)」より作成

転職先に企業年金がない場合でも個人口座を集約

転職先が企業年金制度を設けていない場合や、従業員が転職先の企業年金に加入しておらず、それまでの勤務において複数の企業年金口座を所持している場合、それらの企業年金個人口座を一つに集約できる 。

保留口座(退職後も積立金が管理されている企業年金口座)を一つ以上持っている場合は、その中から一つを集約先として選び、当該口座を管理する受託機関に移換を申請し、ほかの口座の残高をその口座にまとめる。

保留口座を持っていない場合は、企業年金の受給要件を満たした時点で、最後の企業年金個人口座を管理する受託機関に移換を申請する。ほかの口座の残高を当該口座にまとめたうえで、その口座に対応する旧勤務先を通じて受給手続きを行う。

このほか、企業年金口座を別の受託機関へ一括して移す場合や、離職者の企業年金口座を保留口座へまとめて移す場合、窓口などで手続きをすることができる。

個人拠出分と帰属済みの企業拠出分を移換項目に

移換項目には、加入者本人の拠出金、すでに本人への帰属が確定した企業拠出金、および企業年金口座に移された職業年金(政府機関などの職員を対象とする年金制度)が含まれる。これらに対応する運用収益や、企業年金の拠出金に関する課税情報も併せて引き継がれる。

なお、口座の権益帰属をめぐる争いなどにより移換を完了できない場合、旧受託機関はその理由を情報プラットフォームに報告し、手続きを一時停止する。問題解決後、加入者は改めて移換を申請できる。

また、すでに企業年金を受給している退職者は、ほかの企業年金個人口座の資金を、受給中の口座へ移して一つにまとめることができる。

参考文献

  • 中国人的資源・社会保障部、新華網、工人日報、中国就業網

参考レート

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