農業所得は今後10年で9%増を予測、高齢化や新規参入に課題
 ―OECD・FAO報告書

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  • 国別労働トピック:2026年8月

経済協力開発機構(OECD)と国連食糧農業機関(FAO)は6月29日、「農業見通し2026-2035: (Agricultural Outlook 2026-2035)」を公表した。全世界における農業従事者一人当たりの所得は2035年までに9%増加すると予測する。しかし、危機や紛争による市場の変動リスクは大きく、市場へのショックが続けば減少に転ずる可能性もあるとする。また、農業従事者の高齢化や新規参入の課題を指摘し、農業への新規参入を促すには、技術革新による農業セクターの収益向上が鍵だとしている。

農業・漁業生産はアジア・サハラ以南アフリカを中心に13%増加

報告書は、世界の農業・漁業の今後10年間の中期見通しについて分析している。比較的安定した状況のもとでは、世界の農業・漁業生産は、生産性向上と生産の集約化により、今後10年間で13%増加すると予測する。増加はアジア、サハラ以南アフリカ、ラテンアメリカに集中している。

世界の穀物生産は着実に増加しており、2035年までに過去最高の32億2,000万トンに達すると予測。主に生産性向上の牽引により、収穫量は年間0.9%増加する。また、2035年までに、全穀物の40%を人間が直接消費し、34%は動物飼料となると推計。小麦と米は引き続き主に食料として、トウモロコシは主に飼料穀物と見込んでいる。

世界の漁業および養殖業も、2035年までに11%の増加を予測している。養殖業が総生産の56%を占め、成長を牽引する。アジアは依然として水産物の需要・供給増の原動力だが、世界最大の養殖生産国である中国の増加は緩やかになると見込む。

農業所得は2035年までに9%増を予測も、「所得国階層別格差」は大きい

報告書によると、農業生産は、原材料コストの上昇や農産物価格の安定という状況にあり、世界の一人当たりの平均農業所得は、2035年には9%上昇すると予測している(図表1)。この増加は、一人当たり3,800米ドルに相当する。

しかし、近年立て続けに危機や紛争、気候変動が発生し市場を脅かしている。特に、最近のエネルギー価格の高騰と、それに伴う肥料使用量の減少は、農業生産に大きな影響を及ぼす可能性が高い。もしこの高い頻度でショックが続くと仮定すると、2035年の農業所得は、25%の確率で現在の水準よりも低くなると推計している(25パーセンタイル)。

図表1: 所得国階層別にみた一人当たり農業所得 (2023-2025年を1とした場合)
画像:図表1

出所:OECD-FAO(2026)より

ただし、農業所得額は国によって非常に大きな格差がある(図表2)。

各国の実際の所得額を所得階層国別にみると、高所得国(北米、西ヨーロッパ、オセアニア)は2023-2025年時点で平均約2万1,000米ドル強を稼いでおり、2035年には約2万2,150米ドルに達すると予測する。高所得国では高度に機械化された生産システムを導入し、広大な土地を耕作しており、労働力投入が比較的少なく生産性が非常に高い。

図表2:所得国階層別にみた一人当たり農業所得額 (単位:米ドル)
画像:図表2

出所:OECD-FAO(2026)より

中所得国(ラテンアメリカ、東欧、東アジアおよび中央アジアの多くの国)では、労働集約型の農業から、より商業化された資本集約型の生産技術に移行する過渡期にある。高中所得国の所得額は、2023-2025年の約5,600米ドルから2035年には約6,700米ドルへ、低中所得国では同2,090米ドルから2,710米ドルへ、それぞれ増加を予測する。

低所得国(サハラ以南アフリカおよび南アジア)の平均収入は、現在約930米ドルにすぎない。2035年までに1,100米ドルに増加すると見込んでいる。低所得国は、労働集約型で機械化が限られた小規模な自給農業で、輸送インフラの不足や貯蔵施設の不備、技術格差、市場へのアクセス制限、主食作物や大規模な家畜への依存など、多くの構造的な課題を抱えている。農家が貧困から脱し、食料安全保障と栄養を確保するためには、労働生産性の向上や代替雇用機会の提供、市場アクセスの改善など、インフラや技術への包括的な投資が喫緊の課題だと指摘している。

高齢化への対応と新規参入の促進

報告書はまた、世界の農業人口の高齢化とその対策についても分析している。

農業従事者の55歳以上比率をみると、2000年から2023年にかけて、ほとんどの国で上昇している(図表3)。日本は7割程度でほぼ変わらないが、韓国は60%弱から80%強へと2割以上増加している。

図表3:高齢化する各国の農業人口(55歳以上割合・2000年及び2023年)
画像:図表3

注:青線(2000年)、オレンジ(2023年) 

出所:OECD-FAO(2026)より

新規就農者は、新しい技術やシステムを活用する傾向が高く、農業が直面する課題の克服につながりやすい。そして、新たな労働者を誘致するには、技術革新による生産性向上で、農家の収入とセクターの収益性を向上させることが鍵だと説く。

そのため、財政支援にとどまらず、土地や融資、助言サービスへのアクセスの円滑化、農業研修や教育の推進、支援ネットワークやメンタリングの育成、行政上の負担軽減などを、各国政府等が講ずべき政策として挙げる。

また、農業や農家への支援にとどまらず、教育や社会、税制、年金、労働政策を含む総合的な政策が必要だと指摘する。

「食料安全保障のため農業のレジリエンス強化を」

OECDのマティアス・コーマン事務総長は、農業食料システム(Agrifood systems)は様々な圧力を受け、農家はエネルギーと肥料の価格上昇という困難に直面していることを指摘し、「農業食料システムのレジリエンス(回復力)こそが私たちの食料安全保障である。それを守るには、ショックに対する手厚い支援、生産性への持続的な投資、そして開かれた健全なグローバル市場が必要だ」と強調した。

また、FAOのク・ドンギュ(屈冬玉)事務局長も「多様な貿易ルート、重要な農業資材の地域備蓄、強靭なインフラ、そして多様なエネルギーミックスに投資し石油依存を軽減できれば、脆弱性を備えへと転換し、一時的な混乱による食料安全保障危機を回避できる」と訴えた。

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