「包括賃金制」誤用・濫用防止ガイドラインを策定
 ―雇用労働部、「無料労働」根絶に向け

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2026年7月

雇用労働部は2026年4月、「無料労働根絶のための包括賃金誤用・濫用防止指導指針」を施行した。長時間労働やサービス残業の原因となっている賃金支給上の慣行「包括賃金制」について、固定残業代制以外の基本給や諸手当をあらかじめ明確に算定・区分しない方式を是正することや、実労働時間の算定が難しい場合、「事業場外労働のみなし労働時間制度」や裁量労働制等を活用することなどを求めている。

「包括賃金制」とは

 勤労基準法は、使用者が労働者と基本給を決定し、それに基づき実労働時間に応じて時間外労働などに相当する法定手当を算定し支給するよう定めている。しかし判例により、業務の性質などを考慮して例外的に「包括賃金制」が認められてきた(注1)。包括賃金制とは、算定の利便性や人件費の予測可能性を高めるためといった理由から、あらかじめ基本給や諸手当を算定せずに時間外などの法定手当を含めた額を支給したり、毎月一定額を諸手当として支給する賃金支給方法である。

包括賃金制には、基本給と諸手当を区別せずに支給する「定額給制」や、基本手当と諸手当に分かれている「定額手当制」、法定手当の全部または一部を手当ごとに定額で支給する「固定OT制(固定残業代制)(注2)」がある。例えば月収が100万ウォンの場合、定額給制では、基本給・時間外手当・深夜手当・休日手当を含む賃金として100万ウォンを支給する。定額手当制では、基本給が70万ウォン、法定手当総額として30万ウォンを支給する(いずれも各種手当ごとの小計額は区分しない)。

長時間労働の一因として問題視

 政府は長時間労働の根絶に向けて取り組んでいる。韓国の総労働時間は2024年時点では1,859時間であるが、これを2030年までにOECD平均である1,700時間台まで削減することを目標に、政労使及び専門家で構成された「実労働時間短縮ロードマップ推進団」を2025年9月に設置した。

 同団は、長時間労働とサービス残業の主な原因として、包括賃金制を挙げている。雇用労働部はこの結果を踏まえ、包括賃金制が労働者に不利益な職場慣行として残っている状況に対して、誤用・濫用を防ぐために、2026年4月「無料労働根絶のための包括賃金誤用・濫用防止指導指針」を施行した。

各手当を区分して支給する義務を明示

指針は、使用者が遵守しなければならない基本原則を示している。

 使用者は、労働者が時間外労働、深夜労働、休日労働をした場合には、実労働時間に基づいて法定手当を算定・支給しなければならない。そのために、労働者個人ごとに労働日数、労働時間、基本給、各種手当を区分して記載した賃金台帳を作成しなければならず、給与明細にも基本給や各種手当などを項目ごとに区分して記載しなければならない。

 実労働時間の算定が難しいといった理由で包括賃金制を利用してきた事業所に対しては、既存の勤労基準法に定められている特例制度を活用することを推奨している。事業場外労働のみなし労働時間制度(出張などにより労働時間の全部または一部を事業所外で労働し、労働時間の算定が困難な場合に、労使合意により定めた所定労働時間などを労働時間として認定する制度)や、裁量労働時間制などである。

また、年次有給休暇手当(退職時の未消化年休に対して支給する手当)(注3)や退職金(注4)を賃金の一部として支給することを禁止する。年次有給休暇手当をあらかじめ支給することは労働者の年次有給休暇を取得する権利を実質的に制約するおそれがあるためであり、退職金をあらかじめ支給することは退職後の生計保証という制度の趣旨に反するためである。

監督強化と事業所への支援を実施

 包括賃金制の契約を締結している場合でも、契約内容が実労働時間に基づく時間外などの手当に満たない場合には、使用者は差額分を支給しなければならない。本指針は、使用者が差額を支給しない場合には賃金滞納に該当するとして厳重に処理する方針を示した。特に、定額給(基本給と諸手当を区別しない方式)の労働契約に対しては、基本給と法定手当の算定を行うよう是正措置を講じる方針である。また、正確な労働時間の記録と管理のために、使用者が賃金台帳及び給与明細を作成しているかを必ず確認するとしている。

 雇用労働部は、改善の意思がある事業所に対しては、コンサルティングサービスや、民間人事労務プラットフォームを導入する小規模企業への支援事業(注5)などを提供し、支援する方針である。また、労働者からの匿名申告センターを運用し、申告のあった事業所については監督対象に含める考えである。

参考資料

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