外国人季節労働プログラム、受入れ過程の透明化などが課題に
韓国労働研究院(KLI)は2026年6月、報告書「外国人季節労働者プログラムの現況と争点」を発表した。それによると、農業や漁業分野の人手不足に対応するための「外国人季節労働者プログラム」は2015年の制度導入から約10年が経過し、受入れ規模は増加傾向にある。地方自治体が主体となる受入れ過程では、非公式な民間仲介業者の介入などが指摘されており、その透明化が課題となっている。
受入れ規模は増加傾向
「外国人季節労働者プログラム」とは、農業及び漁業分野の人手不足に対応するための短期外国人労働者受入れ制度である(注1)。2025年時点では、全国133の基礎地方自治体(市・郡など)で運営されている。
季節労働者の受入れ数は年々増加傾向にあり、2022年には上半期1万1,550人、下半期7,388人であったが、2026年の受入れ規模は10万9,100人に達した。
季節労働者プログラムの受入れ方式は二種類に分かれている。①韓国の地方自治体と送出し国の地方自治体が業務協約(MOU)を締結する方式と、②結婚移民の親族を招待する方式、である。また季節労働者の雇用形式は、①農家が直接雇用する「農家型」と、②農協などと季節労働者が雇用契約を締結し、農家に請負方式で労務を提供する「公共型」がある。
季節労働者の在留資格には、以前は3か月までの短期就労資格が用いられていたが、現在は季節労働者専用の在留資格として「季節勤労(E-8)」が新設されている。この在留資格では、最長8か月の滞在が可能である。
自治体が受入れ業務を担当
外国人季節労働者プログラムでは、基礎自治体(市・郡など)が送出し自治体の選定、農家の需要調査、外国人労働者の選抜と受入れ、在留管理など多くの業務を担う。まず、地方自治体は、季節労働者をMOU方式と結婚移民親族招待方式のどちらで実施するかを決定する。そして、外国人労働者を受け入れる前に韓国人に対して求人情報を掲載する(労働市場テストの実施)。また、プログラムに参加する農家を対象に需要調査を進める。その後、法務部の協議会が割当人数を決定してから、季節労働者の受入れ過程を進める。
現在は、季節労働者の受入れ制度としてはMOU方式が広く利用されている。MOUの締結方法には、①既存のMOUの範囲を季節労働者まで拡大する方式と、②ブローカーが仲介する方式がある。ブローカーはいわゆる移住ビジネスを行っており、MOUの締結や季節労働者の受入れ、在留管理といった自治体の業務を非公式に代行する。ブローカーは韓国の自治体職員を訪問し営業を行っているという。
基礎自治体では、身長体重や性別、年齢などの応募条件を送出し国の自治体に送付し、送出し国の自治体が候補者を募集する。韓国の地方自治体は、割当数から結婚移民親族紹介方式の人数を除いた枠について面接を行う。面接は、自治体職員や農協職員が送出し国を訪問して行うことが一般的である。面接では、志望者の健康状態などを確認する。面接合格者は、必要な書類手続きの後、順次入国する。
受入れ過程が不透明との指摘も
このプログラムは、農業分野の季節的な労働需要と人件費の高騰に対して、弾力的かつ比較的低い賃金で雇用できる外国人季節労働者の受入れが効果的であるとして評価されている。一方で、同制度には懸念点も多い。
まず、2015年の制度開始時から、10年間法的根拠が曖昧な状態で運営されていた点が挙げられる。だが、2025年7月の出入国管理法改正により季節勤労プログラムに関する内容が追加され、現在は法整備が進められている。
次に、労働者の選抜と受入れ過程が透明化されていない点が挙げられる。現在の制度では、ブローカーが介入する余地がある。人権団体などはこれが賃金支払いの滞納や人身売買などにつながると批判している(注2)。
また、農家型と公共型によって待遇に差が生じる点が挙げられる。農家が労働者を直接雇用する農家型では、労働者が労災保険や健康保険といった社会保障の適用範囲外に置かれるおそれがある(注3)。
さらに、短期滞在資格であることから、外国人低熟練労働者の代表的な受入れ制度である「雇用許可制」によって入国する労働者と比較して、選抜過程で韓国語能力が問われず、教育が不十分であることも指摘されている。
労働者保護が不十分
受入れの現場では次のような問題が生じている。まず、上述のように、在留期間が短く、労働者の熟練が期待できない点が挙げられる。次に、季節労働者は韓国語能力を問われないことから、雇用主と労働者の間にコミュニケーションの問題が生じやすい。また、最低賃金が上昇傾向にあることと、農産物価格の変動が大きいことから、特に農家型では賃金支払いの滞納が生じるおそれがある。さらに、雇用主の制度への理解度が低く、労働者の権利が適切に保護されない事例が生じている。
注
- 2023年時点での国籍別入国者数は、ベトナム52%、フィリピン29%、ラオス8%の順である。
韓国移民研究院「季節労働者行政統計の理解と推移分析(2021~2023)
」(2024年5月)(本文へ) - 2026年3月より、季節労働者の入国や教育、在留支援などの行政業務の支援を行うために「地方季節労働専門機関」が設置されることとなった。ブローカーが自治体の業務を非公式に支援している状況に対して、専門機関がこの役割を行い、運営費用は自治体が負担するようにする制度である。
法務部の指定を受けた農漁業雇用人材支援センターが専門機関となる。本報告書によれば、人権団体などは、この新たな仕組みでも、民間企業が指定を受け、ブローカーになりうると批判している。ただし、指定を受けるためには自治体の長が法務部に候補者を推薦する必要があり、この際に国または自治体から運営経費を十分に支援されている組織が推薦対象となることから、民間組織の乱立は生じにくいとみられる。 (本文へ) - 制度導入当初は農家型のみであり、2022年から公共型が開始された。2025年より、自治体出資機関や農業法人などが外国人季節労働者を雇用し、請負方式で農家に労務を提供する方式が新設された。(本文へ)
参考図表
図表:季節勤労(E-8)在留人数 (単位:人)

出所:韓国労働研究院「季節労働者規模の傾向と地理的分布の特性」
参考資料
- 韓国労働研究院「外国季節勤労者プログラムの現況と争点
」(2026年6月10日) - 韓国労働研究院「外国人力の季節的需要と供給―外国人季節勤労者プログラムの争点と課題
」(2025年12月31日) - 韓国労働研究院「季節労働者規模の傾向と地理的分布の特性
」 (2026年6月10日) - 農民新聞「季節労働専門機関指定に向けた手続きが大詰めを迎えた
」(2026年3月10日) - 法務部「「季節勤労専門機関の指定基準及び指定手続きなどに関する告示」制定案行政予告
」(2026年3月3日)
2026年7月 韓国の記事一覧
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