従業員医療保険の個人口座の「親族共同利用」が全国で可能に

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  • 国別労働トピック:2026年7月

中国国家医療保障局は6月5日、「従業員基本医療保険個人口座の省を越えた共同利用運用規程(試行)」(以下:「規程」)を公表した(注1)。従業員基本医療保険の個人口座資金について、省を越えて家族・親族と共同利用できることや、共同利用限度額、利用方法、決済手続きなどを具体的に示している。

「共同利用制度」を拡充

「省を越えた共同利用」とは、従業員基本医療保険の加入者が専用アプリを利用し、異なる省に住む家族・親族と個人口座資金を共同利用できる制度である。従来は医療保険制度が省単位で運営されていたため、省を越えて個人口座の共同利用はできなかった。

従業員基本医療保険個人口座の共同利用制度は2021年に導入された。国務院が公表した「従業員基本医療保険における外来診療共同利用保障制度の整備・充実に関する指導意見」では、個人口座の資金を指定医療機関や指定薬局で生じる自己負担分の支払いに充てることを認めるとともに、利用対象を従来の本人から配偶者、父母、子女へと拡大した。

これにより、医療保険個人口座の資金を家族間で共同利用することが可能となった。その後、2024年には、国務院弁公庁「基本医療保険の持続的な加入促進メカニズムの整備・充実に関する指導意見」により、共同利用の対象範囲が「配偶者、父母、子女」から「家族・親族」へと拡充した。地域制限も、省内に限られていたものから、省を越えての利用が可能となった。

2025年6月末時点では、江蘇省、北京市、河北省など30省・337地域において、個人口座の「省を越えた共同利用」が試行されていた。その後、2026年1月9日、国家医療保障局と財政部は「従業員基本医療保険個人口座の省を越えた共同利用の推進に関する通知」を公表した。同通知は、従来は省内に限られていた個人口座の共同利用について、地域の制約を取り払い、家族間の相互扶助機能を強化することで、全国で利用できる仕組みとする方針を示した。これを受けて、国家医療保障局が6月5日、「規程」を公表し、省を越えた共同利用の対象範囲、利用方法、決済手続きなど、具体的な運用方法を定めた。

「共同利用」の設定方法

「規程」では、共同利用の適用対象を従業員基本医療保険加入者(共同利用人)の家族・親族に限定しており、共同利用を受ける側(被共同利用人)についても、従業員基本医療保険または都市・農村部基本医療保険の加入者であることを条件としている。対象となる家族・親族は、配偶者、父母、子女、兄弟姉妹、祖父母・外祖父母、孫・外孫である。

共同利用の仕組みは次のとおりである。まず、共同利用人が家族・親族との間で「共同利用関係」を設定する。一人の共同利用人が複数の被共同利用人と共同利用関係を結ぶことができるほか、一人の被共同利用人が複数の共同利用人から共同利用を受けることも認められている。また、共同利用人と被共同利用人はいずれも共同利用関係を解除することができる。共同利用人または被共同利用人の医療保険資格が終了した場合や、医療保険の利用人が、統括地域を越えて移転した場合(注2)には、システムが共同利用関係を自動的に解除する。

従業員医療保険の加入者は、国家医療保険サービスプラットフォームアプリや各省の医療保険サービスプラットフォーム、加入地の医療保険窓口などを通じて、共同利用関係の設定・解除を行うことができる。「全国統一の医療保険情報プラットフォーム」上に「個人医保ウォレット(個人医保財布)」を設け、従業員基本医療保険の個人口座資金の一部を家族・親族と共同利用できる仕組みにしている。

共同利用額の管理

「規程」は、共同利用額の設定や利用、解除などの管理方法を定めている。共同利用人は、個人医保ウォレットを通じて被共同利用人の利用可能額を設定する。設定した資金は共同利用者本人が利用することはできず、被共同利用人が受け取った資金を第三者へ再び共同利用することも認められない。

国家医療保険サービスプラットフォームアプリや各省の医療保険サービスプラットフォーム、医療保険窓口などを通じて共同利用関係を設定・解除し、共同利用関係や共同利用額に関する情報を全国統一の医療保険情報プラットフォームを介して双方の加入地で共有する。また、共同利用額の利用実績についても全国統一の医療保険情報プラットフォームで管理される。各省(地域)は実情に応じて、共同利用額の移転回数や上限額、個人口座と医療保険ウォレットの支払い順序を定めることができる。

共同利用関係を解除した場合、未使用の共同利用額を共同利用人の個人口座へ自動的に返還する。解除後に医療費の返金が発生した場合は、原則として元の支払経路を通じて返還されるが、共同利用人の加入状況の変更などにより返還できない場合は、共同利用関係を設定した際の加入地が規定に基づき処理する。

利用対象となる費用は、指定医療機関での診療に伴う自己負担医療費のほか、指定小売薬局で購入した対象医薬品、医療機器、医療用消耗品に係る自己負担分である。さらに、都市・農村住民基本医療保険および長期介護保険の個人負担保険料についても、共同利用枠を利用して全額納付することが認められる。

例えば、都市部で従業員基本医療保険に加入する労働者が、離れて暮らす家族・親族の指定医療機関での自己負担医療費や指定薬局での医薬品購入費、さらには都市・農村住民基本医療保険や長期介護保険の個人負担保険料を労働者自身の個人口座資金から支払えるようになるため、地方の家族・親族の医療費負担を軽減できる。

前払金制度と照合作業

決済管理については、前払金制度や照合作業などの運用ルールを定めた。共同利用資金は、省を越えた居住地以外での受診に係る直接精算制度と同様に前払金方式で管理し、迅速な決済・精算を行う。また、被共同利用人が他地域で受診した際の医療費は、現行の居住地以外での受診に係る直接精算制度に基づいて決済する。さらに、国家医療保険情報プラットフォームは毎日照合データを作成し、共同利用人の加入地、被共同利用人の加入地、および国家医療保険情報プラットフォームの三者で日次・月次の照合(確認)作業を実施する。不一致が生じた場合は、省級医療保険経営機関が原因を調査し、必要に応じて国家医療保険部門が調整を行う。

今回の措置により、従業員基本医療保険の個人口座残高は全国で省を越えて家族・親族と共同利用できるようになることが明確になった。国家医療保障局は、これまで十分に活用されていなかった個人口座資金の有効活用が進むことで、資金の利用率向上や医療費負担の効率化や軽減につながるとの見方を示している。

参考文献

  • 国家医療保障局、新華網、中国社会保障学会、光明日報

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