AI普及でも人間の業務は維持、職務再編の可能性を指摘
―KLIレポート
韓国労働研究院(KLI)は2026年4月、報告書「AI普及と労働市場転換の課題」を発表した。2025年実施のAI(人工知能)に関する企業及び労働者調査の結果をまとめたものである(注1)。これによると、AI活用企業では、AIの普及によって全面的な雇用の代替が生じるというよりも、人間による業務は維持されつつ、職務の再編が起きる可能性を認識していた。KLIは、韓国でのAIへの転換は技術の普及速度に比べて社会的な整備が十分ではなく、雇用転換のための管理とガバナンスの整備、代替リスクのある職種の労働者のリスキリングなどが必要になると述べている。以下で報告書の概要を紹介する。
AI活用企業が7割、労働者はときどき使用
AIまたはAIロボットを活用する企業は70.9%であり、反対にこれらの技術を活用していない企業の割合は29.1%であった(図1)。地域別にみると、未活用企業の割合は、首都圏では21.8%であるのに対して、首都圏以外では46.9%であり、地域格差がみられる。業種別にみると、製造業よりも、それ以外の業種でAIの活用が進んでいる。企業規模が大きくなるほどAIが活用される傾向にあり、未活用企業の割合は300人未満の企業では59.0%にのぼる一方で、1,000人以上の企業では9.4%に過ぎない。
図1:企業のAI及びAIロボットの活用状況

出所:KLI(2026)
一方、労働者のAI使用頻度をみると、「月1回以下」の使用が18.2%で最も多く、次いで「月2~3回」と「週2~3回」がともに18.0%、「まったく使わない」が11.4%、「週4~5回」が10.9%、「毎日使う」が9.8%の順となった。特に高齢者、非正規職、低学歴労働者でAIを使用しない人の割合が高い傾向にあり、AIが一般的な業務ツールとして定着する段階にはまだ達していないとみられる。
AI活用企業は未活用企業よりも慎重に評価
企業に対して、業務生産性、人件費の削減、労働者の安全と健康にAIが及ぼす影響を尋ねると、図2のような結果となった。AI活用企業と未活用企業の回答は全体的に類似しているが、未活用企業の方がより高く肯定的に評価していた。一方、活用企業では、「影響なし」という回答も相当な割合を占める。未活用企業は期待を込めて評価している反面、活用企業は実際の制約や限界を認識した上で慎重に評価したものとみられる。
図2:AIが企業経営に与える影響についての認識

出所:KLI(2026)
AIは雇用の縮小と創出を同時にもたらす
次に、企業を対象にAIが今後の労働市場にもたらす変化について尋ねたところ、図3のような結果となった。企業はAIの普及について、労働市場に構造的変化をもたらす要因として認識していた。ただし、AI活用経験の有無によって認識に違いがあり、未活用企業が雇用の減少と業務代替可能性を高く評価する一方で、活用企業は雇用の全面的な代替にはより慎重な態度を見せ、人間固有の業務の持続可能性に高い同意を示した。また、多くの企業が「新たな職種の創出」や「採用過程でのAI活用能力の重視」、「労働者教育の必要性」に同意していることから、AI転換が雇用の減少と創出を同時にもたらすものとして認識されていることが明らかとなった。
図3:AI・AIロボットの導入による今後の労働市場変化の認識(同意すると回答した企業の割合)

出所:KLI(2026)
AIリテラシーの認識は企業より労働者で低い
AIリテラシーに関する質問への回答は図4のようになった。企業と労働者のいずれも、労働者(労働者への調査では自分自身)にある程度のAIリテラシーが形成されているが、十分ではないという回答も相当な割合を占めている。企業の評価よりも労働者の評価が比較的低いという点は、現場での体感が期待ほど高くない可能性を示唆している。
図4:AIリテラシーについての認識

出所:KLI(2026)を基に作成
必要な政策は、「代替リスクのある職種の労働者への雇用」のリスキリング
AI技術の普及に対応するために必要な政策についても調査したところ、企業と労働者のいずれも最も重要な課題として、「代替雇用(AIに代替される職種の労働者)のための職務転換再教育」を挙げた(図5)。続いて、企業は「AIリテラシー向上のための生涯学習の強化」を挙げる一方、労働者は「技術導入過程における労働者の参加の機会の保障」をより重要視していた。これは、能力開発だけではなく、雇用セーフティネットの拡充や労働者参加機会の保障といった労働市場の転換に対応する政策までが、AI対策として必要とされていることを示している。
図5:AI・AIロボットの活用拡散に必要な政策

出所:KLI(2026)を基に作成
注
- 企業調査の回答数は110件、労働者調査の回答数は3,227件。(本文へ)
参考資料
- 韓国労働研究院「AI普及と労働市場転換の課題
」(2026年4月10日)
2026年6月 韓国の記事一覧
- 高齢者介護サービスの人材確保策などを提言 ―韓国開発研究院報告
- 公共部門の非正規職待遇改善対策を発表
- AI普及でも人間の業務は維持、職務再編の可能性を指摘 ―KLIレポート
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