高年齢労働者の権利保護に関する初の規定を公表
 ―人的資源・社会保障部など

カテゴリー:高齢者雇用

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  • 国別労働トピック:2026年6月

高年齢労働者(法定退職年齢を超えた労働者)の就労時の権利保護を目的として、人的資源・社会保障部など政府の関係5部門は5月25日、「高年齢労働者の基本的権利保障に関する暫定規定」(以下:「暫定規定」)(注1)を発表した。高年齢労働者の権利・義務を明確化するとともに、職務提供、賃金、休息・休暇、労働安全衛生、労災補償などの基本的な権利の保護を定めている。7月1日に施行する予定。

増え続ける高年齢労働者と権利保護の課題

中国における「高年齢労働者」とは、法定退職年齢を超えて雇用され、労働管理を受けつつ有償労働に従事する労働者を指す。早期退職後に再雇用された労働者も含む。従来の法定退職年齢は男性60歳、女性幹部55歳、女性労働者50歳だったが、2025年から段階的な定年延長政策を実施しており、実際の退職年齢は徐々に引き上げられている。近年、高年齢労働者は増加しており、その中には継続雇用の技術者や業界の専門家がいる一方で、警備、清掃、家事サービスなどに従事する労働者も含まれている。中国労働学会の研究によれば、2024年末時点で中国の高年齢労働者数は約1億1564万人に達したと推計されている(注2)

しかし、高年齢労働者の就業状況は厳しく、権利保護に関しても多様な制度的・現実的課題が存在している。賃金の未払い、強制残業、労災補償の拒否、恣意的な解雇など、現場で働いている高年齢労働者の権利を侵害する問題が頻発している。そのうえ、関連する法律が整備されていないため、高年齢労働者に対する救済の手段を十分に得られない状況にある。今回の暫定規定では、高年齢労働者の基本的な権利保護についても具体的に定められた。

書面で権利・義務を明確化

高年齢労働者と雇用主双方の権利・義務を明確にするため、暫定規定では、雇用主に対し、高年齢労働者との間で書面での雇用契約(用工協議)を締結することを求めている。雇用契約には、契約期間、業務内容、勤務地、労働時間、休息・休暇、労働報酬、社会保険、労働者保護、労働条件、職業上の危険防止措置などを明記しなければならない。また、双方の合意があれば、契約内容を変更できるとした。

さらに、雇用関係が終了する条件を定めた。具体的には、①契約期間満了や業務の完了時に、雇用関係が終了する。②双方があらかじめ定めた終了条件が発生した場合や、双方の合意により雇用契約を解除した場合には、雇用関係を終了できる、ことを明確化した。

また、高年齢労働者を適材適所での業務に従事させるため、その知識や技能、経験を活かせる適切な職務に配置するよう求めた。あわせて、就労を希望する高年齢労働者に対する就業支援を強化し、人材サービス機関による職業紹介や雇用サービスの充実を図る方針を示した。

労働報酬から労災補償までの保護措置

暫定規定は、高年齢労働者の基本的な労働権利について労働報酬、休息・休暇、労働安全衛生、労災補償など具体的な保護措置を定めた。主な内容は以下のとおりである。

表:「暫定規定」による基本的な労働権利に関する主な保護内容
労働報酬
  • 月1回以上、賃金を通貨で適時かつ全額支払う。
  • 賃金額や算定基準、支払周期・時期・方法を雇用契約で明確化する。
  • 賃金水準が最低賃金基準を下回らない。
休息・休暇
  • 法定労働時間制度および祝祭日に関する休暇規定を適用。
  • 原則として時間外労働を行わせず、必要がある場合は労働法の規定に従う。
労働安全衛生
  • 身体状況に応じた適切な職務や労働強度を設定する。
  • 安全生産・職業衛生に関する教育・研修を実施する。
労災補償
  • 国の規定に基づき労災保険などへ加入させる。
  • 労災保険料は雇用主が負担する。
  • 就労中の事故や職業上のリスクに対する保障を確保する。

このように、高年齢労働者に対する基本的な労働権利の保護基準を明確に示した点に特徴がある。特に、高年齢労働者を労災保険制度の対象に含め、労災保険料を雇用主が負担する仕組みを明確化したことで、就労中の事故に対する保障の強化や労災補償へのアクセス改善が期待される。

社会保険の継続利用

社会保険については、高年齢労働者が就労を継続しながらも、公的年金や医療保険の給付を引き続き受けられることを明確にした。これにより、退職後も働き続ける高年齢労働者が、就労を理由として既存の社会保障給付を失わないことを示した。

また、社会保険料の納付期間や納付額不足などにより、公的年金や退職者向け医療保険の給付を受けていない人については、本人が引き続き年金保険や医療保険に加入して保険料を納付できるようにする。そのほか、雇用主と本人の合意があれば、雇用主が保険料を納付することも可能とし、その場合の本人負担分については、雇用主が給与から差し引いて納付するとした。

あわせて、社会保険運営機関に対しては、手続きの簡素化や業務プロセスの効率化を進め、高年齢労働者と雇用主の双方が社会保険制度を円滑に利用できるよう、利便性の高いサービスを提供することを求めた。

労働紛争の処理

暫定規定では、高年齢労働者の権利侵害が発生した場合の紛争解決手続きについても明確化した。労働報酬・休暇・労災など暫定規定で定められた事項の争議は「労働争議調停仲裁法」に基づき、調停または仲裁を経て、必要に応じて人民法院(裁判所)に提訴できる。それ以外の争議は直接人民法院に提訴できる。

人的資源・社会保障部の行政機関は、調停・仲裁機関の受理範囲の統一、法適用の規範化およびサービス水準の向上を指導し、高年齢労働者の権利救済を法に基づき支援する。

暫定規定の施行により、高年齢労働者がより安心して働ける環境の整備が進むことが期待される。中国では少子高齢化の進展を背景に、定年後も継続して働くことが徐々に一般的になりつつある。一方で、高年齢労働者が安心して働き続けるためには、企業側による雇用体制の整備に加え、高年齢労働者の権利保護を重視する社会全体的な意識改革も必要となるだろう。

参考文献

  • 中国人的資源・社会保障部、新華網、中国日報網

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