法定最低賃金(SMIC)、6月1日に時給12.31ユーロへ引き上げ
―低所得者向け支援も実施
アメリカ・イスラエルによるイラン攻撃の影響を受けた物価高騰に伴い、消費者物価に連動して改定される法定最低賃金(SMIC)(注1)が2026年6月1日に時給12.02ユーロから12.31ユーロに引き上げられることになった(注2)。前回2026年1月1日の改定の際に基準となった2025年11月時点から、消費者物価の上昇が2%以上となったための引き上げである。年の途中での引き上げは、2024年11月以来である。
エネルギーや石油製品の価格上昇が影響
国立統計経済研究所(INSEE)が5月13日に発表した2026年4月の消費者物価は、中東紛争に伴うエネルギー価格、特に原油由来製品の価格急騰が要因となり、発表前から予想されていた通り上昇し、前年同月比で2.2%の上昇となった(注3)。とりわけエネルギー価格は、この1年間で急激に上昇。2026年3月には前年同月比で7.4%、4月には14.3%それぞれ上昇した。4月の前月比での上昇率は4.7%だった。また、石油製品価格も大幅に上昇しており、3月には前年同月比で18.1%、4月には同31.4%と上昇が加速した。
SMICは、消費者物価上昇が前回の引き上げ時点から2%を超えると、その上昇分が自動的に引き上げられる。前回2026年1月1日の引き上げの際に基準となった2025年11月時点から、消費者物価の上昇が2%以上となったことを受け、2.41%引き上げられることになった。
今回のSMICの引き上げの趣旨について、ファランドゥ労働大臣は、「景気刺激策ではなく、フランスの社会保障制度と連動した最低賃金の機械的な再評価に過ぎない」と強調した(注4)。
労使の反応
労働総同盟(CGT)は、「今回の2.4%の最賃引き上げはボーナスではなく、最低賃金労働者の生活水準を維持するための措置に過ぎない」と主張した上で、物価上昇率に連動した賃上げに加え、「5%の賃上げ」を要求している(注5)。関連する要求項目として、(1)SMICの段階的な引き上げによる、最終的に月額2,200ユーロ(税引き前)までの引き上げ、(2)すべての賃金の物価連動制、(3)協約最賃がSMICを下回る業種に対する制裁措置の即時実施などを求めている。なお、政府の裁量でSMICが物価上昇を上回る率で引き上げられたのは、オランド大統領(当時)の就任直後の2012年7月まで遡る。
その一方で、経営者団体(MEDEF)は、SMIC引き上げに伴って、賃金に係る雇用主負担の社会保障料の減額措置を求めていたが、関連する予算措置が図られないこととなり、経営者にとって二重の負担を強いられると非難している(注6)。
CGTが要求事項(3)で述べているのは、協約最賃がSMICの引き上げに追いつかずSMICの水準を下回る協約最賃が増加することを懸念しているためである。CGTのビネ事務局長は、6月1日にSMICが引き上げられると、これを下回る協約最賃の業種が全体の80%になるとしている(注7)。この割合に関しては、労働省とCGTで見解が異なる。ただし、労働省の集計によると、4月末時点で、民間企業の「178業種のうち4分の1」が最低賃金を下回る協約最賃の水準を定めている。一方で、CGTの集計では4月初めの時点で「230業種のうち76業種」、つまり3分の1にあたる業種がSMICを下回っている。SMICが引き上げられればその数はさらに増えることになるため、CGTは懸念を示している。
低所得者向けの給付も
SMIC引き上げ以外にも、5月~7月にかけて、低所得労働者約300万人を対象として購買力を支援するためのいくつかの具体的な措置が実施される(注8)。5月27日から長距離通勤者向けの支援が行われるほか、7月1日から低賃金労働者を支援する活動手当(prime d’activité)の個人特別手当の支給額が平均で月額約50ユーロ増額されることになった。
中東紛争による燃料費高騰の影響を緩和するため、一定の条件を満たす自家用車による長距離通勤者や業務目的での車両使用者(注9)に対して、燃料費を支援するプログラムを導入し、100ユーロの補助金が支給されることになった(注10)。支援金額は当初50ユーロとされていたが、5月21日、100ユーロ相当と倍増することが発表された(注11)。この補助金は、収入や業務目的で使用する自家用車の所有などの条件を満たせば、3カ月間の平均燃料消費量に対して1リットルあたり20ユーロセント(0.2ユーロ)相当が支給されるというものである(注12)。
また、活動手当の個人特別手当は、世帯内で就労している者を対象として、それぞれの月収(過去3カ月間の平均)に応じて変動する特別手当を受給する制度であり、平均月額賃金が709.18ユーロを超える場合に支給される(注13)。給付額は賃金水準に応じて増加し、例えば平均賃金が下限の709.18ユーロの場合、26.29ユーロだが、1,658.76ユーロを超える場合には240.63ユーロとなる。個人特別手当の平均給付額は月額184ユーロで、今回の措置により55ユーロの増額となる。このため、低所得労働者約300万人に対して平均して239ユーロが支給されることになる(注14)。
注
- SMICとは、Salaire minimum interprofessionnel de croissance(業種間一律スライド制最低賃金)の略称。(本文へ)
- 労働省ウェブサイト(Revalorisation du SMIC au 1er juin 2026, Communiqué de presse
, Publié le 13/05/2026)参照。(本文へ) - En avril 2026, les prix à la consommation augmentent de 2,2 % sur un an, Indice des prix à la consommation - résultats définitifs (IPC) - avril 2026
, Informations rapides, No 115, Paru le : 13/05/2026.(本文へ) - Le Smic va augmenter de 2,4% le 1er juin, sans coup de pouce
, france24, Publié le : 13/05/2026.(本文へ) - CGTウェブサイト(Inflation, énergie... Le gouvernement doit augmenter le SMIC et indexer les salaires sur les prix
, Publié le 13 Mai. 2026)参照。(本文へ) - Malgré le coup de pression des patrons, le gouvernement refuse d'augmenter les allègements de charge
, par Solina Prak, Journaliste, capital, publié le 22 mai 2026.(本文へ) - Smic : La CGT pousse pour rouvrir les négociations de salaire « partout »
20 Minutes avec AFP, Publié le 22/05/2026.(本文へ) - 労働省ウェブサイト(Revalorisation du SMIC au 1er juin 2026, Communiqué de presse
, Publié le 13/05/2026)参照。(本文へ) - 自宅と職場間の通勤距離が15キロメートル以上(往復30キロメートル)の場合、または年間走行距離が8,000キロメートルを超える場合。(本文へ)
- 政府サイト(Carburant : l'aide pour les travailleurs « grands rouleurs »
Écrit le 22/05/2026)参照。(本文へ) - 政府公共サービスサイト(Carburant : quelles sont les conditions pour bénéficier de l’aide pour les « grands rouleurs » ?
Publié le 06 mai 2026 - Mise à jour le 22 mai 2026 - Service Public / Direction de l'information légale et administrative (Premier ministre))参照。(本文へ) - 政府サイト(Carburant : comment bénéficier de l’aide « grands rouleurs » ? Écouteravec webReader
, Publié le 4 mai 2026, modifié le 21 mai 2026)参照。(本文へ) - 公共サービスサイト(Prime d'activité : salarié ou fonctionnaire, Vérifié le 01 avril 2026
- Service Public / Direction de l'information légale et administrative (Premier ministre) Qu'est-ce que la bonification individuelle ?)参照。(本文へ) - Prime d’activité : êtes-vous concerné par sa revalorisation ?
Par Sabrina Guintini, capital, Publié le 24 mai 2026.(本文へ)
(ウェブサイト最終閲覧日:2026年5月26日)
参考レート
- 1ユーロ(EUR)=185.45円(2026年5月28日現在 みずほ銀行ウェブサイト
)
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